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2020.5.15

令和2年度 新入生の皆さんへ
世界の未来は 皆さんの双肩に


小宮 一仁学長
 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。また、ご家族の皆様には心からお祝いを申し上げます。才気あふれ前途洋々たる新入生をお迎えできたことは千葉工業大学にとりましても大きな慶びであります。
 本来であれば4月1日の入学式において、直接お祝いを申し上げたいと思っていました。しかし、新型コロナウイルスが猛威を振るう状況に鑑み、未来のある新入生やご家族の皆様の健康と安全を第一に考え、誠に残念な決定でしたが、令和2年度の入学式を中止しました。また、皆さんにキャンパスで教員と直接顔を合わせて学んでいただくためにさまざまな方法を検討しましたが、現状では対面式の授業の実施は難しいと判断し、当面は、情報通信技術(ICT)や皆さん全員に貸与しているiPad等を活用した授業(オンライン授業)のみを開講することといたしました。例年とは異なった形のスタートとなりましたが、皆さんの入学を大学は心から祝福し、新たなステージでの活躍を大いに期待します。
 皆さんの中には学部生と大学院生がいらっしゃいますが、専門性を高め学問と研究を究めるために集まった大学院生の皆さんは、まさに英知の集団です。専門的な知識や語学力そして研究能力を更に高めることは勿論のこと、弛まず取り組む実行力やリーダーシップを身につけてください。学部生の皆さんは、専門科目の基礎となる数学・理科等の学力や語学力、国際社会を理解する力を徹底して高め、体育の授業では果敢にして実行力のある意志を培ってください。また、課外活動を通じて純粋かつ崇高な情操を養い、豊かなそして堅実な人格を陶冶してください。それぞれの学科の専門科目では、講義・演習・実験等を通して、先人が残してくれた多くの優れた知見・設計法の技術等を徹底的に修めてください。そして大学生活の集大成として、卒業論文、修士論文・博士論文を完成させ、その成果を学会で発表してください。
素養を蓄え 価値を形に
 ここで、私からは、千葉工業大学で新たな生活を始めた皆さんに、学びのためのヒントを贈りたいと思います。少しでも参考になれば幸いです。
 皆さんは、物心がついた頃からいろいろなことを考え、思い、意識して、今日を迎えています。皆さんが良いと考えること、悪いと考えること、美しいと感じること、素晴らしいと思うこと、人のためになると思うこと、感じ方は人それぞれであると思いますが、我々人間は五感でものを感じ取り、頭で物事を考えて生きています。しかし、皆さんが頭の中で考えていること、思っていることは、残念ながら形のあるものにしない限り、他人に理解してもらうことができません。
 人は、自分の頭の中にあるものを他人に伝えるためにさまざまな技術を持っています。科学者は、頭で考えた自然界の真理を、数式や文章を使って表現し他人に伝えます。芸術家は、頭に浮かんだ美を、絵画や音楽あるいは舞踊等にして他人に伝えます。そして技術者は、頭で考えた人のためになる価値を、製品にして他人に伝えます。いくら頭に浮かんだものが素晴らしいものであっても、それを形にすることができなければ他人には分かってもらえません。だからこそ、頭で考える力・発想する力と同じくらい、他人に伝える技術力・表現力が大切です。一方、人は頭の中にイメージできるものしか形にすることができません。どんなに高い技術力や表現力を持っていたとしても、頭の中に思い浮かばないものをつくることはできません。
 イメージは、その人が持っている知識を結びつけることによって構築されます。知識がたくさんあれば、結びつきの数が増えます。したがって、より多くのイメージをつくり出すためには、何よりも多くの知識を得ることが不可欠です。多くの知識を得るためには、読み、聞き、体験することを積み重ねなければなりません。理解力、判断力を養い、見聞き、体験したことを整理し、苦しくても努力を惜しまずそれらを記憶して、いつでも取り出せるようにしておかなければなりません。こうして、多くの知識が得られれば、知識から思考してたくさんのイメージを頭の中で形づくるといった、人間ならではの醍醐味を味わうことができるようになります。イメージの構築に必要な思考力を養うためには、仮説・検証、帰納・推論のトレーニングを行えばいいでしょう。
 実は皆さんは、小学校から学習してきた語学や算数・数学、理科や社会や芸術等の科目を通じて、多くの知識を得ると共に、理解力、判断力、表現力を身に付けて来たのです。最近皆さんが経験した入学試験も、それらの力を人に分かるような形にする舞台のひとつです。入学試験に合格するために、皆さんは、必要なことをたくさん憶える努力、憶えたことを頭の中で組み合わせて答えを構築する訓練、それを採点者にわかるように書いたり話したりして表現する練習を、時間をかけて行い力を付けて来ました。もし入学試験の本番で、これら3つのうちのひとつでも不十分であったら、皆さんは満足したと感じないでしょう。入学試験に合格した皆さんには、大学で学ぶために必要なレベルでは、これらの力が身についていると思います。これからは、卒業・修了までの間に、それらを実社会で生かせるレベルに高めてください。
限られた時間 充実の生活を
 皆さんも感じていると思いますが、今まさに、世界は大きなターニングポイントに差しかかっています。新型コロナウイルスによってもたらされた課題はますます深刻になっています。もはや特定の国だけで解決することが不可能なレベルに達しています。今こそ、国や人種や民族を問わず、地球上の全人類が一致団結してこの課題に立ち向かわなければなりません。
 世界が、この人類史上稀にみる困難を乗り越えた後には、大きな変革の時代が待っていると思います。ただ、それがどういう時代になるのかは、今は、誰にもわかりません。新型コロナウイルスの感染が終息するのはいつか、普通の生活に戻るのはいつか、経済はどうなるか、何が残って何が消えるのか。行動は、ひとりひとりが考えて決めなければなりません。人類が新たな時代を切り拓いていけるかどうかは、皆さんのような若い世代の双肩にかかっています。今は、本当に必要なものに集中することが大事です。限られた時間を無駄にせず、充実した大学生活を送ってください。千葉工業大学において、皆さんが、これからの変わりゆく時代に、全人類に幸福をもたらす形あるものを生み出すための力の礎を築かれることを心から願っています。

