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2019.11.15

電波の伝搬損失推定で新手法


中林チームが最高賞
中林准教授(左)と糸井助手
中林准教授(左)と糸井助手
 高速大容量の無線通信システムを追究する電子情報通信学会アンテナ・伝播研究専門委員会の電波伝搬モデリングコンペに、情報通信システム工学科の中林寛暁准教授と糸井清晃助手、秋山慶伍さん(電気電子情報工学科を今年3月卒業)、山崎滉生さん(同)の4人チームが「代表的な伝搬モデルを効果的に融合した伝搬損失推定」の新手法で挑戦。コンペの成績と、2019年電子情報通信学会総合大会(3月19〜22日、東京都新宿区の早稲田大・西早稲田キャンパスで開催)でのプレゼン結果から、最高賞である優秀賞を受賞した。6月20日、東京都港区の機械振興会館で表彰された。
 コンペは会期中に、北九州市小倉北区で測定されたデータを基に実施。学生・若手研究者たちに、市街地の道路に沿って10メートル間隔の地点で測定された伝搬損失データと市街地の3Dマップが配布された。この情報を基に参加者は任意の地点の伝搬損失を推定する手法を考案。実行委員会から示された地点の伝搬損失を推定し、実測データとの誤差を求め報告する。
 陸上移動通信の伝搬損失はこれまでに重回帰分析や解析的手法のほか、近年は深層学習を用いた手法が提案されている。
 中林チームは、従来の代表的伝搬モデルのパラメータを分析し、重要度の高いパラメータだけを用いた深層学習により、伝搬モデルを効果的に融合して伝搬損失推定を行うモデルを構築、高精度な推定を可能にした。
 この結果、推定精度で1位を獲得。新規性や実用性も優れていると評価された。
 中林准教授は「初受賞、それも第1回大会でなので大変うれしく思います。教員と在学生が、師弟であると同時にチームになってコンペに挑み、優秀な成績を修められたことは意義あることでしょう。研究をさらに充実させていきたいです」とコメントした。

船橋教育フェスに5団体参加


学長賞2点も選出
 船橋市教委が子どもたちへの教育を“丸ごと展示”する「船橋教育フェスティバル」が10月19、20日の2日間、船橋市の総合教育センターで開催された。同市と教育や地域創成で包括的連携協定を結んでいる本学も19日、5階視聴覚ホール全面に千葉工大「科学の大広場」を展開し、計5団体の教員・学生たちが体験教室を開いた。
 未来ロボティクス学科の学生たちはロボカップ世界大会で活躍した人型ロボットCIT Brainzを操作。そばで他の体験教室=バスボム(入浴剤)づくり(デザイン科学科)▽チタン製オリジナルカラーストラップ作り(先端材料工学科)▽スズ鋳造でペーパーウエートを作ってみよう(先端材料工学科)▽ピンポンだまキャッチャーローバーの操作(機械電子創成工学科)――が、親子連れなど約400人を迎え入れた。
 学生たちが実験やものづくりを通して、科学技術を分かりやすく説明すると、子どもたちは目を輝かせて取り組んでいた。保護者たちも先端技術や、学生たちの研究ぶりに質問を寄せていた。
 2日目の20日は科学論文・工夫作品展の表彰式が行われ、算数・数学チャレンジふなばし、科学論文・工夫作品展、社会科作品展、の各分野で成果のあった児童生徒が表彰された。
 本学も、夏休み自由研究の展示作品の中から「千葉工大学長賞」2点を選出。小宮一仁学長は出席できずビデオレターで受賞者を祝福。代行の松澤秀則・応用化学科教授が表彰状を手渡した。
 科学工夫作品部門では山本一輝さん(市立小室中学2年)の「自作ピッチングマシン」が、試行錯誤を繰り返しすでに技術者としての基本姿勢ができているとして選ばれた。
 科学論文部門では、大野梨花さん(市立行田中学2年)の「カルボキシルメチルセルロースゲルの調整と物性」が、すでに研究者といっても過言ではない姿勢と洞察力、旺盛な知識欲などが評価されて選ばれた。
バスボムづくり チタンを使ってキーホルダーづくり
バスボムづくり チタンを使ってキーホルダーづくり

