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2021.11.15

災害対応で圧勝
fuRoと学生の本学チーム


世界ロボ大会〈WRS〉
本学の災害対応ロボ
本学の災害対応ロボ
 ロボットの研究開発促進などを目的に「ワールド・ロボット・サミット(WRS)2020」福島大会が10月8〜10日、福島県南相馬市の福島ロボットテストフィールドで開かれた。本学チーム「CIT_Rescue」は災害時に使うロボットの性能を評価する「災害対応標準性能評価」(STM)部門で優勝。2011年の福島第一原発事故後の情報収集など、災害現場で発揮してきた有能ぶりが認められた。
 WRSは経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が共催。ロボットを使いこなす社会作りを目的に18年に東京ビッグサイトで初開催。第2回は20年、愛知・福島の両県を会場に開かれる予定だったが、コロナ禍で延期されていた。
 今回の主題はインフラ保守と災害対応。国内外から多数のロボット技術者が参加し▽プラント災害予防▽トンネル事故災害対応・復旧▽災害対応標準性能評価――の3部門で技を競った。
 本学は未来ロボット技術研究センター(fuRo)の吉田智章副所長と西村健志研究員を中心に大学院生・学部生計20人がチームを組んだ。西村研究員は「ロボットのメカや動作はfuRoで開発。地図を作る、QRコードを読むなどのアプリは学生が作ってくれた。コロナ禍で集まれない中、SNSなどを活用し頑張ってくれた」とチーム力を強調していた。
 災害対応ロボットにはドローンを含め各種があるが、どんな災害にどのロボットが使えるか、どんな機能が必要かを決めないと開発はできない。そんな評価を定量的にやってみようというのが今大会の目的。
 将来は、さまざまなロボットの基本性能をカタログ化し、いざ災害が起きた時に、現場に応じてロボットを選べるようにするのが狙いだ。
 競技は▽家屋倒壊を想定して狭いところを通り抜ける(ネゴシエート)▽階段の上り下り(キャットウォーク)▽メーターの値を読む・バルブを回す(メーターバルブ)▽パイプ爆弾を引き抜くイメージで棒を押したり引っ張ったりする(L字障害物)▽壁に貼ってあるQRコードを読んで地図を作る(広いエリア検査)――の5種目で行われ総合点を競い合った。
 本学チームは予選でダントツの成績を上げ、決勝に臨んだ。決勝戦のルールが公表されたのは開始直前。「災害が起こった。30分以内にデータを収集して戻ってくる」と突発対応の実践的なルールで行われた。
 本学チームは20分という短時間で調査を終え、2位にダブルスコアの差をつけて優勝した。西村研究員は「大会のためでなく、災害現場で使うために作ったロボットなので、我々にとってはむしろ有利なルールだった」と勝因を語っていた。
受賞チーム
受賞チーム
西村健志研究員の話
 災害の直後には災害対応ロボットへのニーズが高まるが、数年経つと研究者が減り、国の補助金も付かなくなってくる。そこで三菱重工やNEXCO中日本などと共同で、通常のインフラ点検と災害時活用の2面性を持ったロボットを開発している。災害では100回に1回の失敗も許されない。技術の押し付けにならないよう、現場に赴き実際に作業している人のニーズを聞いてロボットを作っていきたい。
未来ロボティクス学科4年、樋高聖人さんの話
 大きなプロジェクトをチームで実践的に開発できた。将来、社会に出て役立つ経験ができた。我々は海外に負けていない。災害対応に限らず、現場で役立つロボットを作っていきたい。
■開発メンバー
 松澤孝明(研究員)、保坂謙史郎(客員研究員)、草野克英(未ロボM1)、影山夏樹(機械M2)、樋聖人、橋芳彰、井口颯人、下鳥晴己(未ロボ4年)、桜井真希、河内建汰郎、野村駿斗、柳澤孝平(同2年)、松川晴紀、葛西柊摩、麻生英寿(同1年)、伊藤崇浩、佐藤大亮、鍬形篤史(OB)

