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2021.7.15

卒業生 80歳で博士号


「溶接・溶射のフジコー」会長
 本学OBで(株)フジコー(本社・北九州市)会長の山本厚生氏(昭和39年、金属工学科卒=写真)が今年3月、80歳にして九州大で博士(工学)の学位を取得したことが分かった。
 フジコーは山本氏の父親が創業した溶接・溶射・特殊鋳造などに定評のある会社。山本氏は本学を卒業後、親元で製鋼事業に携わり、超密着溶射(第1回ものづくり大賞優秀賞、2005年)や光触媒コーティング技術で「溶接・溶射のフジコー」のもとを作った。
 学位論文は「連続鋳掛け法による高機能複合材料開発に関する研究」。
 鉄鋼製造時に使われる鋳造部品には高い機能が要求される。特に圧延工程に用いられる圧延用ロールと搬送ローラーなどは、圧延製品と直接接触するため、耐摩耗性や耐食性、強靭性の向上が強く求められてきた。
 山本氏は、強靭な鍛鋼を芯材とし、高合金系白鋳鉄を連続的に溶融・被覆する新しい連続鋳掛け法(CPC法)を開発し、従来材料に比べ飛躍的な耐久性向上を達成。さらに安価で利用価値の高い合金設計とプロセス最適化を行い、ロール再生技術、リサイクルシステムの構築やCO2削減にも寄与する成果を挙げた。
 一方、フジコーの光触媒コーティングは、光が当たると活性酸素を発生させる触媒(酸化チタンなど)を溶射で皮膜形成する技術。菌やウイルスを死滅させ消臭効果にも優れる。フジコーは宇宙航空研究開発機構 (JAXA)と共同研究し、宇宙ステーション実験棟のマウス用ケージに使用。マウスを世界で初めて全数生存のまま帰還させた。
 山本氏は本紙「活躍する校友」(2013年9月号)に登場。「兵舎のような建物がいくつかあったくらい」の本学で勉学や潮干狩りをしたことなどを語り、後輩たちに「個性豊かに、自分の思いや気力をしっかりもって」と励ましていた。

上田准教授に 機械学会が教育賞


確率ロボティクスで貢献
 日本機械学会は、本学の上田隆一・未来ロボティクス学科准教授=写真=が行った①「確率ロボティクス」(2007年・ROBOT books)の翻訳出版A「詳解 確率ロボティクス」(19年・講談社)の出版と、解説動画などのウェブ上での公開――の2つの業績に対し4月22日付で2020年度教育賞を贈った。オンラインで発表された。
 上田准教授は、確率ロボティクス分野の国内の第一人者で、理論や実装をロボカップ・サッカーやつくばチャレンジなどに生かしてきた。「確率ロボティクス」は米スタンフォード大のスラン教授、ワシントン大のフォックス准教授、独フライブルグ大のバーガード教授らの共著「Probabilistic ROBOTICS」の翻訳書。不確実さや予測困難な事象に対処する確率ロボティクスの主要アルゴリズムを解説。自動車の自動走行にも応用されている内容となっている。
 一方、「詳解 確率ロボティクス」は本学大学院で講義した内容をもとにまとめた入門書で、副題に<Pythonによる基礎アルゴリズムの実装>とあるように、理論解説に加えて実装例まで示されている。また、オンライン講義用に本書に基づいた動画を作成し、全国の学生・研究者向けにウェブ上で公開した。
 上田准教授は「難解なこの分野を理解する学生・エンジニアを1人でも多く増やしたいと考えて活動してきました。これを評価していただけたと考えています。本学の講義でも書籍や動画だけでなくさまざまな手段を駆使して解説を試みていますが、まだまだ学生が難しい顔をして話を聞いている状況なので、さらに試行錯誤していきます」と語った。

長瀬教授を光協会が表彰


光コネクタ開発などリード
 レーザーや光ファイバーなど光技術を応用した産業の育成を図る光産業技術振興協会(光協会)は、協会創立40周年の記念功労者の1人に本学機械電子創成工学科の長瀬亮教授=写真=を選び、6月14日、東京都新宿区のリーガロイヤルホテル東京で開かれた40周年記念式典で表彰した。
 長瀬教授の専門は、光ファイバーを用いた精密計測技術や、微小領域の変形に配慮した精密機構デバイスの設計など。特に次世代光通信でマルチコアファイバー用光コネクタの開発をリードしている。
 光協会は授賞理由を「光コネクタ及び関連する国際標準化プロジェクトの委員長などを務めたほか、光コネクタ関連の標準化事業への長年にわたる貢献」としている。
 今回の表彰者は2010年以降の10年間を中心に23人が選ばれた。

