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2019.7.15

「CIT Brains」世界3強
ロボカップ2019 キッドサイズサッカー


強豪 仏、中と頂上戦 大会最高得点も
機体を調整する「CIT Brains」チーム
機体を調整する「CIT Brains」チーム
 未来ロボティクス学科を主体に有志で組織しているヒューマノイドロボット開発チーム「CIT Brains」が7月2日から8日まで豪州シドニーで開かれた「ロボカップ世界大会2019」に出場。ヒューマノイド・キッドサイズ部門のサッカーゲームで3位に入った。
 上位チームの実力が伯仲する中、「CIT Brains」は名実ともに“世界の強豪”と認められた。
 ヒューマノイド・キッドサイズ部門には世界各国から16チームが参加し、まず4機対4機でサッカーゲームを行った。
 ゲームは16チームが4グループに分かれ、各グループ内で総当たり戦を行ってトーナメントの対戦相手を決める予選に始まり、トーナメント1回戦、準々決勝、準決勝、決勝と進む。
 「CIT Brains」は今回最新のルールに合わせて学生主体で開発・製作した機体「GankenKun」6機を持参。予選3試合中2試合に勝利し、トーナメント1回戦で中国のチーム「TH-MOS」を12対0の大差で撃破した。12点は1試合の獲得点としては今大会最高だった。
 続く準々決勝では、インドネシアの「Barelang FC」を5対1で破ったが、準決勝で激突したのは仏ボルドー大学の「Rhoban Football Club」。世界大会などで何回も対戦した相手だ。
 「CIT Brains」はフィールド上のロボット同士が連携プレーするための通信システムが原因不明の不調に陥っている間に、5点を先取された。そこで後半、ロボット同士の通信を遮断し、“全員フォワード”態勢に戦略を切り替えて3点を奪い返したが、そこでゲーム終了。しかし、「CIT Brains」が反撃している間、通信システムが正常な「Rhoban」は1点も取れなかった。
 3位決定戦は中国遼寧省浙陽市の大学、智能工程学院のチーム「SYCU-Legendary」と対戦。5対1で降し「CIT Brains」の3位が決まった。
 決勝は中国浙江省杭州市の名門、浙江大学チーム「ZJUDancer」と「Rhoban」と、上位進出の常連同士の対戦となり、5対1で「Rhoban」が世界王座に輝いた。
テクニカルは2位
 キッドサイズ部門ではこの他にテクニカルチャレンジとドロップインが行われた。
 テクニカルチャレンジでは7チームが①プッシュリカバリー②ダイナミックキック③ハイジャンプ④ハイキックの4種目で技術力を競った。
 「CIT Brains」はプッシュリカバリーで圧倒的な強さを発揮し、合計29点を獲得したが、人間のサッカーのセンタリングシュートに当たる②や③Χで最高得点し、合計33点を取った「Rhoban」に競り負け2位。
 ドロップインは参加16チームがそれぞれ1機ずつ出場させたロボット4機で構成する連合チームによる競技。得点はロボット1機ごとにカウントされる。「CIT Brains」の「GankenKun」は合計23点を取り、33点を取った「Rhoban」に次いでここでも2位だった。
 この競技のフィールドは、ガラス張りの天井から自然光が差し込み、ロボットのボール認識能力を阻害する。「Rhoban」の試合中は雨が降っていた。その他の試合は晴れや曇りなど、光の入り具合が変わる条件下で行われたが、「GankenKun」は唯一、ボールを認識して動いていた。
 「ロボカップ世界大会2020」は来年6月23〜29日、フランスのボルドーで開催される。
林原靖男教授の話
CIT Brainsはこれまで世界のどのチームもできなかった技術を開発してロボカップを牽引してきました。今回の世界大会の上位チームは、どのチームが優勝してもおかしくない状態まで技術の成熟度が上がってきていました。その中でCIT Brainsは他チームからリスペクトとライバル意識の両方を抱かれていることを実感しました。“世界の強豪”として定着してきたことを自覚させられました。
■RoboCup2019出場メンバー(敬称略)
▽加瀬林千里▽スプラトマン・ジョシュア▽関遥太(以上修士2年)▽島田悟志▽中島崇晴▽ 林立樹(以上修士1年)▽伊藤杜人▽小笠原拓巳▽グエン・アイン・クアン▽松本康希(以上学部3年)▽林原靖男(教授)
参加メンバー
参加メンバー

