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2018.1.15

火星隕石 放出メカニズムを解明


ところてん式加速で惑星間を移動
 火星から地球に飛来した“火星隕石”について、惑星探査研究センター(PERC)の黒澤耕介研究員、岡本尚也研究員と玄田英典・東京工業大地球生命研究所特任准教授は、天体衝突で高衝撃圧を経験した火星深部の岩石が、浅部の低衝撃圧しか受けていない岩石を心太式に押し出し、火星隕石が放出されることを発見した。これは天体間の物質輸送が従来の見方よりも容易に起こることを予想させる。PERCが12月5日、公表した。
 火星隕石は分析によって、天体衝突時に約30〜50万気圧の衝撃圧を経験したことが分かっている。しかし、衝撃物理学では、比較的低い衝撃圧(30〜50万気圧)なのに、なぜ火星重力圏の脱出速度以上に加速(秒速5キロメートルされたのか、説明できなかった。
 黒澤研究員らは、異なる2種類の数値衝突計算コードを用いて、火星の脱出速度以上に加速される条件を探った。
 天体衝突の直下点近くの物質の流れを、過去の研究よりも10倍以上高い空間解像度で解析。その結果、高衝撃圧を経験した深部の岩石が、浅部の低衝撃圧力しか受けていない岩石を心太式に押し出すメカニズムを発見=上図を参照。岩石の分析結果と衝撃物理学の矛盾が解消された。
 この発見は、比較的浅部の岩石が、考えられてきたよりも容易に惑星間を移動可能なことを予想させるもの。低衝撃圧下の岩石中には微生物が生き残る可能性があるため、地球外で発生した生命が地球に飛来した可能性(パンスペルミア仮説)にも新たな展開をもたらすと考えられる。
 今後は、PERCに設置されている2段式水素ガス銃で衝突実験を行い、放出メカニズムをさらに解明していく。
 この成果は、欧州科学誌「イカロス(Icarus)」電子版と2月1日発行号に掲載される。

ロボプロ全国大会開く


18歳以下 3部門で熱戦
 未来ロボット技術研究センター(fuRo)の古田貴之所長を審査委員長として、18歳以下の中・高校生などが卓越したロボット技術を競う「第1回ロボプロ全国大会」が12月2日、東京スカイツリータウンキャンパスを会場に開かれた。
 小・中学生のためのロボット教室を全国的に展開し、約1万8000人の受講生を抱えるヒューマンアカデミー(株)=本社・東京都新宿区=が主催。この教室には未就学児から始まって生徒の学年に合わせて5つのコースが設けられている。
 この中で、小学校高学年から中学生を対象とする最上級のロボティクスプロフェッサーコースの教材やカリキュラムなどは、古田所長が監修・アドバイザーを務め、fuRoとヒューマンアカデミーが共同開発した。
 2013年に始まった同コースの受講生は現在約600人。今回のロボプロ全国大会は同コースの受講生や修了生を対象に、地方予選を勝ち抜いてきた15人が、①ライントレース(8人)②フリー走行(4人)③創作ロボット(3人)の3部門で熱戦を繰り広げた。
 出場作品はどれも高レベルの作品ばかり。ライントレース部門は中学3年生の作品、フリー走行部門は13歳の男子=写真前列左=が作った「種まきロボット」が優勝。
 なかでも圧巻は、創作ロボットコースに優勝した17歳男子の「ジャンプするカエルロボット」。油圧を使わずに12個のサーボモーターを同時に動かして、カエルを屈伸姿勢からジャンプさせるシステムに、古田所長も舌を巻いていた。奥村悠fuRo上席研究員も審査員として参加した。