高校教員に4年度入試説明会


 高校教員を対象に、本学の令和4年度入試の説明会が6月1日に東京スカイツリータウン、6月4日に津田沼キャンパスで開かれ、2日間で計120校124人の進路指導担当教師たちが参加した=写真。同時に新型コロナ対策として津田沼での説明会をライブ配信、全国で102校105人が視聴した。
 2回の説明会では日下部入試広報部長が前年度を振り返り、新型コロナ対策でいち早く対面授業を実施したことや入試結果、就職状況や退学者・留年者抑制への取り組みを説明。また、学部横断型の新規プロジェクトや高校生向けの参加型プログラムについて触れた。
 続いて新たな試みとして「在学生からみた千葉工大」を板谷英志さん(情報科学専攻修士1年)がプレゼンした。入学理由や学んでいること、大学への要望など、学生の本音を語り、教員から「先生との関係性が見られよかった」「有意義に大学生活を送っている様子がうかがえた」「プレゼン能力の高さに驚いた」との声が聞かれた。
終盤では、大川茂樹・入試委員長(副学長・未来ロボティクス学科教授)が昨年度の詳しい入試結果や、令和4年度の総合型選抜、学校推薦型選抜、大学独自入学試験、大学入学共通テスト利用入学試験の要点などを説明。入試改革初年度にあたり受験生が安心して入試を迎えられるよう配慮したこと、また進学支援などについて話すと、高校教員たちは熱心に聞き入っていた。

宇宙産業支える高度技術者


本学育成プログラム発進
 本学は4月21日、東京スカイツリータウンキャンパス(東京都墨田区)で、2021年度から日本の宇宙産業の基盤を支える高度技術者の育成プログラムを始めると記者発表した。
 記者発表で松井孝典学長は「日本には体系だった宇宙教育プログラムがない。国の宇宙政策委員会の委員長代理の立場で提言してきたが、なかなか実現していない。そこで今回の教育プログラムを考案した」と説明した。
 当初は関連学科から希望者を募って始めるが、将来的には「宇宙産業を支える高度技術者育成コース」など新たな学科の設置も視野に入れ、育成プログラムを終了した学生らの就職支援を念頭に宇宙に関わる企業との連携強化を図っていく。
 また、地域の小中高校などと連携して、子供らが宇宙を入り口に理工系への関心を高めることができるような教育プログラムを検討するという。
 宇宙産業で現在、人材が一番足りないのは、計画や設計図に基づき実際に安定して動く衛星やロケットをきちんと作り上げる人材。03年以降、各国で、1辺が10aの立方体サイズで重量約1`cの「キューブサット」と言われる超小型衛星が多数打ち上げられるようになり、一部分野では大型衛星にも匹敵する性能を示すようになった。量産すれば1機あたりの製造・打ち上げコストも低下するので「コンステレーション」と呼ばれる複数衛星を使った超小型衛星網の構築が世界で始まっている。
 こうした状況を背景に、国内外の多くの企業が、超小型衛星の分野に参入。それを支える高品質な人工衛星の設計・製造・運用を現場で支える技術者の不足が顕在化してきた。本学は「研究開発ではなく、必要な知識と経験を有し、確実に稼働する衛星を安定して製造できる人材を育てる」ことを目標に高度技術者育成プログラムを具体化することにしたという。
 プログラムではまず今年度の3年生を対象に、第1号衛星プロジェクト(22年度打ち上げ予定)を実施する。衛星の設計・製造・試験・運用体験を取り入れる実践的な教育を行う。継続的に衛星プロジェクトを実施することでさまざまな技術やノウハウを学内に蓄積する。
 一方、1・2年生には缶サットと呼ばれる、人工衛星を造る前段階としての教育プログラムへの参加体験を提供する。缶サットとは衛星に見立てた缶サイズの飛行ロボット。缶サットそのものは宇宙で運用することはないが、実際に宇宙に到達するキューブサットを作る前段階として作成を経験してもらうという。