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2021.5.15

解析アルゴリズム 信川准教授ら開発


瞳孔径からADHD推定へ
 脳・神経系の機能を計算機などで工学的に追究する情報工学科の信川創准教授=写真=と国立精神・神経医療研究センター、金沢大、福井大、魚津神経サナトリウム、昭和大など6機関の研究員・医師ら10人のチームは4月26日、注意欠如多動症(ADHD)の覚醒や注意機能を担う脳活動の異常を、瞳孔径の大きさに対する時間的な複雑さと左右瞳孔の対称性を解析し、リアルタイムに推定する技術を開発したと発表した。
 成果は4月19日、英電子版学術総合誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。
 ADHDは、不注意や多動・衝動性がみられる発達障害で、早期診断と適切な治療・支援が必要。しかし現在の診断は問診が主体で、今回の成果で客観的・定量的な診断が進むと期待される。
 人間の目は外界の光を瞳孔を絞ったり拡大することで強弱を調節して眼球内に取り込むが、近年、瞳孔径の変化がADHD関連の神経活動をも反映することが明らかになってきた。しかし瞳孔径は交感神経と副交感神経の二重支配を受けるなど複雑で、ADHDに特徴的なパターンの抽出は困難だった。
 今回、信川准教授らは健康な成人20人と、ADHDと診断されている成人16人(うち未治療者11人)の瞳孔径を測定。瞳孔径の時系列データの複雑性、左右瞳孔の対称性を非線形時系列解析法などで評価した。その結果、ADHD被験者の瞳孔径は健康者よりも大きく、特に未治療者では複雑性と対称性が低下することが分かった。
 これら特徴的な量を機械学習させることで精度を向上させ、ADHDの判定確率を出せる解析アルゴリズムの開発に成功した。
 覚醒や注意機能の異常は自閉症や統合失調症にもみられることから、信川准教授は、瞳孔径を複合的相補的に評価することで、これら他の精神疾患の診断にも寄与できると考えている。
 現在、この研究成果に基づいた診断支援システムを国立精神・神経医療研究センターなどと共同で特許出願しており、信川准教授らは社会実装に向けた研究・開発活動を加速させている。
▲不注意、多動性、衝動性――注意欠如多動症に特徴的に現れる3つの症状 ▲左右の瞳孔径の時系列的変化や対称性から特徴的なパターンを抽出
▲不注意、多動性、衝動性――注意欠如多動症に特徴的に現れる3つの症状 ▲左右の瞳孔径の時系列的変化や対称性から特徴的なパターンを抽出

塗膜防水研究の鈴木さん


建築仕上学会・修士論文賞も
 日本建築仕上学会が贈る2021年の修士論文賞に、鈴木実佳さん(建築都市環境学専攻修士2年=今春卒業、石原沙織研究室=写真)の「ウレタンゴム系塗膜防水層のトップコートの耐疲労性」が選ばれ、3月9日付で賞状が届いた。同論文の一部を日本建築学会関東支部で発表した際にも、優秀と認められて優秀研究報告集に掲載が決まっており(本紙4月15日号参照)、二重の栄誉となった。
 トップコート(表面仕上げ材)は経年劣化すると亀裂が発生し、下部のウレタン塗膜防水層にまで亀裂が伸展する現象が見られる。
 現状の疲労試験では、評価は防水材が破断するか否かだけにとどまる。そこで鈴木さんは、トップコートの硬さや厚さなどを変数とし、ウレタン塗膜防水層のトップコートの耐疲労性を明らかにするとともに、解析により、疲労破壊につながる応力状態も明らかにした。

警備の2氏に叙勲


 警察官や消防士、自衛官ら危険の伴う業務に長年携わった人に贈られる危険業務従事者叙勲の受章者が4月29日付で発表された。本学からは総務部警備室(津田沼)の布川正広警備員=写真右=と、仁井元修警備員=同左=が瑞宝双光章を受賞した。
 両氏ともに本学に勤務以来、学内環境の安全確保に務めている。

品澤さん優秀賞


ジルコニウム融体の表面張力で
 日本鉄鋼協会の2021年春季(第181回)講演大会・学生ポスターセッションは3月17〜19日、オンラインで開催され、品澤遼さん(先端材料工学専攻修士1年=受賞当時、小澤俊平研究室=写真)が発表した「ジルコニウム融体の表面張力に対する酸素の影響」が優秀賞を受賞した。3月26日付で賞状が届いた。
 品澤さんによると、ジルコニウムの表面張力は、福島第1原発のメルトダウン事故の処理と、今後の安全対策を図る数値シミュレーションで必要不可欠なデータ。
 金属性融体の表面張力を正確に測定するには、強力な表面活性元素である酸素を考慮する必要がある。特にジルコニウム融体は、酸素溶解量が非常に大きいので、雰囲気からの酸素溶存や酸素吸着の影響が小さくないと予想される。
 品澤さんは、酸素組成と雰囲気酸素分圧を同時に考慮して測定し、表面張力-温度-酸素の関係を初めて明らかにした。
 セッションでは国内26大学・高専から計63件のポスターがオンラインで発表された。品澤さんはポスターを分割した補助スライドなどを工夫し説明と議論を展開。受賞に「大変光栄に思います。コロナ禍の難しい状況でも丁寧にご指導いただいた小澤教授と栗林一彦先生(客員研究員)に深く感謝します」と語っていた。

令和4(2022)年度 千葉工業大学入学試験日程


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