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2019.2.15

スミソニアンに展示
CanguRo―「乗れる知能ロボ」


NY デザイン・ミュージアム内
クーパー・ヒューイット・スミソニアン・デザイン・ミュージアムの外観
クーパー・ヒューイット・スミソニアン・デザイン・ミュージアムの外観
 未来ロボット技術研究センター(fuRo)が開発したロボットから乗り物へと自動変形する次世代モビリティー「CanguRo(カングーロ)」が、ニューヨークの名門博物館「クーパー・ヒューイット・スミソニアン・デザイン・ミュージアム(Cooper Hewitt, Smith sonian Design Museum)」の企画展「これからの道〜モビリティー再考(The Road Ahead: Re imagining Mobility)」に展示されている(3月末までの予定)。 
 マサチューセッツ工科大など米国内、フランスのルノーなどヨーロッパからの出展と並んで、日本からは「CanguRo」と、トヨタ自動車が2013年に発表したユニークなスタイルの3輪電気自動車が出展。
 合わせて40点の総展示は、いずれもデザインの歴史に残る「デザイン性の高さ」を視点に選ばれたモビリティーばかり。なかでも「スマートスクーター」のキャッチで、「山中俊治氏デザイン×fuRo制作」の「人が乗れる3輪の人工知能ロボット」と紹介されている「CanguRo」は、観客の一段と熱い視線を浴びている。
 「クーパー・ヒューイット・スミソニアン・デザイン・ミュージアム」はアメリカの鉄鋼王、アンドリュー・カーネギーがかつて住んでいた豪邸を改装したもの。食器、装飾品、家具など数十万点のコレクションを保有し、デザイン博物館としては全米で最も充実している。19の博物館・研究センターを抱えるスミソニアン博物館群の1つ。
 今回の展示の実務を担当したfuRoのプランナー、野村緑主任研究員は「歴史ある素晴らしい建物の中に最先端のロボットというギャップがたまりません」と話している。
展示されたCanguRo(手前)。「美しい!」と観客の目をくぎ付け= Photo by Scott Rudd Associates
展示されたCanguRo(手前)。「美しい!」と観客の目をくぎ付け= Photo by Scott Rudd Associates

「イノベーションって何?」


古田所長 福島復興シンポで語る

 東日本大震災と福島第一原発事故で壊滅的な被害を受けた福島県浜通り地域の産業回復を進める国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」のためのシンポジウムが2月3日、いわき市で開かれ、fuRoの古田貴之所長がロボットをテーマにしたパネルディスカッションに出演。「技術のイノベーションとは何か」を熱く語った。
 2011年3月11日の東日本大震災から間もなく8年。福島イノベーション・コースト構想では「廃炉」「エネルギー」「ロボット」「農林水産」が主要な4本柱となっている。
 とりわけロボット分野では、世界でも類を見ない陸海空のロボットの一大研究拠点「福島ロボットテストフィールド」を南相馬市に建設する計画が進んでいる。
 「ふくしまロボット未来予想図」と題したこの日のパネルディスカッションでは、ロボット技術の進展によってもたらされる産業振興や生活の変化について、4人の専門家が話し合った。
 古田所長は災害対応型移動ロボット「櫻壱號」「櫻弐號」、4つのモードに変形する「ILY−A」、乗り物とロボットの完全な融合を目指す「CanguRo」など、fuRoがこれまでに開発した数々のロボットを紹介しながら、その間の技術のイノベーションを具体的に説明。
 さらに昨年11月に発表した、fuRoとパナソニックの共同開発による次世代ロボット掃除機のコンセプトモデルを紹介して、「イノベーションとは今まで世の中になかったモノを生みだすこと。重要なのは、それが製品となり、消費者の手に届いて、世の中が変わっていくことです。皆さんにとっては『フクシマ』が世界から注目されている今こそチャンス。『こんなフクシマをつくりたい』と技術者に逆提案してください」と、会場に向かって呼びかけていた。

 この日、fuRoは会場に「櫻壱號」「櫻弐號」と天井裏点検ロボット「CHERI」を搬入、西村健志研究員によるロボットデモに多くの来場者が関心を寄せていた。

会場に語りかける古田所長 災害対応ロボットの櫻壱號、弐號を紹介
会場に語りかける古田所長 災害対応ロボットの櫻壱號、弐號を紹介

岐阜に巨大隕石衝突の証拠


佐藤上席研究員 科学未来館で語る
着目した金属元素について説明する佐藤上席研究員(右端)
着目した金属元素について説明する佐藤上席研究員(右端)
 岐阜県坂祝町の木曽川流域の地層から、2億1500万年前の巨大隕石衝突の証拠であるイジェクタ層を発見した次世代海洋資源研究センター(ORCeNG)の佐藤峰南上席研究員が1月13日、東京都江東区の日本科学未来館でのトークセッションに出演。集まった親子連れなどに発見の経緯など研究の成果を紹介した。
 2013年に佐藤上席研究員が発見したイジェクタ層は世界で3例目。恐竜の先祖である「恐竜形類」が繁栄していた三畳紀後期、推定直径が最大8キロもある隕石が地球に衝突した際に巻き上げられた物質が堆積してできた地層だ。衝突の規模は6600万年前に恐竜を絶滅させた隕石(直径10〜15キロ)衝突に次ぐと考えられている。
 この隕石衝突で巻き上げられた物質は、地球上の大陸の形成過程から考えて、日本列島に堆積する地層のどこかに必ず残っているはずだと考えた佐藤上席研究員らは、三畳紀後期の地層が何層にも横倒しになって地表に現れている木曽川流域に着目。
 川岸に重なっている地層から1層ごとにサンプルを取り、イジェクタ層に特有の2種類の粒子が含まれていないか、顕微鏡で観察するという気の遠くなるような作業を2年間に渡って続けた。その結果、目指す2種類の粒子が集まっている粘土層を発見。
 そこから採集した粒子を含む粘土層を化学分析した結果、隕石衝突の地球化学的マーカーとなる元素が他の地層の100倍も濃集していることが分かり、その地層がイジェクタ層であることを確認したという。
 それでは、2億1500万年前の巨大隕石衝突ではどんな生物の絶滅が起きたのだろうか。
 佐藤上席研究員の一連の研究で、この隕石衝突の前後でプランクトンなど海洋の生態系に大きな変化が起きた証拠が明らかにされつつある。
 46億年の地球の歴史では、恐竜絶滅まで5回の生物大量絶滅が起きたことが分かっている。この巨大隕石の衝突は、そのうち4番目の三畳紀末の大絶滅の引き金になったのではないかと佐藤上席研究員は考え、「さらに研究を深めていきます。皆さんも身の回りにある石が“もしかしたら隕石では?”という目で見て、地質学という分野に興味を持ってもらえたら、と思います」と話した。