谷津干潟浄化や材料科学


学会発表9人が受賞
 次世代の科学者育成を目指すInternational Student Symposium 2021(ISS2021=小浦節子・応用化学科教授が会長を務める材料技術研究協会が主催、8月29日にオンライン開催・10月7日に受賞者発表)で、本学の学部生8人が優秀3賞のうち最高のゴールド賞を受賞。また、INTERFINISH2020(表面仕上げ国際連合・日本表面仕上げ学会が主催する世界会議=9月6〜8日にオンライン開催・9月30日に受賞者発表)では、院生1人が学生賞を受賞した。
 受賞者の発表内容と感想は以下の通り。
★ISS 2021
増田さん 石原さん
増田さん 石原さん
■石原 龍太朗さんと増田 周生さん(応用化学科4年・連名でポスター発表)
 「谷津干潟の微生物を利用した燃料電池の検討と発電菌の同定」
 発電菌が有機物を分解した際に生成する電子を利用した微生物燃料電池が注目されている。2人は谷津干潟の浄化と電力の回収を目指し、土壌や海水に生息する発電菌を利用し発電および発電菌の同定・遺伝子解析を進めている。
 「初めての学会発表で緊張しましたが、受賞で自信がつきました。限られたスペースの中、分かりやすいグラフや図を心掛けました」
■山田 翔吾さん(応用化学科4年・口頭発表)
 「半導体基板へのAl(アルミニウム)無電解析出における平滑な膜作製」
 半導体の配線材料にAlが使われるが、半導体表面に均一なAl析出膜は得るのが難しい。そこでさまざまな還元剤や触媒、金属コーティング剤などを模索し、平滑性の向上を追究している。
 「選考委員の方々に選出していただけ、大きな自信になました。触媒、洗浄液、析出温度、時間など、最適な条件を見つけようと苦労しました」
■井上 友希さん(応用化学科4年・口頭発表)
 「皮膚に対する酸素ウルトラファインバブル水の浸透メカニズムについて」
 現在の化粧品は人によって悪影響も。解決策として期待されるウルトラファインバブル水の浸透のメカニズムについてテープストリッピング法とフーリエ変換赤外分光法で評価した。
 「初の学会発表での受賞はとても光栄です。初めて聞く人でも分かりやすいように図やイラストなどを多用しました」
■磯部 千聖さん(応用化学科4年・ポスター発表)
 「電気化学的に金属を担持させた活性炭によるH2S(硫化水素)除去の検討」
 谷津干潟で悪臭解決のため活性炭に注目。活性炭に金属化合物を担持させることで、活性炭の硫化水素吸着能を向上できると考え、その担持方法を考案している。
 「先生、先輩方に感謝しています。新型コロナ対策で研究室に入ることも困難ななか、文献から学びながら計画的に研究できました」
■矢野 睦実さん(応用化学科4年・口頭発表)
 「発展途上国での水中殺菌を目的としたメカノ殺菌効果の検討」
 飲料水の細菌汚染に対し、針状構造体が細菌に直接刺さって殺菌するメカノ殺菌効果と光触媒の組み合わせに注目。針状アラゴナイト粉体の懸濁系でのメカノ殺菌効果を検証した。
 「ケミカルの実験とは異なるバイオの実験の難しさに苦労しました。菌を扱う実験では誤差が大きく出てしまいます。勉強と実験の繰り返しで良い結果を出せるようになりました」
■依田 和雅さん(応用化学科3年・口頭発表)
 「カーボンスフィア-TiO2コア・シェル型可視光触媒」
 含糖分を炭素源として利用し余剰清涼飲料を付加価値化する試みは、飲料水・食品の無駄廃棄「食品ロス」の問題を解決する有望手段の一つ。スクロースの水熱処理で得たカーボンスフィア(CS)にチタニアを被覆し、コア・シェル構造を形成すると、優れた可視光応答型光触媒性能を発現することが報告されている。そこで飲料水に含まれる糖を原料とする可視光応答型光触媒を作製し、光触媒としての有用性・用途を検討した。
 「先生方の意見やアドバイスをいただけたのはとてもよい経験になりました。小浦教授と先輩方のご助力あってのことで深く感謝しています」
■松井 常勝さん(生命科学科4年・口頭発表)
 「ビオラセインの大腸がん細胞に対する抗腫瘍効果」
 微生物が産生する天然色素ビオラセインの、大腸がん細胞に対する抗腫瘍効果について研究している。
 「研究が最高の形で実を結びうれしいです。コロナ禍で昨年は技術などがままならず予定が立てにくい中で大変でした」
★INTERFINISH 2020
■丸本 大輔さん(応用化学専攻修士1年・ポスター発表)
 「AlCl3-EMICの様々な組成におけるアルミニウム無電解めっきの検討」
 還元剤Aを含むAlCl3(塩化アルミ)-EMICと呼ばれる溶融塩の組成比を変化させて、Alの無電解析出条件を検討。この結果、還元剤Aを使用することでAlCl4-をAlに変えることが示唆された。
 「大変光栄です。国際学会で、英語での発表、質疑応答の内容を考えるのが大変でした」