NEWS CIT ニュースシーアイティ

2021.4.15

令和3年度 入学式
「知の流れ」生み社会の先導役に


松井孝典学長 式辞
 新入生の皆さん、ご入学、おめでとうございます。また、ご家族、ご友人の皆さま、心からお祝いを申し上げます。
 昨年来、新型コロナウイルス感染症の拡大に加えて、異常気象が重なり、これまで経験したことがない、厳しい環境での生活を余儀なくされてきました。本学も、2カ月近いキャンパスの閉鎖期間を経て、対面とオンラインを併用する形で授業を再開せざるを得ない状況が続いて来ました。皆さんも生まれて初めて経験する、困難な状況のなかでの受験で、不安や戸惑いを感じる日々を過ごして来られたことと思います。
「はやぶさ2」を支え
 一方、コロナ禍のまっただ中とはいえ、楽しい思い出やワクワクする体験も少なからずあったことでしょう。千葉工業大学にとってもうれしいニュースがありました。昨年末、小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」から岩石のかけらを持ち帰りました。世界で初めて人工的にクレーターを作って採取した試料です。
 私も国の宇宙政策委員会の委員長代理として、はやぶさ2の予算などの決定に関わってきましたが、はやぶさ2の成功を支えたのは、多くの観測機器の開発と科学的検討に関わった千葉工業大学・惑星探査研究センターの研究員らでした。千葉工業大学抜きには「はやぶさ2」の成功はなかったと言っても過言ではないのです。
 その岩石のかけらの分析により「太陽系の起源や宇宙における生命の起源を探る手がかりが得られるのではないか」と期待されています。千葉工業大学の世界的な名声を一段と高めた快挙でした。
 2010年に小惑星「イトカワ」から世界で初めて表面の物質を持ち帰った「はやぶさ」もそうですが、さまざまな状況を想定し、周到に準備して、決してあきらめずに成功を目指してきた成果です。皆さんの中にも「はやぶさ2」の活躍に勇気と感動をもらった方が少なくないと思います。
進化のカギ技術革新
 コロナ禍という困難な状況ですが、私たちには今、物事の本質を見極め、これまで身につけた知識や技能を駆使して、解決策を見いだす力が試されているのだと思います。難題を乗り越えて、新たな未来をいかにして切り開いていくか? それは皆さんのような、若い世代に託されています。千葉工業大学は、そのために必要な、学力と創造性を身につける場を、十二分に提供できると自負しております。
 千葉工業大学は、昭和17年に創立され、今年5月に、79年を迎えます。当時の設立趣意書に基づく建学の精神は「世界文化に技術で貢献する」です。千葉工業大学は、その精神を堅持して、戦後の高度経済成長を支える、有為な工業人材を育成し、国の発展に貢献してきました。
 21世紀も四半世紀近くを経た今、時代は大きく変化し、人類は、文明の岐路に立っています。新型コロナウイルスについては、今も世界中で感染拡大が続いており、収束のめどが立っておりません。ワクチンは開発されたものの、日本での本格的な接種はこれからです。
 人類は、この新型コロナウイルスという感染症をはじめ、地球温暖化、エネルギーといった、地球規模の難題を抱えています。これらを科学技術で克服し、持続的に文明を進化させていかねばなりません。そのカギを握るのは、技術革新です。
 皆さんは文明の始まりというと、農耕牧畜を考えると思いますが、これを宇宙の視点からとらえると、地球システムの中に人間圏というサブシステムを作ったということになります。人間圏を作って生きる生き方は文明とも言い換えられます。
 地球システムという意味で、地球と文明は相互作用する関係です。環境すなわち地球の変化を、技術革新で克服してはじめて、地球とそのサブシステムである人間圏、つまり文明が共に進化できるのです。地球と人間圏は「共進化」する関係にあるのです。
 とかく、環境問題というと、環境がすべてを決めていて、その枠の中で文明は制約されると考えられがちですが、それは誤りです。地球の環境は絶えず変化しています。環境が変化する時に、人類が技術革新により新しい生き方を模索しない限り、文明は滅んでしまいます。
工学+理学センス

