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2019.1.15

御宿で考えるまちづくり


「こども工務店」3回目
テーブル作り
テーブル作り
 本学の学生たちが地元の子どもたちと大工をしながら地域づくりを考える「第3回御宿こども工務店」(本学、御宿町商工会青年部、町役場共催)が昨年11月11日、御宿町の廃校のグラウンドで開催された。
 鎌田元弘・都市環境工学科教授と同講師・建築家の一色ヒロタカ氏、同学科と建築都市環境学科、生命科学科の3学科学生20人、町内の子ども40人と父母のほか、商工会青年部加盟の建築・土木業者らが参加。移動テーブルを一緒に作りながら、御宿のまちづくりについて提案をまとめた。
 催しは一昨年から始まり3回目。今回は新学科カリキュラムの目玉のひとつ――地域貢献を通じて社会に役立つ実学を体験する教養特別科目「ソーシャルアクティブラーニング」(鎌田教授担当)の科目として開かれ、1泊2日で寝食を共にしながら学科の目指すところを体験した。
 昨年・一昨年はベンチ、椅子、机、縁台、ジャングルジムなど多用途に使えるマルチブロック(小さなユニット)を製作。今年はそれと一緒に使える移動テーブルが欲しいとの町民のリクエストに応じて計画された。
 1日目は学生たちが、地元工務店のプロたちに大工道具の使い方を習いながらテーブルを8割方組み立てた。2日目は学生たちが、早朝から集まってきた子どもたちに道具の使い方を指導。子どもたちをサポートする形でテーブルを完成させた。合間には建設重機の操縦体験、一輪車での砂運び競争も交え、子どもたちを喜ばせた。できたテーブル裏面には子どもたちがサインを書き込み、みんなで塗装した。
 子どもたちの間で戸惑っていた学生も、プログラムが終了する頃には指導する立派なお兄さんに。父母たちにも喜ばれ、ものづくりを通して地域貢献ができたと達成感に浸った。
 その後、学生たちは御宿町職員の案内で町内各地を巡り、地域の課題や資源の説明を受けて、各学科の特性別に、御宿のまちづくりへアイデアをまとめた。
 マルチブロックとテーブルは、御宿町内の公共施設に設置されるほか、各種イベントに貸し出され活用される予定。
参加者たち
参加者たち

地域創成へ体験講座


南房総市でシラハマLab.
 ロボット操縦や科学技術を体験できる「千葉工業大学シラハマLab.出張オープンラボ 集まれ未来の技術者!わくわくロボット体験講座」が12月1日、南房総の小中高生を対象に、南房総市白浜の白浜フローラルホールで開かれた=写真下
 同市からの委託事業で、白浜地区の空き公共施設のさまざまな活用を考えてきた「シラハマLab.」=鎌田元弘・建築都市環境学科教授、大嶋辰夫・デザイン科学科准教授、中川泰宏・情報ネットワーク学科助教の3研究室=と、南房総市、同じく空き公共施設の活用を模索する(株)R・projectが共催。
 今回は文化会所属の航空工学研究会・精密ロボット工学研究会・総合工学研究会・ソフトメディア研究会・電子工学研究会の計22人が協力して体験講座を開いた。
 用意した講座は▽人型ロボット操縦▽ドローン操縦▽ゲームプログラミング▽ミニ四駆の作成・改造▽TAMIYA競技用サーキット走行▽南房総市観光協会と連携した観光用レンタルカート(BOSO KART)のVR乗車――の5つ。併せて大学紹介の展示も行った。
 小中学生は約250人が来場。VR乗車やミニ四駆作成、ロボットやドローンの操縦体験を楽しんでいた。
 参加した保護者からは「目で見て体験できる講座は、地方で貴重」など今後の本学の取り組みに期待する意見が寄せられた。参加学生の1人は「今後も地方の課題解決と学生の活躍の場として(地域の新たな価値の)創出に取り組んでいきたい」と語った。

