2006.04.15

2面

平成18年度入学式
 
 
本岡誠一学長式辞
基礎学力と人間力錬磨に努力を
 

 新入生諸君、入学おめでとう。
 会場にご臨席のご父母の皆様、お子様のご入学おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。
 本日、入学式に臨んでおります新入生は、工学部が機械サイエンス学科、電気電子情報工学科、生命環境科学科、建築都市環境学科、デザイン科学科と今年度新設の未来ロボティクス学科が加わりまして六学科合計1697名です。また情報科学部が情報工学科、情報ネットワーク学科の二学科合計328名、社会システム科学部が経営情報科学科、プロジェクトマネジメント学科の二学科合計315名、三学部合計2340名です。また、大学院は、修士課程が、工学研究科、情報科学研究科、社会システム科学研究科合計210名です。博士課程は同じく三研究科合計12名で、学部大学院合わせて合計2562名です。
 
 私たち千葉工業大学の教職員一同、このように多勢の新入生を迎えて、入学式を挙行できますことを非常に嬉しく思いますと同時に、大変責任を感じ、身の引き締まる思いです。
 新入生諸君は、現在十八歳から二十二、三歳迄の年齢の人が大多数だと思いますが、青春と言われるこの年代は、人生を一年に例えるならば、春の季節に当たります。この季節は、長く厳しい冬が終わり、休眠から覚めた野山の生命が一斉に活動を始めます。昨日まで枯れ木のような哀れな姿の野山の木々も、萌黄色、薄緑、緑と朝夕でその姿が一変すると言っても過言ではないでしょう。また激しい生命の躍動を見せる訳です。人間の一生の中で最もエネルギーに溢れ、日一日変化成長するのが、青春のこの時期です。私は、諸君の年代の成長の激しさを、「学生が化ける」と表現しております。ここで、私が成長と言っているのは、社会の一員として、また、立派な技術者として一人立ちし、人間社会の発展に積極的、建設的に参加できる能力が身に付くという意味です。本日から始まった千葉工業大学での学生生活を通じて、諸君全員が立派に大化けして、技術者として社会に旅立つのが私たちの望みでもあります。
 ところで、季節や人間同様、社会も絶えず変化し続けております。そして、諸君が生まれて育ってきたこの十数年もまた、明治維新以後や、第二次大戦以後に劣らない位社会は大きく、急激に変化し続けております。現在続いている変化を一口で言いますと、これはグローバル化、あるいは国際化と言うことになります。実際には世界単一市場経済が実現し、諸君が愛用している携帯電話や自動車などを始め、生活用品に至るまで、世界中の国々で生産された商品で溢れるようになりました。
 IT革命や交通機関などの科学技術の発達によって、世界中の国々の政治経済や人的交流が密接になり、全てのことが同時進行するようになって来ました。去る三月二十一日、テレビ視聴率四十三%を超えるほど日本中を沸かせた、野球の国別対抗戦(WBC=ワールド・ベースボール・クラシック)で、日本対キューバの決勝戦がアメリカからリアルタイムの放送だったことなどもこの一例でしょう。現代社会は国内だけでなく、世界の国々相手の競争社会になって来たと同時に、相互依存関係が非常に強くなって来ていると言えるでしょう。また、二十一世紀は、知識基盤社会と言われておりますが、このことは従来の物中心の価値基準に対して知識、情報やサービスのウエートが増して来たということです。

