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2019.4.15

人工衝突実験に成功!


PERC技術 「はやぶさ2」支える
衝突装置から撃ち込まれた弾丸で、リュウグウからイジェクタカーテンが立ち上った瞬間を捉えたDCAM3の高精度画像=JAXA、神戸大、千葉工大、高知大、産業医科大
衝突装置から撃ち込まれた弾丸で、リュウグウからイジェクタカーテンが立ち上った瞬間を捉えたDCAM3の高精度画像=JAXA、神戸大、千葉工大、高知大、産業医科大
 世界初の快挙となった探査機「はやぶさ2」による小惑星「リュウグウ」での人工衝突実験の成功。弾丸衝突の瞬間に飛び散った噴出物をとらえた画像もしっかり送られてきた。太陽系の謎をのぞく「窓」を作るこの実験の“主役”である衝突装置(SCI)と分離カメラ(DCAM3)の開発と科学検討に、本学惑星探査研究センター(PERC)が深く関わっている。
噴出物確認、分離カメラも
和田主席研究員 石橋上席研究員
和田主席研究員 石橋上席研究員
 はやぶさ2から高度約500メートルで分離されたSCIが40分後に作動し、重さ2キロの銅の弾丸をリュウグウの地表に打ち込んだのは4月5日午前11時36分。
 弾丸衝突の瞬間は、探査機から分離されてリュウグウから約1キロ離れた地点に浮かぶDCAM3に搭載された解像度・通信方式の異なる2台のカメラ(アナログ系とデジタル系)で撮影され、まずアナログ系画像が探査機を経由して地上に届く。実験が成功したかどうかは、この画像を見るまで分からない。
 SCIの開発と科学検討を担当するPERCの和田浩二主席研究員、DCAM3の開発に携わった石橋高上席研究員らはやぶさ2プロジェクトチームのメンバーが待つJAXA宇宙科学研究所の運用室に、「イジェクタカーテン」と呼ばれる噴出物が映った画像が届いたのは弾丸発射から約3時間が過ぎたころ。
 「全員がオー!と感動の声を上げ、拍手が鳴り止みませんでした」(和田さん)
 探査機からはその後、デジタル系カメラが撮影したイジェクタカーテンの高精度画像も届いた。
 「イジェクタカーテンが写らないかもしれない数多くのリスクがあった中、想定をはるかに超える画像が得られて夢のようです」(石橋さん)
 衝突実験の際、探査機は高度20キロのホームポジションから徐々に降下して、高度500メートルでSCIを分離。探査機は作動したSCIの破片や衝突による噴出物などが当たって機体が損傷するのを避けるため、リュウグウの裏側へ退避した。その途中でDCAM3を分離した。
観測と検証続く
 衝突実験の後、探査機は2週間かけてホームポジションに移動。4月25日に再び高度1.7キロまで降下して人工クレーターが形成されていると考えられる衝突点付近の状態を観測。この一連の上昇と降下に活躍するのが、PERCの千秋博紀上席研究員が開発と科学応用研究に携わっているレーザー高度計(LIDAR)だ。
 衝突点の位置の特定と、形成されているであろうクレーターの形や大きさ、深さなどの観測には、PERCの山田学主任研究員が開発と研究に携わった光学航法カメラ(ONC)と、千秋上席研究員が関わっている中間赤外カメラ(TIR)が活躍する。とりわけONCが撮影した衝突前と衝突後の画像は、この観測に重要な役割を果たす。
 衝突点付近の観測によって着地可能と判断されれば、はやぶさ2は5月以降に、2月22日に続く2回目の着地を試み、衝突によって露出したリュウグウ内部の物質採取を試みる予定。
 今回の衝突実験・人工クレーター作りは、天体同士の衝突の過程を本物の惑星で確かめ、衝突物理モデルの構築につながる世界初の試みで、和田主席研究員の研究テーマ。
 また、太陽光や放射線の影響を受けにくいリュウグウの地中物質を地球に持ち帰ることができれば、46億年前の太陽系の誕生や生命誕生の謎の解明を進める貴重な試料になる。そこでは荒井朋子主席研究員らの研究が期待されている。

留学生支援に寄付


旭電業に感謝状
 国際交流支援基金として広く留学生を受け入れるために役立ててほしい、と旭電業(株)(代表取締役社長・松岡徹氏=写真右、昭和49年、電気工学科卒)から本学に多額の寄付があった。これに対し4月8日、松岡氏が本学を訪問した際、瀬戸熊修理事長から松岡氏に感謝状が贈られた。
 同社からの寄付金は、留学生の受け入れ、留学生が将来自国を支えて活躍できるように、と人材育成の資金に充てられる。

イオンビームで表面加工


矢上さん優秀講演賞
 千葉県加工技術研究会の平成30年度研究事例発表会(3月4日、日本大生産工学部津田沼キャンパスで開催)で、矢上裕晃さん(機械サイエンス学科4年=写真、瀧野日出雄研究室)が「磁界型4極子レンズを用いた精密形状創成用小径イオンガンの開発」を発表し、優秀講演賞を受賞した。
 瀧野教授の研究室では、固体表面に従来にない構造=平滑性や形状精度の高い表面、またはナノやマイクロの微細形状を持つ表面=を創成し新機能を発現させる研究をしている。
 矢上さんは、直交軸上に4つの磁極を配置したレンズで、イオンビームに発散作用や収束作用を持たせ、材料表面の微細加工の精度を上げる研究について発表した。
 イオンビーム加工を知らない人にも理解できるよう資料作成に苦労したという。発表16件中5件が優秀講演賞に選ばれた。
 矢上さんは「瀧野教授と協力してくださった皆様のおかげです。大学院進学後も一層努力を重ね、研究に取り組んでいきたい」と述べた。

デジタル工作機械の未来は


市川さんの講演に感謝状
 次の100年の電子情報通信技術はどこへ向かうかを探る電子情報通信学会総合大会(3月19〜22日、東京都新宿区の早稲田大・西早稲田キャンパスで開催)のシンポジウムに、市川友貴さん(情報工学科3年=写真、信川創研究室)が招かれ「デジタル工作機械によるアイディアの具現化とデプロイ」を講演し、Certificate of Appreciation(感謝状)を贈られた。
 市川さんは高校(浜松)時代から情報工学にひかれ、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の予算で3Dプリンターを買ってもらいロボットアームなどを製作。
 本学入学後は、若手セキュリティーイノベーターを育成する国立研究開発法人情報通信研究機構SecHack365の1期生、クマ財団の奨学生を経験。ロボットシステムやIoTデバイスを開発する「Dot Robotics」を個人で立ち上げ、大手電機メーカーやベンチャー企業から製品開発を引き受けている。
 シンポジウムでは、主に3Dプリンター活用例として▽骨伝導スピーカーを通し片耳難聴者向け眼鏡型補聴デバイス(3Dプリンターで、切削加工では不可能な中空形状を生み出せる)▽米国テキサス州オースティンでの展示会参加▽いちごの自動栽培・収穫が可能な定置型ロボットシステムの構想と、資金の集め方▽大学にはほかにも、高性能コンピューターやVR、ARデバイス、レーザーカッターやCNCフライスなどを利用できること――など、デジタル工作機械による可能性とその限界について説明した。
 市川さんは「私の講演が聴いてくださった方々の今後の研究やものづくり、社会実装への挑戦のきっかけとなれば幸いです」と語っている。