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2019.11.15

イチゴ自動栽培、米国出展へ


市川さんのロボシステム
 市川友貴さん(情報工学科4年、信川創研究室=写真)が開発リーダーを務める「HARVESTX=イチゴの自動受粉収穫ロボットシステム」が、東京大・産学協創推進本部主催のTodai To Texas 2020(9月29日、東京・本郷の東大情報学環・福武ホールで開催)で、プレゼンやデモ展示の1次・2次審査を通過。他の通過5チームとともに来年3月、米テキサス州オースティンで開かれる最先端テクノロジーの祭典「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW2020)」に出展することが決まった。
 出展手続きや費用は東大・運営事務局が全面サポートする。
 イチゴの受粉は輸入種セイヨウミツバチの媒介で行われてきたが、巣箱管理の負担やミツバチの減少、地球温暖化が栽培に及ぼす影響などが懸念されている。
 自動受粉収穫システムHARVESTXは、高さ約3メートルの棚状システム。イチゴ栽培ポットやロボットアームなどが取り付けられており、温度・湿度や土壌水分量などを管理。画像情報で受粉時期を判断し、専用アタッチメントが受粉。成熟も画像が判断し、専用ピッカーで自動収穫する。
別シンポでもプレゼン賞
 これに先立ち市川さんは、若手研究者がソフトウエアの手法に関する研究を発表する第29回インテリジェント・システム・シンポジウム(FAN2019=9月17、18日、富山市の富山国際会議場で開催)でも「イチゴの収穫作業自動化のための果実検出手法」を発表し、プレゼンテーション賞を受賞した。
 市川さんは「SXSW2020に出展できることになり、大変うれしく思います。引き続き研究開発に努めてまいります」と語った。

信川准教授に最優秀論文賞


金田准教授も優秀論文賞/知能情報ファジィ学会

 信川創・情報工学科准教授=写真左=らが日本知能情報ファジィ学会主催・第29回インテリジェント・システム・シンポジウム(FAN 2019=9月17、18日、富山市の富山国際会議場で開催)の講演論文集に発表した「興奮性-抑制性を伴うスパイキングニューラルネットワークにおける定常状態応答」が、同大会の2019年度最優秀論文賞に決まった。また、金田晃一・先進工学部教育センター准教授=写真右=の「動的時間伸縮法による水中環境での起立動作時の下肢筋活動評価」も優秀論文賞に決まり、同大会で授賞式があった。
 日本知能情報ファジィ学会は知能の全方位的解明を目指し、電子、機械、計測、システム理論、生体医工学などあらゆる分野のニューラルネットワーク理論、ファジィ理論、人工知能理論などのほか人文系理論も駆使して追究している。
 信川准教授らの論文は、自閉症や統合失調症などの複数の精神疾患について述べたもの。これら疾患では興奮性ニューロンと抑制性ニューロン数比率のバランス(E/Iバランス)の崩れが報告されている。また知覚や思考に関連する脳波のガンマやベータ帯域で異常がみられる場合が多い。
 信川准教授らは計算機上に構築した仮想的な脳で、E/Iバランスの変質と脳活動異常の関係を数理的に明らかにした。今後、精神疾患の診断や治療薬の開発に貢献できると考えられる。
 この研究は、力学系理論や計算論的神経科学、認知科学、精神医学など多分野にまたがり、信川准教授と我妻伸彦・東邦大講師、金沢大の池田尊司助教、長谷川千秋特別研究員、高橋哲也協力研究員(魚津神経サナトリウム副医院長)ら5人で取り組んできた。
 信川准教授は「受賞を励みに研究を継続し、精神疾患の早期診断や治療の実現につながるような研究成果を挙げていきたいと思います」と語った。

 金田准教授の論文は身体動作の評価を、従来スポーツ・体育系分野でとられてきた手法ではなく、音声認識手法の一つ「動的時間伸縮法」=波形同士の整列比較と差分計算を同時に行い類似度を求める手法=で評価した。
 特に水中環境での立ち上がり動作と筋活動について、水深を変化させた際に陸上動作とどの程度類似しているかを検討した。その結果、従来の手法による成果を裏付けた上、さらに詳細な身体動作を分析し報告することができた。
 金田准教授は普段はスポーツ・体育系分野で研究しているが、今回は異分野学会での発表。信川准教授の勧めで発表したという。「このような賞を頂け非常に驚いています。学会大会を案内してくださった信川先生に感謝します」と話している。

住み継ぐ家 佐賀県知事賞


加藤さん設計コンペで
「貫継ぎ住継ぐ家」の説明図と加藤さん
「貫継ぎ住継ぐ家」の説明図と加藤さん
 山林の育成を目指すNPO法人「森林をつくろう」が主催し林野庁、佐賀県などが後援した第15回「新・木造の家」設計コンペで、加藤翼さん(建築都市環境学専攻修士1年、遠藤政樹研究室)の「貫継ぎ住継ぐ家」が10月26日、特別賞の一つ・佐賀県知事賞に選ばれた。佐賀市の歴史民俗館で表彰式があった。
 コンペのテーマは「世代を繋ぐ家」。核家族化が進み、家族が何世代も同じ家に住み継ぐことが難しくなった。
 日本の伝統建築は、くぎに頼らず、柱と柱を別の木材を貫通させてつなぐなど、継手を工夫して組む。解体、建て替えと古材の再利用をしやすくする知恵だ。伝統構法を今に生かせば、家屋と材料を大切にして世代が住み継ぎ、山林・木材生産者とも、よい関係を築いていけるのではないか。
 佐賀駅郊外、空き家が点在する田園の敷地約300平方メートルに、加藤さんは増改築が容易な平屋建てを提案。長い縁側を付け瓦屋根に採光窓をいくつも並べた。敷地に佐賀県木クスノキを植え、育ったら家具などに利用。30年後、60年後、90〜100年後、と道路面に合わせスライドして増改築していく姿を示した。
 9月の設計図審査で7作品が通過。2次審査は京都大名誉教授ら審査員9人の前で公開プレゼン形式で行われた。
 加藤さんは「1次審査を通ると思っていなかったので驚きました。2次審査では(初対面の審査員にどう伝えるか)特に気を使いました」と語った。

グッド・レクチャー賞に12人


 令和元年度前期のグッド・レクチャー賞に教員12人が選ばれ、10月17日、小宮一仁学長から表彰された=写真。このあと後期の授業アンケート結果と合わせ、ベスト・ティーチャー賞が決定する。前期グッド・レクチャー賞受賞者とその講義は次の通り(順不同)。
 ▽緒方隆志教授「応用材料力学」
 ▽内田史朗教授「リサイクル概論」
 ▽藤本靖教授「電子回路2」
 ▽尾上薫教授「化学反応工学」
 ▽引原有輝教授「身体と健康の科学」
 ▽東山幸司教授「物理学基礎」
 ▽佐藤和准教授「スポーツ科学」
 ▽米田完教授「ロボット制御学」
 ▽渡邉努准教授「物理学基礎」
 ▽鴻巣努教授「ユーザビリティエンジニアリング」「プロジェクトマネジメント概論」
 ▽木島愛准教授「言語と文化1」
 ▽須藤勲准教授「国際社会論」