学会賞2人、支部賞も3人


機械学会支部講演会
越川 樹さん 小椋英里花さん 川又 健太さん
越川 樹さん 小椋英里花さん 川又 健太さん
 日本機械学会関東支部の第25期総会講演会は3月18、19日、本学津田沼校舎2、3、6号館で開催され、本学の越川樹さん(機械サイエンス専攻修士2年、緒方隆志研究室)と田中将太さん(同、高橋芳弘研究室)が2018年度若手優秀講演フェロー賞を受賞。小椋英里花さん(機械サイエンス専攻修士1年、菅洋志研究室)、金原大地さん(同、佐野正利研究室)、川又健太さん(未来ロボティクス学科3年、藤井浩光研究室)の3人は若手優秀講演賞を受賞した(学年は発表時)。それぞれ卒業・進学後の4月16日に賞状が贈られた。
 フェロー賞は機械学会が授与するもので、2人の発表論文は次の通り。
 越川さん「SUS304鋼環状切欠き試験片を用いた応力集中部のクリープ損傷評価」▽田中さん「有限要素法を用いた車輪とレールの接触解析の基礎的研究」。
 越川さんの研究は、高温高圧下での耐熱金属材料の損傷メカニズムを解明し火力発電所のボイラーなどの寿命を予測するもの。「ひとつの実験に数百〜数千時間かかりました。学生最後の学会発表で受賞でき、頑張ってきた甲斐があったなと思います」と感想を寄せた。
 一方、機械学会関東支部が授与する若手優秀講演賞3人の発表論文は次の通り。
 小椋さん「化学気相研磨法による高効率なタングステン探針の作製技術」▽金原さん「プラズマアクチェータを用いた多分岐管の流量割合と圧力損失」▽川又さん「バックホウによる掘削作業のための測距データのボクセル化を用いた土砂堆積量の推定」。
 小椋さんの研究は、数十ナノメートル(10億分の1メートル)の尖った先端を持つナノ探針の作製法について。ナノ探針はCPUやメモリの故障解析やナノテク研究に欠かせないが、液体中でゆっくり溶かしながら作製するので製作コストが高かった。小椋さんらはタングステン表面の酸化と昇華を、表面数ナノ部分に限定し精密に制御することで、ドライ環境で速く大量作製できる方法を見つけた。
 「先輩たちの研究に、熱源や作成条件などで工夫を加え、先輩とは別の作製法を編み出せました。成果が認められ誇らしい気持ちと、菅先生や研究室のメンバーに感謝の気持ちです」
 川又さんの研究は、バックホウ(油圧ショベル)に取り付けた3次元センサによって工事現場の土砂の3次元形状をセンシングし、短時間で土砂量の推定を行うもの。ゲームや医療解析で使られるボクセルの技術に着目し応用した。
 「素晴らしい賞を頂け光栄です。指導教員をはじめ皆様に感謝するとともに、今後も建設産業分野と社会に貢献できるように努めていきたいと思います」

中高生チームが報告会


国際ロボコンで活躍
 未来ロボット技術研究センター(fuRo)の富山健研究員らがメンターとして支援・指導して世界最大規模の国際ロボコンに参加している中・高校生のチーム「サクラ・テンペスタ」が7月13日、津田沼6号館で活動報告会を開いた。
 サクラ・テンペスタは2017年に発足。千葉県と東京都の中・高校生20人ほどが加わって「ファースト・ロボティクス・コンペティション(FRC)」に挑戦するための活動をしている。メンバーの半数が女生徒だ。
 初挑戦だった昨年3月のハワイ地域大会で好成績を収めて、日本チームとして初めて世界大会に進んだ。4月に米デトロイトで開催された世界大会では「最も印象に残る活躍をした新人チーム」として賞を受けた。
 今年は3月のハワイ地域大会で、FRC最高の賞である「チェアマンズ・アワード」を獲得。4月の世界大会では決勝トーナメントに進出した。
 FRCは“電動立ち乗り2輪車”―「セグウエイ」の開発者、ディーン・ケーメン氏らが創設した理数系(STEM)教育振興のためのNPO団体が主催する、15歳から18歳までの青少年のためのロボット競技会。FRCの特色はロボット製作と競技成績を競うだけでなく、資金作りやチーム運営、STEM教育振興のための社会貢献までが審査対象になること。
 富山研究員は自分の研究室をチームの活動の場として提供する一方、未来ロボティクス専攻修士課程に在籍していた瀬戸悠介さん(上田研究室)や山本帝輝さん(米田研究室=いずれも課程修了)の協力を得て、プログラミングや競技用ロボットの基本技術、企業とのコンタクトの取り方、メールの書き方まで指導してきた。
 報告会でチームメンバーは、大会での英語のプレゼンテーションを再現するなど大学生顔負けのパフォーマンスを披露して、保護者やスポンサーらを感動させていた。