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宇宙汚さない固体燃料
世界初!和田研などロケット実験成功
機械電子創成工学科・和田豊教授の研究室と日油(株)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の3者チームは5月11日、宇宙を汚さないクリーンなロケット推進薬を開発し打ち上げによる性能実験に世界で初めて成功した、と記者発表した。
燃焼実験を開始 | ロケットに新開発の推進薬を装填し発射準備 |
固体燃料ロケットは通常、液体燃料ロケットに比べ製作・コスト面で有利だが、アルミニウムなど金属の酸化物を粒子として排出。衛星などに危険な宇宙ゴミ (スペースデブリ) になって軌道を猛速で周回したり、他惑星を汚染しかねない。
金属燃料は高い発熱量で個体ロケットの推進力を高め、また燃料を固めるために添加される。金属燃料を抜くと性能が極端に低下するので、性能を落とさず高性能でクリーンな推進薬を開発する必要がある。
和田研など3者は、ハイブリッドロケットに使われ、金属燃料や酸化剤なしで大きな熱エネルギーが期待できるポリマー燃料・グリシジルアジドポリマー(GAP)に注目。過塩素酸アンモニウム(AP)と合わせたGAP/AP推進薬を開発した。これを固体ロケットの燃焼器内で燃焼させて性能評価を行い、着火と安定した燃焼を確認。
さらに、和田研が設計製作した小型ロケット2機(全長約68センチ、重さ550グラム前後)に搭載し3月25日、千葉工大千種グラウンドで打ち上げ実験を行った。その結果、2機ともシミュレーション通りの高度に到達し、急激な加速度が生じる状況でも正常に燃焼することが確認された。
今後は、推進装置を一層小型軽量化して真空環境下での着火特性を評価し、実機に搭載して宇宙空間での実証を目指すとしている。
金属燃料は高い発熱量で個体ロケットの推進力を高め、また燃料を固めるために添加される。金属燃料を抜くと性能が極端に低下するので、性能を落とさず高性能でクリーンな推進薬を開発する必要がある。
和田研など3者は、ハイブリッドロケットに使われ、金属燃料や酸化剤なしで大きな熱エネルギーが期待できるポリマー燃料・グリシジルアジドポリマー(GAP)に注目。過塩素酸アンモニウム(AP)と合わせたGAP/AP推進薬を開発した。これを固体ロケットの燃焼器内で燃焼させて性能評価を行い、着火と安定した燃焼を確認。
さらに、和田研が設計製作した小型ロケット2機(全長約68センチ、重さ550グラム前後)に搭載し3月25日、千葉工大千種グラウンドで打ち上げ実験を行った。その結果、2機ともシミュレーション通りの高度に到達し、急激な加速度が生じる状況でも正常に燃焼することが確認された。
今後は、推進装置を一層小型軽量化して真空環境下での着火特性を評価し、実機に搭載して宇宙空間での実証を目指すとしている。
砂さん 燃焼実験に貢献
火薬学会で優秀講演賞
宇宙を汚さない固体燃料ロケットの推進薬開発で、和田教授のもと燃焼実験を繰り返し、貢献したのが砂民明さん (工学専攻博士後期課程1年=写真)。その内容を「高速度カメラを用いたGAP/AP推進薬の燃焼表面観察」として火薬学会の2021年度春季研究発表会(5月20、21日、Zoomでオンライン開催)で発表し、優秀講演賞を受賞した。
砂さんは、GAP/AP推進薬の燃焼メカニズムを解明するため、ハイスピードカメラで燃焼表面を観察。その結果、燃焼表面で分解途中の過塩素酸アンモニウム(AP)粒子が燃焼表面から吹き飛んでいることを確認した。これはグリシジルアジドポリマー(GAP)が持つ自己発熱分解特性により先行的にGAPが分解。GAPから発生した分解ガスによってAP粒子が燃焼表面から吹き飛ばされていると分かった。
燃焼している50〜400マイクロメートルの粒子を、どうやって鮮明に撮影するかに苦労した。まだまだ改善の余地はあるので、撮影スキルを磨いていきたいという。
