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※本文中の役職等は取材当時のものです。

環境先進企業へまい進
“健康・安全・安心” 重視の時代

「人よりも高い目標を・・・」と語る 加藤逸朗氏
「人よりも高い目標を・・・」と語る
加藤逸朗氏

シャープ(株)取締役・電化システム事業本部長

加藤 逸朗(かとう いつろう)氏

(昭和44年 機械工学科卒業)

 加藤さんは、本学卒業と同時にシャープ(株)に入社、産業機器事業本部(現在・ドキュメントシステム事業本部)に配属になった。同社は、昭和46年から同47年にかけて、「これからは事務機器の領域の拡大をしよう」という時代だった。

 当時は、コーティングペーパーでコピーを取るというのが主流の時代。事実、コピー機の販売合戦が激しさを増していた頃で、販売占有率トップのゼロックスをキヤノン、リコーといった会社が追いかけていた。当時、シャープはコピー機販売では始まったばかりだったが、電卓は業界トップを走っていて「電卓販売ルートに乗せてコピー機も販売して行く」という戦略姿勢だった。

北海道育ちが本学へ

 加藤さんは北海道生まれで、根室高校を卒業。大学入学時から、将来はエレクトロニクス関係の仕事をしたいと考えていた。「学生時代はごく真面目な学生でした。友だちと同好会的なサークルをつくり、中古車マスターライン(クラウンの前身)で箱根から京都まで旅行しました」と思い出を語る。

 入社16年、課長時代の1985年に「A1110緊急プロジェクトチーム」(パーソナルコピアの開発)のチーフに、そして88年に情報システム事業本部複写機事業部第2技術部部長に昇進した。99年には、約30年間携わったコピー機事業から離れて、本社機構である環境安全本部の副本部長を約6カ月務めた。翌年4月からは、電化システム事業本部副本部長兼空調システム事業部長に就任。ドキュメント事業とは全く異なる業界であったが「セクションは異なっても、エアコン、空気清浄器などモノづくりの基本は全く同じです。これまでの仕事の経験は十分生かされてると思います」と語る。

 そして、2003年6月1日に現在の取締役兼電化システム事業本部長に就任した。加藤さんは「エレクトロニクスメーカーの中でも白物家電の分野は、これまで成熟産業と言われてきたが、今や成長産業に変わりつつあります。つまり健康、安全、安心と言った世の中の変化に対応することにより流れが変わってきたと言うことです」と強調する。また「韓国や中国のメーカーと同じことをやっていては勝てない」と厳しい企業の一面も語る。

高額商品も付加価値次第

 「例えば、シャープが環境・健康を目指して開発した過熱水蒸気方式の調理器『ヘルシオ』を例に取ってみると、100度に熱した蒸気をさらに300度まで上げると通常のオーブンに比べて食品に加わる熱量が約8倍になります。油分や塩分が落とされ、無酸素状態調理からビタミンCの破壊が少なく、ウマ味が残って健康調理が出来るのです。ヘルシオの実売価格は10万円前後と少々高いという人もいますが、使ってみればその価値は十分わかりますよ」と自信ある答えが返ってくる。

 また、加藤さんはシャープという企業の製品開発プロセスを説明してくれた。「当社には『緊急プロジェクト制度』があり、そのチーフは社長直轄で大きな権限が与えられます。新製品開発の申請(計画書)を出すと、その新製品の目的達成のために、他の事業本部から仕事のできる社員を期間限定でそのプロジェクトに参画してもらえ、必要なスキルの人材を容易に集められる特典があります」と、同社独自のやり方を説明する。

すべてに挑戦する“意気込み”が大事

 「これまでの経験から、人間の能力は無限です。技術者は大きな夢を持ち、人よりも一歩も二歩も高い目標値を置くことが大切だと思います。加えて『初心を忘れるな』。時々原点に戻って考えることが大切でしょう。これからシャープという企業は“環境先進企業”になるのです。だから、われわれ“白もの事業”(エアコン、冷蔵庫、洗濯機などを指す)の技術者も、液晶やソーラー(太陽電池)などの技術交流を考えていく必要があります。世の中の流れを適格に掴むことが大切」と、経営者の顔を見せた。

 後輩の大学生に対しては「これからの技術者はグローバルに活動できる人材が必要。従って工学部出身でも英語が話せることが必須。また、どんなにいいアイデアを持っていても、それを正しく相手に伝えるコミュニケーション能力が重要です」とアドバイスしている。

 趣味はゴルフ。毎月のように海外出張もあり、忙しい仕事環境ではあるが、連休を利用して、奥さんとの海外旅行が楽しみという。

NEWS CIT 2005年3月号より抜粋