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2018.4.15

櫻井さん 最優秀賞


卒業設計 防災地区ターザン計画を提案
防災地区ターザン計画
防災地区ターザン計画
 建築学生の卒業設計作を公開審査する場として国内最大級の第16回せんだいデザインリーグ卒業設計日本一決定戦(仙台建築都市学生会議主催)は3月4〜11日、仙台市のせんだいメディアテークで開かれ、櫻井友美さん(建築都市環境学科4年、遠藤政樹研究室=写真)の『防災地区ターザン計画―吉阪隆正にみる「スキ」のある建築の研究―』がファイナル(公開審査)進出10選に入った。
 「日本一」などの賞は逃したが、同じく全国の学生作品を広く審査する福岡デザインレビュー2018(日本建築家協会九州支部デザインレビュー実行委主催=3月10、11日、福岡市の福岡大60周年記念館ヘリオスホールで開催)では最優秀賞に輝いた。
 “ターザン計画”は、合理的な現代の建築空間に、感性の「スキ(隙)」を生み出したいと願うもの。非合理的な関係でいっぱいの人間には効率優先は息が詰まらないか。ル・コルビュジエの弟子で日本にモダニズムを紹介した吉阪隆正(1917〜80年)の建築に教えられたという。
 作品は東京都谷中を敷地に選んだ。谷中には谷や坂があり、人や猫がおり、ベランダや花壇に「スキ」が残る。しかし近年、防災計画で消防車用の道路拡幅や家の建て替えが求められ「スキ」が失われかねない。
 櫻井さんは防災計画と「スキ」の両立を計画。現地で谷中防災センターを利用するおばあちゃんや子どもたちを観察し、ヒアリングを行った結果、家族の会話が減ったり、公園に遊具がないなどの不満が浮かんだ。
 そこで、防災センターを充実させる一方、火災・倒壊危険度が高い地域を3つに区分けし、それぞれの一角に一時避難所となる防災タワーを計画。災害時に、周辺住民はタワーに備蓄したプーリー(ターザンを使用する器具)を持ち出し、タワーからターザンロープで谷中防災センターまで倒壊した建物の上を避難する。タワーは各種仕事場を兼ね、おばあちゃんと家族が出会えるように階段をリビングで囲んだ。子どもたちは防災センター内に計画した児童館へターザンを乗りにやってくる。街では年数回のターザンを使った防災訓練が恒例になる……。
 福岡デザインレビューでは、ターザンというキャッチーなワードとは異なる、防災にも踏み込んだ提案があることを評価してくれたという。
 櫻井さんは「大学外で知らない人たちに伝えることが一番難しい課題でしたが、作品への思いを素直に言うことで理解していただけました。ものをつくる仕事は感動してもらえることが大切で、私の作品が少しでも人の心を動かしたと思うとうれしいです」と語った。
櫻井さん 防災地区ターザン計画(プレゼン資料から)
櫻井さん 防災地区ターザン計画(プレゼン資料から)

小木さん 学生論文賞


信号処理の国際会議で発表
 信号処理学会主催の「非線形回路、通信および信号処理に関するRISP国際ワークショップ(NCSP2018)」が3月4〜7日、米ハワイ州ホノルルのヒルトン・ワイキキ・ビーチホテルで開かれ、小木雄介さん(電気電子情報工学科4年、魏秀欽研究室=写真)がStudent Paper Award(学生論文賞)を受賞した。
 発表論文は「Analysis procedure of further miniaturized class-E2 dc/dc converter(超小型化E2級dc‐dcコンバーターの分析手法)」。
 GaNやSiCなど次世代素子の登場で、E2級dc‐dcコンバーター(直流電圧を別の直流電圧に変換する機器)が更に小型化されると期待されている。一方で回路の超小型化を妨げるのがインダクタ(電気を磁気の形で蓄える部品)。そのインダクタに発生する磁束と流れる電流の比の減少により高調波成分が増加してしまう。
 この問題について小木さんは、高調波成分を考慮したE2級dc‐dcコンバーターの設計手法を提案。独自の高調波解析技術と数値計算技術を融合させて、回路動作と素子の関係性を数式で表した。
 高調波成分を考慮することで式が複雑になり、丁寧に確認しながら解析、シミュレーション、回路実験を行った。
 この解析手法の提案は有効性が高く、発表もポイントをしっかり抑えていたと評価された。
 小木さんは「受賞できるとは思っていませんでした。とてもうれしく頑張ってきてよかったと思いました。大学院で更に研究を進めたい」と感想を述べた。