砂さんは、GAP/AP推進薬の燃焼メカニズムを解明するため、ハイスピードカメラで燃焼表面を観察。その結果、燃焼表面で分解途中の過塩素酸アンモニウム(AP)粒子が燃焼表面から吹き飛んでいることを確認した。これはグリシジルアジドポリマー(GAP)が持つ自己発熱分解特性により先行的にGAPが分解。GAPから発生した分解ガスによってAP粒子が燃焼表面から吹き飛ばされていると分かった。
燃焼している50〜400マイクロメートルの粒子を、どうやって鮮明に撮影するかに苦労した。まだまだ改善の余地はあるので、撮影スキルを磨いていきたいという。
砂さんの話
和田教授の丁寧なご指導と研究室仲間の助けがあっての受賞と思います。博士課程初年での受賞をうれしく感じます。今後は一層深みのある研究をし、磨きのかかった発表ができるよう精進します。
PM国際資格 26人合格
国際資格証を手に合格者たち |
米国プロジェクトマネジメント協会(PMI)が認定するプロジェクトマネジメントの国際資格CAPMⓇ(Certified Associate in Project Management)の2020年度取得試験に、本学の26人が合格した。
CAPMⓇはビジネスに必要な「目標設定→計画→実行・修正」のプロジェクトマネジメント(PM)能力をテスト。コンピューターで受験し3時間で150問に回答する。
受験資格は、実務経験を1500時間以上積むか、23時間の公式研修を受講することが条件。このため本学では毎年7〜9月にPPA特別教養講座の支援のもと、学内で丸4日の短期集中研修を開講していたが、20年度は感染症予防のため全編オンラインで実施。講師は本学PM学科1期生でデザイン科学科の西田絢子准教授が務めている。
20年度合格者第1号となった常野一樹さん(PM学科4年)は「長時間のオンライン講座でしたが、西田先生のおかげで集中力を保てました。資格取得を通して得られた知識を卒論や進路開拓に生かしたいです」。
1年生で挑戦し合格した長廣悠真さん(同2年)は「前期授業の知識の助けで国際ライセンスまで取得できました」。
デザイン科学科で初の合格者となった秋山凜太郎さん(4年)は「デザイン科学科でも製品・サービスの開発などで想像以上にPMの知識と共通点があると感じました」と語った。
特別教養講座を主催した田隈広紀PM学科准教授は「初のオンライン講座で合格率が下がると覚悟していましたが、例年と遜色ない実績になりました。西田先生と受講生の粘り強さが実を結んだ結果です」と喜んだ。
CAPMⓇはビジネスに必要な「目標設定→計画→実行・修正」のプロジェクトマネジメント(PM)能力をテスト。コンピューターで受験し3時間で150問に回答する。
受験資格は、実務経験を1500時間以上積むか、23時間の公式研修を受講することが条件。このため本学では毎年7〜9月にPPA特別教養講座の支援のもと、学内で丸4日の短期集中研修を開講していたが、20年度は感染症予防のため全編オンラインで実施。講師は本学PM学科1期生でデザイン科学科の西田絢子准教授が務めている。
20年度合格者第1号となった常野一樹さん(PM学科4年)は「長時間のオンライン講座でしたが、西田先生のおかげで集中力を保てました。資格取得を通して得られた知識を卒論や進路開拓に生かしたいです」。
1年生で挑戦し合格した長廣悠真さん(同2年)は「前期授業の知識の助けで国際ライセンスまで取得できました」。
デザイン科学科で初の合格者となった秋山凜太郎さん(4年)は「デザイン科学科でも製品・サービスの開発などで想像以上にPMの知識と共通点があると感じました」と語った。
特別教養講座を主催した田隈広紀PM学科准教授は「初のオンライン講座で合格率が下がると覚悟していましたが、例年と遜色ない実績になりました。西田先生と受講生の粘り強さが実を結んだ結果です」と喜んだ。
今回の合格者(順不同・敬称略)
常野一樹、田中基紘、 山田聖雅、秋山凜太郎、 石橋燎、島村隆誠、小澤快斗、伊藤優介、内山ひかる、金澤颯、梶川雅晴、岡田悠作、北田千香子、長廣悠真、高橋弘暉、内間愛、丸山桃佳、佐藤諒斗、藤中有菜、大熊一斗、和泉蔵馬、中川裕菜、坂井優希人、富田青深、篠崎智哉、入江慧梧
今年は準優勝