台湾・東海大でデザインWS


デ科学生9人と稲坂助教
チタンを使ってキーホルダーづくり
 デザイン科学科の学生9人が8月26〜30日の5日間、稲坂晃義助教の引率で、海外協定校で互いに往来のある台湾台中市の東海大学を訪問し、国際デザイン・ワークショップ(WS)に参加した=写真
 同科3・4年生を対象とした夏期集中授業「グローバルデザインワークショップ」の一環で、異文化とコミュニケーションを試み、WSでデザインの課題をこなすもの。
 今年度のテーマは「持続可能なストリートファニチャーのデザイン」。本学と台湾学生の合わせて43人が8グループに分かれ、課題に挑んだ。
 提案されたのは、バス停のベンチ▽ベビーカーを押す親子のための公園ベンチ▽日差しの強い広場の日陰を作るためのパーゴラ――のデザイン。
 お互いに身振り手振りのほか単語の付箋を並べたり、スケッチを描いたり、模型を作ったりとデザイン学生らしいコミュニケーション力を発揮。稲坂助教によると、初の海外、語学力不足などの不安に負けず、5日間で仕上げたとは思えない提案が得られたという。
 学生たちも「台湾に同じデザインを志す友人ができ、成果も残せて自信が持てた」「今後の活動に意欲がわいた」と前向きな感想を述べた。
 デザイン科学科では今後も、単なる国際交流に終わらせずデザインの専門性を高める取り組みとして強化していきたいという。

学位取得


千葉工業大博士号(工学)=9月12日
糸井 清晃 糸井清晃・情報通信システム工学科助手
▽学位論文「形態を指向した非線形画像処理に関する研究」
 形態が重要な意味を持つ文書画像と顔画像の処理に関し、文書画像処理では紙媒体の文書を電子的に記憶する際に障害となる地紋を除去したりメモ書きなどを抽出する手法を、顔画像処理ではニューラルネットによる表情の分析とモーフィングによる表情の合成を用いた超低ビットレート通信手法を提案した。
宇都宮大博士号(国際学)=9月30日
胡 哈斯其木格 胡 哈斯其木格・学務部国際交流課事務職員
▽学位論文「近代内モンゴルにおける医療衛生の移入と受容に関する研究―聖母聖心会・善隣協会・興蒙委員会を中心に―」
 19世紀以後の近代西洋医学に基づく医療・衛生事業が、植民地統治にどんな役割を果たしてきたかを、内モンゴルの事例を挙げて解明。一般に近代化は都市から農村(草原)へと同心円状に浸透していくと捉えられてきたが、内モンゴルでは、西洋の宣教師と帝国日本の植民地支配に伴って推進された医療・衛生の近代化はその逆だったという結論を導き出した。

環境科学研に助成金


印旛沼の水環境調査
 印旛沼の水質と生物を調べている本学文化会の環境科学研究会(増田涼部長=生命科学科3年=ら25人=写真、顧問=村上和仁教授)に、公益財団法人印旛沼環境基金からこのほど、令和元年度の活動に対し助成金交付(限度額いっぱいの20万円)の決定通知があった。
 環境科学研は「水質・生物・健全性指標調査による印旛沼の水環境評価」をテーマに助成金を申請。西印旛沼の調査地点2カ所で2012〜19年の8年間、四季ごとに水質と生物の生息状況を調べ▽印旛沼の水質特性を把握する▽水環境健全性指標調査により、印旛沼に対する人の見方・感じ方がどう変化しているかを把握し、印旛沼の環境保全に役立てる知見を集積する――を目指している。成果は大学祭で展示発表するほか来年3月、学会発表の予定。
 印旛沼環境基金は、重要な水源・自然資源である印旛沼を守ろうと千葉県と流域の13市町、関係団体が集まり1984(昭和59)年に設立。流域環境の改善に向け活動している小中高校・大学・市民団体などを助成している。