 そのような課題山積の困難な時代に、大学は何をすべきか? 千葉工業大学の場合は「世界文化に技術で貢献する」という建学の精神が羅針盤です。つまり、技術革新という新しい「知の流れ」を生み出して、社会に還元していくことが我々の使命なのです。そして、それが地球と文明が共進化するために必要不可欠な挑戦の、一端を担うということなのです。
 知の流れとはわかりやすく言えば、「文明のデザイン」です。21世紀の大学は、文明をどのようにデザインしていくか、が問われています。文明が発展するためには、知の拠点である大学の、絶え間ない発展が必要です。これから千葉工業大学に必要なことは工学だけでなく、かつ長期的視点に立つ文明のデザイン力を高めていくことです。
 具体的には、工学に加えて、理学的なセンスを磨くことです。そうした試みの例を一つ挙げれば、千葉工業大学・惑星探査研究センターでしょう。このセンターの究極のテーマは、アストロバイオロジー、すなわち、宇宙における生物学です。宇宙における生命の起源や進化、地球外生命体の存在の有無などを俯瞰的に研究し、「私たちは何ものか、どこから来て、どこへ行くのか?」という問いに対する答えを探すことが目的です。
 昨年発足した、地球学研究センターでは、文明を宇宙というスケールで考えることがテーマです。人類が、最初に使った鉄は、鉄隕石の可能性があります。鉄器文明がどのように生まれたのか、これはひとつの技術革新の例ですが、文明にどんな発展をもたらしたのか、あるいは農耕という生き方の起源、環境の変遷といった課題を探究しています。
 このほかにも未来ロボット技術研究センターは、東日本大震災で活躍した災害対応ロボットや4種類の形態に変形させることで多様な用途に対応できるパーソナルモビリティーなどを開発し、世界トップクラスの技術との高い評価を得ています。ロボット技術やAIが人類の進化にどのように関わっていくのか。興味深いテーマです。こうした先端的な知の試みの積み重ねが、新しい「知の流れ」を生み出して、社会を先導していくことになるのです。
 ここで皆さんに報告しておきたいニュースがあります。
 これまで本学は、宇宙に関する研究は行っていても、教育は十分ではありませんでした。私が学長になったのを契機に、今年から、宇宙教育にも力を入れることになりました。皆さんのなかで是非とも宇宙に関わりたいという人に、10センチ角の小さな衛星ですが、それを2年ほどかけて作っていただき、宇宙に実際にあげて、観測してもらうというプロジェクトです。
 皆さんには、このようなチャレンジを含めて、これからの大学生活の中で、積極的に新たな「知の流れ」を生み出す過程に参画し、人類の発展に、寄与していただきたいと願っています。今後の皆さんの、知へのチャレンジに大いに期待して、私の式辞といたします。あらためて、ご入学おめでとうございます。

千葉工業大学

学長 松井 孝典

新入生インタビュー


小野瀬 あかりさん

鉄道車両製造の仕事を

小野瀬 あかりさん
(先端材料工学科)

石本  麟さん

モチベーション持ち続け

石本  麟さん
(電気電子工学科)

 鉄道車両の製造にかかわる仕事がしたい。千葉で1人暮らしを始め、人や電車の多さにビックリ!!大学では学業はもちろん、サークルやイベントにも積極的に取り組み、多くの方々と接し、いろいろなことに挑戦できればと思います。  自宅から2時間かけて大学へ。きれいな施設が印象的でした。パソコン自作やラジオの分解など、手を動かすことが得意。バラエティーに富んだ先生方に出会い、興味深い研究も見つかりました。モチベーションを持ち続け、成長したい。
       
佐藤  巽さん

プロダクトデザインを

佐藤  巽さん
(デザイン科学科)

飯田 駿斗さん

AI研究をしっかりと

飯田 駿斗さん
(知能メディア工学科)

 ものづくりが得意! 音楽好きが高じイヤホンを自作しました。プロダクトデザインに興味があり、優れたオーダーメード品を安価で提供できるようなデザイナーになれれば(笑)。英語にも興味があり、海外での活躍を視野に頑張りたい。  新潟から上京、大学や千葉生活に早く慣れたい……。地元の先輩が大学にいることが心強いです。クラブチーム経験があり、フットサルのサークルに入りたい。将来的需要も考え、興味を持っているAIの研究にしっかり取り組みたい。
       
吉立 健太さん

年ごとに成長感じたい

吉立 健太さん
(経営情報科学科)

飯田 みなみさん

新しい世界にワクワク

飯田 みなみさん
(プロジェクトマネジメント学科)

 入学式前から学科のグループワークがあり、すでに意気投合している学生も多く楽しんでいます。将来像はまだ見えていませんが、学業を通じいろいろな可能性を見つけていくとともに、1年ごとに成長を感じていけたらと思っています。  高校で文系だったので大学では新しい挑戦! 基礎学力をつけ経営など興味ある科目をじっくり学んでいければと思います。千葉工大は周辺がにぎやかで施設がきれい。友達作りやサークル、スポーツ…新しい世界にワクワクしています。