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2020.2.15

ツタンカーメンの短剣など予備視察


エジプトで理事長ら

 瀬戸熊修理事長と松井孝典常務理事(惑星探査研究センター・地球学研究センター所長)、染谷明人総務部長(2月1日付で法人事務局長)は昨年12月、エジプトを訪問。首都カイロにある国立の考古学博物館で古代エジプトの至宝の数々を視察した=写真。

 通称「カイロ博物館」と呼ばれる同博物館は収蔵点数約20万点。ツタンカーメン王の王墓から発掘された黄金のマスクや黄金の玉座、カフラー王の座像、ラムセス2世のミイラなどが展示されている。(今秋、新博物館完成のため、順次収蔵庫に移転中)。
 本学に新たに設立された地球学研究センター(所長・松井孝典)は、ツタンカーメン王(在位紀元前1333〜1324)の墓で見つかった短剣の分析調査を行う。12月の瀬戸熊理事長らの訪問は博物館側との打ち合わせを兼ねた予備調査でサバー・アブデル・ラゼク館長ら幹部が一行を出迎えた。
 一行は、通常の展示館の他、さまざまな至宝の修復作業が行われている収蔵庫に特別に案内された。ツタンカーメン王の下着や、極小のビーズ状の鉱物に糸を通して作ったサンダルの修復作業など、一般見学者は見られない貴重な光景に、一行は眼を見張っていた。

鉄隕石製、分析へ
 ツタンカーメン王の短剣は鉄隕石でできていることが分かっており、今後の分析調査で人類と鉄との出合いの研究に新たな1ページを加えると期待されている。
 本学一行はカイロ考古学博物館視察の後、アレクサンドリアにあるエジプト日本科学技術大を訪問し交流した。

エジプト日本科技大と教育・研究で連携協定


調印式で(左から)ゴハリ学長、カーメル大使、瀬戸熊理事長、小宮学長
調印式で(左から)ゴハリ学長、カーメル大使、瀬戸熊理事長、小宮学長
 エジプト・アラブ共和国のエジプト日本科学技術大(アハメッド・ゴハリ学長、学部生・院生約320人=アレクサンドリア県)と本学は2月5日、津田沼キャンパス1号館の役員会議室で、教育研究分野で協力を推進する連携協定の調印式を行った。
 調印のためアイマン・アリ・カーメル駐日エジプト・アラブ共和国大使館特命全権大使とゴハリ学長、電気電子工学専攻のアハメッド・アラム准教授らが来日。本学は瀬戸熊修理事長、小宮一仁学長、松井常務理事らが調印式に臨み、国際協力機構(JICA)からも同大学の育成を支援する松下慶寿アドバイザーら8氏が同席した。
 エジプト日本科学技術大は2010年に設立された国立大で、工学部8学科と国際ビジネス・人文学部があり学部生・院生約320人。日本政府がJICAを介し技術指導などを支援している。今回の協定は松井常務理事が携わる調査プロジェクトの縁もあり実現した。
 調印式後、カーメル大使やゴハリ学長一行は津田沼2号館の研究室を中心に視察し、高電圧実験室では雷発生実験を見学=写真下。新習志野キャンパスにも立ち寄り種々の施設に興味を示していた。

ベトナムで正式認定


本学支援のロボ工学科
ハノイ国家大で講義する富山研究員
ハノイ国家大で講義する富山研究員
 ベトナムの大学の頂点に立つハノイ国家大学工科大に、最先端の本学のロボット教育・研究システムを移植して開設された同国初のロボット工学科が、ベトナム政府から正式に認定された。
 ベトナムの国家大学は中央政府に直属しており、教育訓練省の管轄下にある国立大学とは別格の存在。もう1校、ホーチミン市国家大がある。
 ハノイ国家大は工科大学のほか、自然科学、人文社会科学、外国語など7つの大学で構成されており、研究費などを優先的に配分されている。
 政府から認定書が交付された昨年11月29日にはグエン・スアン・フック首相が同大学を訪れ、工科大の若手研究者6人が本学未来ロボット技術研究センター(fuRo)の大和秀彰副所長と富山健研究員の指導で2年がかりで作った案内ロボットを視察した。
 ハノイ国家大と本学は2013年に交流協定を締結。本学未来ロボティクス学科のカリキュラムをそっくり移植して18年9月、工科大にロボットプログラムを開設、学生の受け入れをスタートし、19年9月、学科を開設した。現在、1年生と2年生合わせて110人が在籍。22年6月に第1期卒業生を送り出す。
 この間、本学はベトナム側の教員や学生の研修をfuRoと未ロボ学科で受け入れる一方、昨年1月には富山研究員、9月には未ロボ学科の菊池耕生教授が学部4年生4人とともに渡越し、現地学生に1週間の集中講義を行うなど、学科完成に向けて全面協力態勢を取ってきた。
 2月には未ロボの林原靖男教授、太田裕介教授が学部生とともに渡越し集中講義を行う予定。
 ここまでプロジェクトの推進に主導的な役割を果たしてきた富山研究員は「学科完成まであと2年余。3、4年次のカリキュラム実行や卒業研究、卒業後の進路指導など、課題は山積しています。今後も関係者のご協力をよろしくお願いします」と話している。

イチゴ自動収穫に助成金


市川さんにリバネス研究費
 イチゴ自動受粉収穫ロボットシステムの開発リーダーを務める市川友貴さん(情報工学科4年、信川創研究室=写真・昨年11月15日号2面参照)の「虫媒に代わる受粉ロボットシステムとイチゴ検出アルゴリズムに関する研究」が、(株)リバネス主催の若手研究者助成制度「第46回リバネス研究費」クボタイノベーションセンター賞に決まり2月13日、(株)クボタ本社(大阪市浪速区)で授与式があった。
 農業の改革につながる独創的・先進的な研究と認められ、上限50万円の研究費が助成される。
 考案システムは、イチゴ農家の作業・費用軽減や地球温暖化が作物に及ぼす影響を考え、イチゴ栽培をミツバチによる虫媒に頼らず、自動ロボットが受粉から収穫まで代行、そのイチゴ検出アルゴリズムなどを開発するもの。将来は果実の植物工場実現を目指し、米国で3月に開かれる最先端テクノロジーの祭典「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW2020)」に出展が決まっている。
 市川さんは「研究に評価と期待をいただき、大変うれしく思います。農業分野の課題解決と科学技術の発展に寄与できるよう引き続き努めていきます」とコメントした。

高層学校施設に排煙設備を


中田さん優秀講演奨励賞
 令和元年度空気調和・衛生工学会大会(昨年9月18〜20日、札幌市の北海道科学大で開催)で、中田夏郎さん(建築都市環境学専攻修士1年、小峯裕己研究室=写真)が発表した「超高層学校施設における排煙設備の必要性に関する研究」が優秀講演奨励賞に決まった。
 中田さんは小峯研で、建物の空気環境や適正な建築計画などを研究。現行の建築基準法には、学校施設に排煙設備の設置義務はないが、高層の大学施設が増える現在、火災時に問題はないのか。
 中田さんらは、建物の避難安全性能を確認するため、建設省告示で定められた計算式(階避難安全検証法や全館避難安全検証法)で検証。高層学校施設に対する排煙設備の設置を義務づけるよう建築基準法を改正すべきだと結論した。
 今回受賞の投稿論文は研究室の修士生たちの研究内容を整理・修正したもの。中田さんは「院生として初めての学会で、緊張した中での受賞で、うれしく思います。指導者である小峯教授に感謝します。小峯研では院生が毎年、学会講演にチャレンジする方針なので、次回はさらによい発表ができるよう努力します」と語った。