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2021.4.15

岡本さん鈴木さん受賞


外装材や塗膜 劣化防止へ
 日本建築学会の2020年度関東支部研究発表会は3月2、3日、Zoomを使って口頭発表され、同15日、岡本拓也さん(都市環境工学専攻修士2年=今春卒業、石原沙織研究室)が若手優秀研究報告賞に選ばれた。
 岡本さんの研究と同時に、鈴木実佳さん(同)の論文も優秀と認められ、2人の成果は同年度の優秀研究報告集に掲載が決まった。
 研究内容と受賞の感想は次の通り。
●岡本 拓也さん=写真 「屋外暴露試験及び促進腐食試験による金属系外装材の外観変化」

 外装材に使われる金属材はさまざまで、外観が経年変化する場合がある。その変化度合いを、屋外暴露試験で明らかにし、また、高コストの促進腐食試験を、簡便な試験方法を開発することで低コストにし、暴露環境での変化を容易に再現できることを明らかにした。
 「学生最後の学会発表で賞をいただき、とてもうれしく思います。3年間の研究が結果を出し、今後の自信になりました。石原先生をはじめ両親やさまざまな人の力を借りての受賞で、感謝を伝えたいです」
●鈴木 実佳さん=写真 「紫外線がウレタンゴム系塗膜防水層のトップコートの耐疲労性に及ぼす影響」

 トップコート(表面仕上げ材)は経年劣化するため定期的に塗り替えられる。怠ると、トップコート下部のウレタン塗膜防水層が紫外線で傷む可能性が高まる。実際、防水材に亀裂が伸展する現象が報告されている。研究ではトップコートの硬さを変数とし、ウレタン塗膜防水層のトップコートの耐疲労性に及ぼす紫外線の影響を明らかにした。
 「口頭発表は未だに慣れず、受賞連絡には驚きました。3年間の積み重ねが結果として表れ、とてもうれしく思います。石原先生やさまざまな人々に助けてもらいました。ありがとうございました」

岩崎さん永井さん


データ解析コンペ最優秀賞
 日本計算機統計学会の令和2年度データ解析コンペは2月20日、オンラインで最終報告会が開かれ、学生部門の最優秀賞(24チーム中、該当2チーム)に、本学知能メディア工学科・齊藤史哲研究室の岩崎友秋さん(4年=今春卒業・写真左)永井一平さん(同・右)のチームが北海道大チームとともに選ばれた。
 企業が提供する大規模データを独自研究に結び付け成果を出す大会。2人は卒業研究として、オリコン(株)の家事代行サービス聞き取り調査データの提供を受けて解析。「家事代行サービス業界における継続利用促進のためのレコメンドシステム」を創出した。
 家事代行サービスへの認知度は高いのに顧客の継続利用率が1%と低く、多くの業者が撤退に追い込まれている。2人は聞き取りデータから「機会があれば再利用したい」などの潜在ニーズを掘り起こす一方、機械学習の手法を改良し精度よく継続利用サービスを推薦できるシステムを構築しアプリ化。経験の浅い従業員でも適切に推薦し顧客に継続利用を促せるシステムを提案した。
 提供データを大切に扱い、実社会にどう応用するかを「深堀り」。指導の齊藤准教授によると、2人は卒論発表会後も、コンペのために頑張って資料作成や解析を続けていたという。
 岩崎さん・永井さんは「学生最後のコンテストで、学科での学びの集大成が賞に結びついたと思います」「新型コロナで授業のオンライン化に忙しい中、活力を与えてくれた齊藤先生に感謝しています」と語った。

羅さん Student Paper Award


ワイヤレス電力伝送 解析法提案
 非線形回路、コミュニケーション、信号処理に関する国際ワークショップNCSP'21は3月1、2日、オンラインで開催され、羅煒森さん(工学専攻博士後期課程=中国・広東工業大から留学し今春卒業、魏秀欽研究室・写真)が口頭発表した「Analysis procedure of class-Φ^2 wireless power transfer system(Φ2級ワイヤレス電力伝送システムの解析手法)」がStudent Paper Awardを受賞した。
 魏准教授の研究室では高周波高効率スイッチング電源の設計開発などを進めている。羅さんの研究は高調波成分に関する解析理論に基づいて、Φ(ファイ)2級ワイヤレス電力伝送システムの解析設計手法を提案したもの。ワイヤレス電力伝送システムの設計例を、高性能シミュレーターソフトLTspiceのシミュレーションと実験室での実験結果で示した。分析的予測は、シミュレーションおよび実験結果と定量的に一致しており、提案手法の妥当性を示した。
 回路方程式の計算量が膨大。また、実験測定の素子値が少し理論から離れたら、波形が理論より大きく変化しかねず、調整が大変だったという。
 羅さんは「感謝しています。魏先生と共同研究の皆さんに心からお礼を申し上げます。今後も電源回路設計の発展に貢献できるよう精進します」と感想を寄せた。