活躍する校友


ビッグデータをITに
電波通信の夢、一筋
東北大サイバーサイエンスセンター教授
菅沼 拓夫(すがぬま たくお)さん(52歳)
(平成9年、情報工学専攻博士課程修了)
菅沼 拓夫さん
「まず何に関心を持っているのかじっくり聞くことから」と菅沼さん
 子どものころから通信一筋――“電波少年”だった菅沼拓夫さんの印象は、そんな言葉がぴったりだ。情報やコミュニケーションを通し、人間性豊かな社会をいかに築くか。東北大片平キャンパス(仙台市青葉区)にある、まだ真新しい電気通信研究所本館の研究室でうかがった。
 研究所本館は東日本大震災(2011年)の3年後に新築された。材料、デバイス、通信方式、ネットワーク、人間情報、ソフトウェアなどハードからソフトまで多彩な研究者を擁する。
 その1階資料室。八木秀次氏(テレビ・無線電波用アンテナの発明)▽岡部金治郎氏(電子レンジのマグネトロン発明)▽西沢潤一氏(光通信基盤創造)ら7人の業績が展示されている。戦前から現代にかけ、研究所が輩出した大家たちだ。
 「八木・宇田アンテナが象徴ですが、片平キャンパスはアマチュア無線マニアの聖地なんです。あこがれのキャンパスで研究でき、本当にうれしい」
 と、菅沼さん。研究所の関連部局であるサイバーサイエンスセンターの情報通信基盤研究部を預かり、教育とともに、最新の発想で情報技術の実用研究をしている。
 長野県上田市で生まれ育った。第4級アマチュア無線技士の資格を取ったのは小学6年生のとき。「CQCQCQこちらは〜」。自営業の父に装置を買ってもらい、音楽教室へ通うかたわら、英会話も勉強し、見えない電波を介して見知らぬ人と結ばれる楽しさを覚えた。「コミュニケーションに興味を抱いたのもこのころ」という。
 そのまますくすく成長し、長野県立高から本学へ。情報工学科の第1期生だ。学部時代は東京・新小岩のアパートに下宿した。津田沼キャンパスと電気街・秋葉原のほぼ中間だから。入れ込みようは半端ではない。
 「講義より電気研究部(サークル)に入りびたりでしたね」
 芝園キャンパス(現・新習志野キャンパス)の茜浜運動施設にはアンテナに絶好の鉄塔があり、部室に泊まり込み、アルゼンチンなど地球の反対側とも声を交わした。制限時間内で交信国数・局数を競う国際コンテストが結構ある。「3度、ワールドチャンピオンになった」。当時10数人いた部員が声を枯らしてコールし続けた成果だ。それにしても、すごい。
 研究者を志し、インターネットに関する英文記事の翻訳バイトなどをしながら、修士さらに博士課程へ。「泊まり込み先が部室から研究室に変わりました」。研究主題はネットワーク上のコミュニケーション。指導教員が東北大OBだった縁もあり、修了と同時に助手として現研究所のコミュニケーションネットワーク研究室へ属したのが22年前である。
 准教授をへて2010年教授に。東北大の電気・情報系において、私学出身者の就任は珍しいといわれる。「上田で過ごした期間より仙台暮らしの方が長くなりました」とにっこり。
 研究部には准教授や外国籍の研究員のほか、中国や南米からの留学生を含め20人の院生・学部生がいる。この春には本学から学部生をひとり、院生として迎える予定だ。社会で実際に役立つサービスとは何かを考え、人の動きや自然環境などさまざまなビッグデータをITにつなげ、実用化を目指す。例えば――。
 市民マラソンなど多人数参加型屋外イベントでのヘルスケア▽都市部高解像度ヒートマップによる熱中症予防▽災害時の重要情報相互保存ネットワークシステム▽子どもやお年寄りの見守りセンサー▽映像からの忘れ物検出システム――など応用範囲は広い。こうした機能を使ったスマートシティの実証実験を仙台やヨーロッパの都市で行っているという。
 「テーマを絞り切れぬまま研究室に入る学生もいるので、まず何に関心を持っているのかじっくり聞くことから始めます。私自身、何事もマイペースで、学生にはめったに怒りません」
 おっとりした性分だが、かなりの凝り性と自己分析する。クラシック音楽を聴いたり、2人のお嬢さん(小学生)と一緒にピアノを弾いて気分転換を図る、よきパパでもある。