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2014.4.15

音響学会で成果
院生3人


石井さん粟屋奨励賞
土屋さん優秀発表賞
森さんは2賞とも
左から佐藤教授、土屋さん、森さん、石井さん、飯田教授
左から佐藤教授、土屋さん、森さん、石井さん、飯田教授
 「音」に関する全国の研究者・技術者が発表を持ち寄る日本音響学会の2013年秋季研究発表会(昨年9月25〜27日、愛知県豊橋市の豊橋技術科学大学で開催)で、森淳一さん(工学専攻博士後期3年=受賞当時・佐藤史明研究室)が第35回粟屋潔学術奨励賞と第8回学生優秀発表賞の両賞▽石井要次さん(同=受賞当時・飯田一博研究室)が粟屋潔学術奨励賞▽土屋宏樹さん(電気電子情報工学専攻修士2年=受賞当時・飯田研究室)が学生優秀発表賞を、それぞれ受賞。3月11日、東京都千代田区の日本大学理工学部(駿河台キャンパス)で行われた2014年春季研究発表会の会場で表彰された。粟屋潔学術奨励賞は粟屋音響学会元会長の遺族の寄付で創設された賞で新進の研究・技術者に与えられる。受賞者5人のうち2人が本学から選ばれた。学生優秀発表賞は今回、優秀な発表をした学生20人に贈られた。

■森 淳一さん

 「屋外拡声システムの音響設計のための可聴型シミュレーションシステムの試み」

 災害の発生や避難誘導を伝えるための屋外拡声システム(防災行政無線)は重要な情報伝達手段だが、複数のスピーカーからの音や近隣の建物からの反射音などが重なり(マルチパスエコー)、アナウンスが聞きとりにくい場合がある。これを改善するための音響設計では、スピーカーからの音響伝搬をコンピューターで予測し、その音を音の3次元情報も含めて実験室に再現する手法を用いることが望ましい。
 森さんらは、音響伝搬計算法の中でも最も単純な幾何音響シミュレーション(虚像法)と、比較的簡便な6チャンネル収音・再生手法を併用した新たな可聴型シミュレーションシステムを考案し、システムの有効性を検討した。検討では、現場録音したアナウンスと、考案したシステムで合成したアナウンスの比較実験を行い、現場録音は長期間にわたった。
 森さんは「名誉ある賞を2つもいただき恐縮しています。先生や先輩、後輩たちにはお世話になりました。家族も研究しやすい環境を、と協力してくれました。選奨は私が代表になりましたが、皆さんと共にもらった賞と思っています」と語った。

■石井 要次さん

 「受聴者の耳介形状に基づいた頭部伝達関数の個人化精度の検証」

 鼓膜に届く音は、頭や耳、肩までの形などの影響で変化する。この変化を表したのが頭部伝達関数(HRTF)だ。ヘッドホンなどにより、その人のHRTFを鼓膜上で再現することで、任意の方向に音像を制御できることが知られている。他人のHRTFを用いると誤った方向に音を知覚することがある。全受聴者のHRTF測定は、時間と無響室などの設備の点で現実的ではない。
 石井さんは、測定や試聴なしに、耳介形状から特徴的な周波数を推定し、受聴者に適合するHRTFをデータベースから選出し、個人化する手法を研究。防音室で測定した被験者のHRTFと、ベストマッチしたHRTFの特徴的周波数の比較を音像定位実験で繰り返した。その結果、差異はほぼ許せる程度で、この手法が有効であることを示した。
 これにより、各受聴者に適合するHRTFを簡単に提供でき、音響機器や設備で、音の3次元方向制御の普及が期待されるという。
 石井さんは「身に余る賞で、これからも誠実な姿勢で研究に励んでいきたい」と語った。

■土屋 宏樹さん

 「耳介の窪みの寸法と頭部伝達関数の第2ピークの関係―直方体の窪みで構成した耳介モデルを用いた検討―」

 頭部伝達関数(HRTF)で臨場感ある立体音響再生へ――土屋さんは推定HRTFの精度を上げるため、特に耳介の窪みの寸法と特徴的周波数の関係について調べた。
 ヒトの耳介形状は三角窩(か)、耳甲介舟、耳甲介腔(くう)などが組み合わさり複雑だ。土屋さんらは、直方体の窪みで耳介モデルを構成し、特徴的周波数を実耳と比較分析した。この結果、モデルでも実耳でも、窪みの長軸方向の寸法が特徴的周波数に大きく影響を与えるなどが推定されさらに研究している。
 受賞に土屋さんは「飯田教授、数値計算の協力と助言をいただいた独立行政法人情報通信研究機構の研究員の方々、全ての方に心から感謝します」と話した。