わが子の入学を見守る父母たち

 
 このような社会に生きる我々は、従来の、学力に代表されるような測定可能な近代型能力よりも、コミュニケーション能力だとか、問題解決能力、創造性や意欲など一般に人間力と言われるポスト近代型能力がより重要になり、求められるようになって来ております。
 さて、このような話を致しますと新入生諸君は、少し不安を覚えられるかも知れません。しかし、皆さん、心配は要りません。千葉工業大学は、昭和十七年(1942年)に創立されました。当時は第二次世界大戦中です。昭和二十年の終戦の動乱期もありましたが、先輩諸兄の努力によって今日まで六十四年間発展し続け、この間六万余名の卒業生を世に送り出してきました。現在、数多くの卒業生は、国内はもとより全世界の産業界、工業界の第一線で活躍しております。現在は、三学部十学科と大学院で学生諸君を受け入れ、先進的な科学技術の教育・研究を日夜を問わず行っております。
 すでに諸君もご存知のことと思いますが、千葉工業大学では日本の大学では一番早く、人工衛星「観太くん」を打ち上げました。観太くんは今も800kmの上空、南北の極軌道を飛び続けておりまして、貴重なデータを送り続けております。また、「未来ロボット技術研究センター」(fuRo)を設立し、ロボットに関する先進的な研究を行っており、ロボットについて学びたいという多くの要望にお応えして、新たに未来ロボティクス学科を今年度新設いたしました。
 千葉工業大学の教育・研究の基本は、建学の精神にあります。本学の建学の精神は、知育、徳育、体育のバランスした素晴らしい理念が謳われております。現在私たちはこの建学の精神の中でも、特に「師弟同行」「自学自律」ということを強調致しております。このことは、学習・研究という先生と学生が一緒になって行うきめ細やかな協同作業を通じて、現代の激しく変化する科学技術に対応できるしっかりとした基礎学力を持った創造性豊かな人材の育成をするということです。したがって、我が千葉工業大学では、厳しい世の中の変化に対しても、十分対応できる基礎学力のしっかりした人材の育成を目指したプログラムを準備し、実践致しております。
 ただし、世の中がどのように進歩し、便利になっても「学問をする、学ぶ」という人間の行為に王道はありません。楽をして学べるようになった訳ではありません。パソコン、インターネット等学ぶための手段や道具、これは大変進歩し、便利になりましたが、我々が行う「学ぶ」という行為はおそらく人類が「知能」と言われる能力を持ち始めた時から不変です。物事に疑問を持ち、好奇心を抱いたとき、五感をフル稼働して情報を収集し、思考し、時には実験を行い、その真実に迫ろうとして、「学び」が始まるのです。試行錯誤や失敗の繰り返しの中から、新しい発見や発明があり、それらの長い間の蓄積が今日の社会の姿なのです。
 私たちは、日々報道される新しい技術や発明・発見に感動し、大いに興味を覚えます。しかし、このような先進的な研究に携わり、成果を挙げるためには、基礎学力がとても大切なのです。諸君が、やがてそれぞれの専門分野に進み、卒業研究や大学院で成果を挙げる為には、明日から始まる数学、物理、化学や語学などの基礎学力が非常に重要となります。
 新入生諸君の中には、高等学校での教育課程の多様化や入学試験の多様化のために、これらの基礎学力が不揃いになりがちな面があり、これらを取り除きスタートラインを合わせるために、本学ではリメディアル教育を用意しております。
 そこで諸君に話した変化の激しい現代に、諸君が満足のいく有意義な学生生活を送り「立派に化ける」ために必要なごく基本的な心掛けを一つだけ挙げれば、それは何事によらず、疑問があれば積極的に質問をするということです。
 「聞くは一時の恥、知らざるは一生の恥」という諺があります。恥というのは、かつて長い間わが国の文化の中では、重要な価値基準でしたが、最近はかなり変わってきたように思います。今流に言い換えますと「聞くはちょっとの勇気、知らざるは一生の損」とでもなりましょうか。諸君は、今から新しいことを学ぶ訳ですから、自ら学ぼうという姿勢がなければ周囲から遅れを取ることになります。限られた時間で所定の課程を修めるためには、各自の特性に合った、地道な努力が必要であり、基本になります。予習復習を通して、自分の理解の程度を知り、不明な点はどしどし質問するように心掛けていただきたいと思います。
 さて、ご父母の皆様、私ども、千葉工業大学の教職員一同は、皆様のご期待に応えられるよう、誠心誠意努力を惜しまないつもりでございます。しかし、教育は、学ぶ者と教える者の協同作業です。ご父母の皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。
 それでは最後に、新入生諸君が、学部、大学院のそれぞれの課程を通して、楽しく実り多い学生生活を送り、明日から、諸君の笑顔で、キャンパス中が一段と明るく活力に溢れるよう期待致しまして、式辞とさせていただきます。
 
デザイン科学科の新入生ガイダンス
 
 
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