最優秀賞に牧野さん


PM学会春季研究発表 優秀賞に加瀬さん五十嵐さん
 プロジェクトマネジメント(PM)学会の2018年度春季研究発表大会は3月8、9日、東京都文京区の東洋大・白山キャンパスで開かれ、本学の牧野友祐さん(マネジメント工学専攻博士課程前期1年、加藤和彦研究室)が学生研究発表賞の最優秀賞を受賞。加瀬匠汰朗さん(PM学科4年、同)、五十嵐匠さん(PM学科4年、下田篤研究室)の2人が優秀賞を受賞した受賞者のテーマと感想は次の通り。
牧野 友祐さん

「情報システム開発プロジェクトにおける要求の依存関係と獲得時期の関係性」

牧野さん
牧野さん
 情報システムの開発プロジェクトでは追加要求や仕様の変更などで、下流工程にならないと獲得が困難な要求が存在する。そのため要求獲得を戦略的に進める必要がある。それには、要求の特徴を捉えることが重要。牧野さんは特に要求間の依存関係に着目。その依存関係を▽必須依存▽作業依存▽サブセット依存▽網羅依存▽価値依存――に分類し、要求獲得時期との関係を詳細に調査。依存関係に基づく要求獲得推移のモデル化に成功した。
 分類作業や、データの正規化手順を決めることに苦労したという。
 「名誉ある賞を頂き光栄です。解決が難しい問題について、今後も成果が出せるよう精進していきたいと思います」
加瀬匠汰朗さん

「産官学連携プロジェクトにおける複数ステークホルダ間のジレンマの解消」

加瀬さん
加瀬さん
 産官学連携プロジェクトでは各組織の目的や価値観が違うため、プロジェクト運営や合意形成に支障が出る場合がある。
 加瀬さんは、このジレンマの解消を目的に、加藤研究室が関わる南房総市でのプロジェクトについて、現地に何度も足を運び、各ステークホルダ(事業の利害関係者)に直接インタビュー。他学科の教授や学生にもアドバイスをもらい調査を進めた。
 インタビュー情報の分析の結果、連携可能な部分やステークホルダ間での優先度を踏まえ、それまで発見できなかったタスクを抽出することに成功。これらの情報が産官学連携プロジェクトへの有益な参画推進に寄与するものとなった。
 「大変光栄です。指導教員の加藤先生をはじめ、研究をサポートしてくださった皆さまに深く感謝します」
五十嵐 匠さん

「人間関係に基づく働きやすさを重視したチーム編成方法の提案」

五十嵐さん
五十嵐さん
 ファミリーレストランなどのサービス職場では、職場のコミュニケーションが活発なほど働きやすく生産性も高まりそうだ。しかし実際はアルバイトが多く入れ替わりも激しいため、活力あるチームの編成は難しい。
 五十嵐さんは自身の経験から、私的な人間関係が強いチームほど働きやすい、と考え、インフォーマルネットワーク=職位や職場を超えた私的な人間関係=に着目。広い人間関係が存在するほど値が大きくなるネットワーク分析指標を考案。指標の大きい順にチーム編成する方法を提案した。
 元アルバイト先のファミリーレストランで試し、その結果を従業員にインタビュー。指標と働きやすさに相関関係が認められ、有効性が確認できた。
 「3年時から継続してきた研究を評価していただき、うれしく思います。最後まで指導していただいた下田先生に感謝しています」