保坂君が優秀講演賞


放電加工でレンズアレイ型を創成
 千葉県加工技術研究会主催の第16回大学等委員による研究事例発表会が3月6日、本学津田沼キャンパス6号館で開かれ、保坂隆博君(機械サイエンス学科4年=受賞当時・瀧野日出雄研究室・写真)が「放電加工によるレンズアレイ型の精密創成に関する研究」を発表し優秀講演賞を受賞した。
 瀧野研究室では、表面を創成するための先進加工技術の確立を目指して研究に取り組んでいる。
 レンズアレイ型とは、多数のレンズ形状を等間隔に配列したプレス成形用の型。プレス成形されたレンズアレイは照度均一化などの機能を有することから、次世代デジタル機器の光学系に欠かせない。型は超硬合金や炭化ケイ素など高硬度材料で作り、現状ではレンズ形状を1個ごとに超精密研削・研磨して仕上げるので時間がかかる。
 保坂君らは、放電加工を用いれば、導電性材料なら硬度に関係なく加工できることから、レンズ面創成の高効率化を検討。新しい放電加工電極を提案し、その基礎特性を明らかにした。
 新電極でレンズアレイ型を試作し、その形状から種々のデータを得た。これまで放電加工によるレンズ面創成の例がなく、レンズに要求されるマイクロメートルオーダ以下の加工精度に影響する因子を究明するのが手探り状態だったという。
 学生発表15件中、保坂君は2位に選ばれた。
 保坂君は「瀧野教授のご指導のおかげ。受賞は私たちの研究が関心を持たれていることでもあると思います」と感想を寄せた。

立原さんゴールドポスター賞


 2013年材料技術研究協会討論会(昨年12月6、7日、千葉県野田市の東京理科大野田キャンパスで開催)で立原匠さん(生命環境科学専攻修士1年=受賞当時・橋本和明・柴田裕史研究室・写真)が「チタニア粒子の表面特性が繊維芽細胞に与える影響」をポスター発表し、最高賞であるゴールドポスター賞を受賞した。
 チタニア(二酸化チタン)は可視光を吸収せず(白く)、水に溶けない微粒子となるため、塗料や顔料、日焼け止めなどに広く使われてきた。一方で短波長は吸収し、紫外光で強い酸化力を発揮するので、環境汚染物質を光分解する光触媒材料としても知られる。
 しかし“水に溶けない微粒子・強い酸化力”の性質は、人の体に悪影響を及ぼすことがあり、近年、発がん性も注目されている。
 日焼け止め(サンスクリーン剤)ではシリカなどで被覆し酸化力を抑えて使われるが、皮膚への詳しい影響は調べられていなかった。
 立原さんらは、チタニア微粒子が皮膚細胞に及ぼす毒性の測定手法を確立しようと研究に着手。サンスクリーン剤使用中の皮膚を実験室で模擬的に再現し、これに紫外光を照射しようと考えた。
 まず、混合溶液を反応させたり、ガラス基板に流して焼成したり、を繰り返してチタニア/シリカ複合薄膜を調製。薄膜の出来具合をX線回折や走査型電子顕微鏡で検証した。現在、この薄膜に繊維芽様細胞を接着させようと検討している。
 ポスター発表には51件がエントリー。立原さんが特に優秀なポスターと認められた。立原さんは「学会参加は初めてで緊張しましたが、賞をいただき、とてもうれしい。これからも頑張ります」と語った。

植草君、若手優秀研究報告賞


 日本建築学会関東支部の2013年度第84回研究発表会(2月20、21日、東京・神田駿河台の日大理工学部で開催)で、植草俊介君(建築都市環境学科4年=受賞当時・石原沙織研究室・写真)が発表した「ウレタン塗膜防水層の施工可能限界粘度と膜厚 その1 施工具と技能水準が施工可能限界粘度に及ぼす影響」が、選考の結果、材料施工部門の若手優秀研究報告賞に決まり、3月24日表彰された。
 ウレタン塗膜防水は、液状のものをコンクリートなどの下地に塗り、それが硬化して防水層になる。元が液状であるため、施工具や材料の硬さ、施工技術、下地の状態などが、出来た防水層の品質に大きく影響する。
 植草君は確かな品質にするため、材料の粘度に着目。施工具と施工の技能水準を変数として、これ以上軟らかすぎ、または硬すぎては施工できない限界粘度を明らかにした。更に、限界粘度で施工した際の硬化後の品質を明らかにした。
 植草君は今春就職。学業最後の受賞について「大変光栄です。研究室の仲間、そして共に研究を行った高橋裕希君(同学科4年)と一緒に勝ち取った賞だと思っています」とコメントした。