世界初 気球実験専用「ゲル」


PERCがモンゴルで製作
 秋山演亮主席研究員をプロジェクトリーダーとする惑星探査研究センター(PERC)のチームは昨年末、モンゴル遊牧民の伝統的な移動式住居「ゲル」を、成層圏での宇宙塵採集のための気球の放球基地とする世界初の実験を行い、成功した=写真
 PERCは2016年6月からモンゴル工業技術大(IET)と共同で、同国の平原で放球実験を続けてきた。この実験はヘリウムガスを詰めたゴム製の気球に、宇宙塵採集装置や送信機などを取り付けて成層圏まで上昇させ、気球が気圧低下によって膨張・破裂した後、パラシュートで地上に落下した装置を回収する。
 広大な平原で装置を確実に回収するためには、狙った位置にできるだけ正確にパラシュートを落下させることが望ましい。そのためには放球前に気球の浮力を調整し、風向・風速などに合わせて放球位置を移動するなどの操作が必要だ。
 平原を転々と移動するために組み立て・解体が容易なうえ、円形で内部に仕切りがないゲルの室内は、無風下での作業が望ましい気球へのガス充填に最適というわけだ。
 モンゴル側のスタッフの手で製作された実験用ゲルは、モンゴルの人たちが住居として使っているもののざっと2倍の大きさ。頂点部には直径約5bの天窓が開いており、気球を直接放球できる。
 PERCのチームはIETのスタッフと共同で11月29日〜12月6日、このゲルから3回の放球実験を行い、これまでの実験回数は合計15回を数えた。
 これによって「宇宙塵採集装置などを成層圏まで運ぶ“輸送機”としての全体システムはほぼ完成。運用技術のIETへの移転も終了し、放球はIET側に任せる態勢が整った」(秋山主席研究員)。PERCは今後、本来の目的である宇宙塵の採集・解析による「宇宙の成り立ちの解明」という科学実験に本腰を入れて取り組む。

「からあげクン」成層圏浮遊動画


PERC気球で実現
 コンビニ「ローソン」の人気商品「からあげクン」のキャラクターぬいぐるみが、PERCの気球で成層圏へ運ばれる動画がネットにアップされ=写真=子どもたちへの「千葉工業大」のアピールに一役買っている。
 昨年12月5日に発売された「からあげクン ブラックホール味(ブラックペッパー)」のPRのためのこの動画の制作では、宇宙塵採集のための15回の放球実験全てで装置の陸上回収に成功しているPERCのノウハウが活用された。
 昨年9月にモンゴルの首都ウランバートル郊外で行われた実験で、気球に搭載された「からあげクン」のキャラぬいぐるみは、成層圏に到達した後、正確に落下目標地点に着陸。PERCのもつ気球飛行シミュレーションのノウハウと通信機器の信頼性を証明する結果にもなった。
 動画では「からあげクン」が空を昇っていく場面や、放球に携わったPERCとモンゴル技術工業大学のスタッフらが映され、「撮影協力 千葉工業大学惑星探査研究センター」と紹介されている。

よさこい風神 特別賞


第18回東京よさこいで力強い演舞
 本学体育会よさこいソーラン風神部(武田光太主将=建築都市環境学科2年、部員126人=写真)が、「第18回東京よさこい」(昨年10月7、8日、東京・池袋駅西口周辺で=ふくろ祭り協議会主催、豊島区・東京芸術劇場共催、東京都など後援)で力強い演舞を見せ、特別賞(那珂川町長賞)を受賞した。
 池袋駅周辺を盛り上げる「ふくろ祭り」は今回が50周年。大賞(東京都知事賞)を目指し全国から「よさこい」110チームが参加した。
 本学風神チームは、夢にひたむきに生きる海賊をテーマにした曲目「帆舞れ」を披露。チーム全員が若さあふれる思い切りのよい体のキレを見せ「力強い演舞で観客を魅了した」と審査員たちに称賛された。
  風神チームは第15回(平成26年)では豊島未来賞(立教賞)、第17回(同28年)でも企業賞(三菱地所株式会社賞)を受賞している。
柏市立五小によさこい伝授
 よさこいソーラン風神部は、柏市立第五小学校の依頼で昨年8月25日と30日、同小教員5人を新習志野キャンパスに招き、演舞を指導した。
 同小では「危険」と中止が相次いでいる運動会の組体操に代わる競技はないか?楽しく、見た目も魅力的な……とウェブで検索。本学よさこいソーラン風神部の演舞が目に留まり、講師を依頼してきた。
 部員たちは、小学生も簡単に踊れ、見栄えがして、楽しい振り付けにしたいと試行錯誤し、振り付けを提案。ぎこちない動きの先生方も徐々に振り付けをマスターした。
 2週間後の運動会当日、応援に駆けつけた学生たちは、児童らの演舞に「短期間での成長がすごい!笑顔で一生懸命踊っているのが可愛いかった。アレンジも加えてあってよかった」と喜んだ。