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2021.11.15

fuRoの友納副所長


ロボットの地図技術で2賞
 自律ロボットの地形判断技術などで国内外をリードする未来ロボット技術研究センター(fuRo)の友納正裕副所長=写真=が今年、日本ロボット学会誌に発表した「ロボットの長期間活動のための地図結合」が第35回学会誌論文賞に、また、「Loop detection for 3D LiDAR SLAM using segment-group matching」も学会英文誌「Advanced Robotics」の最優秀論文に選ばれ9月8日、オンラインで表彰式があった。
 「地図結合」の論文では自律ロボットが地形を読み取り行動するため▽参照地図に現在地図を結合し地図を拡張・更新する▽結合した地図の整合性を評価する▽結合後の地図のデータ量を削減し、長期持続性を確保する――などの方法を提案。
 英文誌の方は「ループ検出」について。ロボットが走行中に得たデータから地図を作るスラム技術の中で「同じ場所に戻ったと認識すること」をいい、整合性のとれた地図を作るために重要となる。論文では、効率よく高い精度でループ検出する手法を提案した。
 友納副所長は「学会誌の論文賞はとても重みがあるもの。英文誌の方は海外からの投稿も多くて価値があり、私がいただいていいのかなと思いつつも喜んでいます。今後も、ロボットの機能や知能を向上させる研究を続けていきたいと思います」とコメントした。

生態系保全へ幅広く貢献


村上教授に水処理生物学会賞
 生命現象の源〈水〉を対象に生態系保全の工学的研究を進める村上和仁・生命科学科教授=写真=が、日本水処理生物学会から長年の功績を認められ、第57回大会(神奈川大会=10月28〜30日、オンラインで開催)で第23回学会賞を受賞した。
 授賞理由を学会評議員会は「村上教授は『都市域における干潟の保全・創出』や『マイクロコズムシステムによる生態系影響評価』の論文で閉鎖性湖沼の直接浄化、有用微生物の開放系利用などバイオ・エコエンジニアリングを活用した水環境の修復および評価を研究。生活環境に関して幅広い分野で数々の優れた業績を挙げた」と説明。
 さらに「長年、学会評議員を務め、千葉大会(第53回)では大会会長として活躍。編集委員会幹事としても学会誌の質の向上に寄与されてきた」と称えた。
 村上教授は「大変、光栄です。先輩・同輩・後輩、実験研究を一緒に頑張ってくれた卒業生らの諸氏に感謝します。水処理生物学会誌は私が博士課程在籍中に執筆した初論文が掲載された学会誌で、〈継続は力なり〉を座右の銘に、毎年欠かさず研究発表を続けています。今後も学会の発展に尽力したいと思います」とコメントを寄せた。

谷本研のパルモさん


IoTの信頼性改善で受賞
 チベットからきた留学生ヤンチェン・パルモさん(マネジメント工学専攻修士2年、谷本茂明研究室=写真)が、米国電気電子学会(IEEE)主催の家電技術の国際会議2021 IEEE 10th Global Conference on Consumer Electronics(GCCE2021=10月12〜15日、オンライン開催)で「IoT Reliability Improvement Method for Secure Supply Chain Management(安全なサプライチェーン管理のためのIoTの信頼性改善方法)」を発表し、Outstanding Paper Award(優秀賞)を受賞した。発表論文257件中、受賞11件の中に選ばれた。
 谷本研は、デジタルトランスフォーメーション時代の最先端のセキュリティー問題に取り組んでいる。IoT(モノのインターネット技術)をサプライチェーンのエンドポイントで使う場合が増えているが、IoTはCPUやストレージが十分でなく、セキュリティーの確保が難しい。そこでIoTを組み込む際、信頼性を補完することが不可欠になる。
 パルモさんは補完方法としてIoTゲートウェイ、クライアント証明書、IdP(ユーザーのIDやパスワードなど認証情報を提供するサービス)の利用を検討。これらを定性的に評価した結果、IdPを用いた方法が最も効果的であることを明らかにした。
 谷本教授の指導で興味を抱き、IoT問題を深く検討するきっかけとなったといい、「研究を通して社会の課題やニーズを見つけ解決することで社会に貢献できることを学びました。さらにアイデアを発展させていきたい」と感想を寄せた。