渋間さん 学会支部長賞


学習効果高める「作問」手法
 教育システム情報学会の2020年度学生研究発表会関東地区は3月8日、Zoomによりオンライン開催され、渋間澄子さん(情報ネットワーク学科4年、仲林清研究室・写真)が口頭発表した「確率分野の文章題を対象とする作問学習手法」が支部長賞を受賞した。
 仲林研では情報ネットワーク技術を使って、学習効果を高める研究を進めている。渋間さんは、講義を聴く学習者が受け身になりがちな点に着目。学習者自身が「作問」して高校数学A・確率分野への理解を深める手法を考え、実験した。
 文章問題の解決過程には①内容を理解する変換過程②内容をまとめ解法を導く統合過程③立式するプラン化過程④解答へ導く実行過程――が考えられ、文章問題が苦手な人は統合過程を飛ばす傾向がある。
 そこで学習指導要領から「余事象の確率」と「独立な試行の確率」の2つを学習対象とし、学生8人に協力してもらい、まず講義動画を視聴。さいころを使うなど作問条件を3つほど示したうえで、統合過程を飛ばさないような作問学習を試みてもらった。
 その結果、全体的には理解度の向上が見られたが、予想が外れた点もあり、作問の質を測る評価基準を見直すなど研究をさらに進めたいという。
 渋間さんは「受賞は意外でとてもうれしいです。ご指導いただいた先生と、協力してくれた皆さんに感謝します」と語った。

上村さん 若手優秀賞


光コネクタ検査で新測定法
 電子情報通信学会の機構デバイス研究会は今年3月、オンライン開催され、上村圭史さん(機械電子創成工学科4年、長瀬亮研究室・写真)の「マルチコアファイバ用光コネクタの接続特性測定法」が若手優秀賞(高専・学部部門)に決定。3月19日、長瀬教授から賞状が手渡された。
 次世代大容量伝送に期待されているマルチコアファイバー(MCF)の接続には光コネクタが必要。光コネクタは出荷検査時に、コネクタの1接続点の反射減衰量を厳密に測定し、規格を満たす必要がある。
 現在使用されるシングルモードファイバー (SMF)では測定は容易だが、MCFになるとファンイン・ファンアウト(FIFO)という接続部品が必要となり、接続点が複数あるため測定が困難。上村さんは、主にコネクタの出荷検査に使われるOCWRといわれる光ファイバー反射測定法を利用し、1接続点での反射減衰量を求められるよう計算式を検討した。その結果、FIFO部品などの内部損失を含むMCFの1接続点での反射減衰量を、計算で測定可能なことを示した
 何度も図を描き確認しながら測定。そのたびに光ファイバーの端面やアダプタを清掃した。途中であきらめたくなる時もあったが、研究室メンバーに支えられたという。
 上村さんは「受賞にはとても驚きました。長瀬教授や研究室の先輩、仲間に支えられての受賞だと思います」と語った。

電気学会支部が中島さんに贈る


女性活動奨励賞
 電気学会東京支部は3月31日付で、中島樹咲果さん(電気電子工学科4年=受賞時、魏秀欽研究室・写真)に令和2年度の電気学術女性活動奨励賞を贈った。同賞は学界に少ない女性研究者を増やし定着を図ろうと電気工学を修めた優秀な女性学生会員に贈られている。
 中島さんは設計アルゴリズムに基づいたEF^2級ワイヤレス電力伝送システムの数値設計手法を提案した。この手法を用いることで、スイッチング時にスイッチ電圧とその傾きが零となるZVS/ZDS条件を満たす正確な設計値を得ることが可能になる。LTspiceのシミュレーション結果は数値計算と定量的に一致しており、設計手法の有効性を示した。これらの研究が評価された。
 受賞について中島さんは「魏先生はもちろん、研究室の皆さんの助力があってこそで、感謝してもし切れません」と語った。