AWSロボコン 未ロボ4人チーム
未ロボ4人チーム。(左から)春山さん、池邉さん、高橋さん、岩井さん |
学生たちが自律移動ロボットで自動運転と人工知能(AI)の技術を競う「AWS Robot Delivery Challenge」(通称AWSロボコン=アマゾン・ウェブ・サービスジャパン主催)の第2回大会が5月11日開かれ、未来ロボティクス学科・上田隆一研究室の池邉龍宏さん・高橋秀太さんと、林原靖男研究室の岩井一輝さん・春山健太さんの計4人が組んだチームがカスタマイズ部門で準優勝した。
初回大会はコロナ禍の昨年秋、オンラインで開かれ、本学チームが優勝。池邉さん、高橋さんは前回の優勝メンバーで、ほかの2人が入れ替わって今大会に挑んだ。
今回もリモートで、全国から57チームが参加。予選を経て▽AWS提供のアプリケーションを独自改良して競う「カスタマイズ部門」▽提供の仕様のまま機能をどう生かすかの「初心者部門」――に分けられた決勝ラウンドに5チームずつが進出。コースの広さは昨年の2倍に拡大され、2チームずつが激突するトーナメント方式で戦った。
カスタマイズ部門の決勝ラウンドに進出したのは本学、豊田高専、中央大、宮崎大、芝浦工大。
各校は共通の小型自律移動ロボを、ミニチュアの街中を走らせ、指定された12個のチェックポイントを通過して得点を獲得する。自律ロボは遠隔操作とAIによる自律動作に対応しており、各チームはそのロボットを動かすための独自アルゴリズムを競う。
また、自律移動には周囲の状況をセンサーで検知して、その情報をもとに全体地図を作成し、自分がいる正確な位置を把握する必要がある。この自己位置推定と環境地図作成を同時に行うSLAM技術の精度がカギになる。
さらに、ロボットの走行経路を制御するにはタイヤの回転角から現在位置を推定するオドメトリという手法が多く使われるが、それでも理論と現実のギャップは少なくない。理論上のマップとロボットの現実の位置との間に生じるブレをいかにして補正するかが、勝敗を左右する。
本学チームは緒戦で中央大チームを退けて、対「豊田高専」の決勝戦に臨んだ。序盤、制限時間を6分以上残す無駄のない走りを見せたが、障害物のトラックに接触してタイムを大きくロス。ポイントのラインをきれいにトレースするダッシュを見せ、以後も無難に通過した豊田高専チームに惜敗した。
初回大会はコロナ禍の昨年秋、オンラインで開かれ、本学チームが優勝。池邉さん、高橋さんは前回の優勝メンバーで、ほかの2人が入れ替わって今大会に挑んだ。
今回もリモートで、全国から57チームが参加。予選を経て▽AWS提供のアプリケーションを独自改良して競う「カスタマイズ部門」▽提供の仕様のまま機能をどう生かすかの「初心者部門」――に分けられた決勝ラウンドに5チームずつが進出。コースの広さは昨年の2倍に拡大され、2チームずつが激突するトーナメント方式で戦った。
カスタマイズ部門の決勝ラウンドに進出したのは本学、豊田高専、中央大、宮崎大、芝浦工大。
各校は共通の小型自律移動ロボを、ミニチュアの街中を走らせ、指定された12個のチェックポイントを通過して得点を獲得する。自律ロボは遠隔操作とAIによる自律動作に対応しており、各チームはそのロボットを動かすための独自アルゴリズムを競う。
また、自律移動には周囲の状況をセンサーで検知して、その情報をもとに全体地図を作成し、自分がいる正確な位置を把握する必要がある。この自己位置推定と環境地図作成を同時に行うSLAM技術の精度がカギになる。
さらに、ロボットの走行経路を制御するにはタイヤの回転角から現在位置を推定するオドメトリという手法が多く使われるが、それでも理論と現実のギャップは少なくない。理論上のマップとロボットの現実の位置との間に生じるブレをいかにして補正するかが、勝敗を左右する。
本学チームは緒戦で中央大チームを退けて、対「豊田高専」の決勝戦に臨んだ。序盤、制限時間を6分以上残す無駄のない走りを見せたが、障害物のトラックに接触してタイムを大きくロス。ポイントのラインをきれいにトレースするダッシュを見せ、以後も無難に通過した豊田高専チームに惜敗した。