活躍する校友


ウェブ健診予約
国内シェア4割
同窓の夫人と共に
株式会社両備システムズ副社長
小野田 吉孝(おのだ よしたか)さん(54歳)
(平成2年、工業経営学科卒)
小野田 吉孝さん
「どんなIT技術を使ったら日常の暮らしはどう変わるかを考えながら学びを」と語る小野田さん
 デジタル庁が今年9月始動した。電子政府・電子自治体、その先のIoT社会へ向け、ビジネスチャンスは広がるといわれる。「でも、システムの標準化の流れいかんで仕事は変わる。油断できません」。岡山県内では最大規模の企業集団「両備グループ」でICT(情報通信技術)部門を担う「両備システムズ」副社長、小野田吉孝さんは慎重だ。岡山市の本社でうかがった。
 いまだ収束の見えぬコロナ禍。予防の切り札とされるワクチン接種をめぐり、さまざまな騒動が今春から続いている。大規模自治体で電話予約の申し込み開始から1分間に見込みの倍の200万件の電話が殺到、用意した350回線はパンクしたのは記憶に新しい(5月)。
 「当社の請け負ったシステムでした。システムを回収して2日後に回復しました。お客さまに多大な迷惑をかけたが、予約殺到時のクラウド対応は勉強になった」。小野田さんは謙虚に語る。この実直さが全国1741市区町村のうち約4割・700自治体で両備の住民健診システム採用につながっているのだろう。
 中学・高校とバスケットボールのコートを走り回った。中学時代、岡山県代表として全国大会へ駒を進めている。「関東の空気を一度吸ってみたい」と、理系で経営マインドを学べる本学へ。当時、工業経営学科を持つ大学は少なかったという。「だけど、あまり勉強しなかったです」。
 3年次で引退し卒業研究に専念する慣例を破り、4年のとき関東大学バスケットボール選手権の本戦へ。「代々木第二体育館で前年度全国優勝の拓大とプレーした。敗れたが、そこまで行けてうれしかったな」。それが勉強不足の言い訳になるかどうかは微妙だが、「部内恋愛ご法度」と言う部顧問のきついガードをかわして愛のパスワーク≠重ね、2年後輩の女子マネジャー(建築学科卒)を射止めた。自動車運転時の視線の動きをテーマに卒研をまとめ、卒業5年後にゴールイン。夫人の由季子(旧姓・小杉)さんである。
 「これからはコンピューターの時代だ」。卒業した1990年、スイスで世界初のウェブページが公開された。小野田さんはふるさと岡山市へ戻り、電子計算センターから発足して25年目の両備システムズにシステムエンジニアで入社。4年後、営業マンとして東京支社へ移り、電子カルテ、ゴミ収集予約システムなど公共向けソリューションの普及・販売などに巡った。
 失敗もいろいろ。「システム構築を受注したものの、設計費用が予算の倍かかったり、稼働したものの不具合を起こして突然ストップし、『止まったぞ!』と怒られたり」と苦笑する。しかし改良のたび、システムは強くなっていく。その後、岡山と東京の異動を繰り返し、東日本大震災の2011年に岡山在勤へ落ち着いた。由季子さんも親会社の両備ホールディングスで経営企画および役員秘書を担当している。
 規模拡大とブランド名のアップを図るため、昨年1月にグループ内のICT部門6社が両備システムズを核に合併。その勢いで、10万円の特別定額給付金の連携システム(全国共通申請様式)を政府・自治体等から受注した。2030年にはいまの年商310億円から500億円へ飛躍を目指す。コロナ禍で採用数を減らす企業が多い中、今年より10人多い73人の来年採用予定者を内定済みだ(うち本学から2人)。今年3月、専務から副社長へ昇格した。
 コンピューターが目を持ち、マスクをしたまま顔認証できるほど、進化のスピードは速い。「多くの人と付き合い、どんなIT技術を使ったら日常の暮らしはどう変わるかを考えながら学びを」と現役世代へエールを送る。「人生一生営業マン」を座右の銘に、たまのゴルフと旅行でストレスを発散するという。
両備グループ
 1910(明治43)年、西大寺鉄道(廃線)として誕生。公共交通、レジャー、アグリビジネス、不動産など約50社を擁し、竹下夢二美術館など文化事業も推進する。2022年春卒業予定の大学生らを対象にした岡山県内の就職人気企業ランキングで両備システムズ(松田敏之社長、社員1523人)は4年連続トップ(情報誌出版「ビザビ」調査)。