千葉工業大学

学長 小宮 一仁

夢あってこそ 生まれる新技術


瀬戸熊 修理事長
 新入生諸君、入学おめでとうございます。また、ご家族の皆様には心よりお喜びを申し上げます。
 新型コロナウイルスの世界的な蔓延により、皆さんと一緒に入学を祝うことができないことは残念でなりません。しかし、本学は、学生たちとそのご家族、教職員が固い絆で結ばれている大学です。学生生活を通じて、今後も皆さんと参集する機会があると存じますので、何卒ご理解ください。
 新入生諸君にまず言っておきたいのは、工業大学は、文系大学や高校、中学と大きく違うということです。工業大学は、それぞれの学部・学科で学んだ知識や技術が、将来の職業と直結します。それだけに、自らの将来像をいかに思い描きながら研究課題に取り組んでいくか、その心構えがとても大切になります。
 新型コロナウイルスによる混乱を通じて、医療だけでなく、あらゆる科学技術が、日本、そして世界を危機から救うバックボーンであることが再認識されました。日本は科学技術立国として幾多の苦難を乗り越えて、国際社会での地位を築き上げてきました。そして将来も科学技術立国であり続けなければ、国際社会の激流の中で生き残っていくことはできません。新入生諸君が、本学で「生きた科学技術」を学び、社会に貢献できる人材に育っていくことを切に願ってやみません。
先進技術で挑戦 最古の私立工大
 本学の前身である「興亜工業大学」は、1942年に東京・町田市に創立されました。旧制私立工業大学としては、藤原工業大学に次いで日本で二番目に古い創立でした。藤原工業大学は1944年に慶應義塾大学に寄付され、現在は慶應義塾大学理工学部になっているので、本学は、私立工業大学として日本で最も古い歴史と伝統を有すると言えるでしょう。
 興亜工業大学は終戦前後の混乱に翻弄されましたが、1946年に千葉工業大学に校名変更し、1950年に津田沼へ、その後旧陸軍鉄道第二連隊の跡地である現在の津田沼キャンパスに移転しました。この地で本学は教育・研究機関としての実績を重ね、現在では、5学部17学科、3研究科9専攻を有する、学生数約1万人規模の大学となりました。卒業生は9万人を超え、科学技術の分野を中心に各界で活躍しています。
 本学では、多種多様な研究活動が行われ、世界の注目を集めているものも少なくありません。
 2014年に種子島で打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」が、小惑星「リュウグウ」への着陸とサンプル採取を成功させたことはニュースでご存じと思います。この「はやぶさ2」のほぼ全ての搭載観測機器の開発・研究には、本学の惑星探査研究センターが携わっています。
 次に未来ロボット技術研究センターの先進的なロボット技術研究も官民の熱い眼差しを受けています。家電大手パナソニックと共同で設立した「パナソニック・千葉工業大学産学連携センター」では、次世代のロボティクス家電の製品化に乗り出しました。ここで生まれた高性能かつユニークな次世代ロボット掃除機「RULO(ルーロ)」が4月20日に発売され、好評を得ています。
 また、地球学研究センターと惑星探査研究センターの合同チームは、エジプト政府の許可を受けて、ツタンカーメン王の棺から発見された鉄剣の元素分布分析を行っています。製鉄技術を持たなかった古代エジプトに、何故鉄剣が存在していたのか、鉄器文明の起源に迫ることで、古代史の謎がまた一つ解き明かされようとしています。
 次世代海洋資源研究センターでは、東京大学や、国立研究開発法人産業技術総合研究所などとともに、深海底のマンガンノジュールを音波を使って探査する手法を世界で初めて確立し、南鳥島周辺に巨大なマンガンノジュールの密集地があることを突き止めました。日本の資源・エネルギーの将来にとって光明となる大きな成果だと言えます。
 このように科学技術の未来に向かって、常に挑戦し続ける本学の研究姿勢は世界で高い評価を受けています。その影響もあって、今年の入学試験の志願者総数は10万5023人と初めて10万人の大台を超え、志願者総数は全国6位と5年連続のベスト10入りを果たしました。また、倍率はおよそ53倍と他大学を凌駕しています。新入生諸君は、狭き門をくぐり抜けてきたことを誇りに思い、勉学に励んでいただきたいと思います。
受け継いできた 独創性の精神を
 本学の前身である興亜工業大学の創立には、日本を代表する教育学者である小原國芳先生(1887〜1977)が深く関わっています。小原先生は「全人教育を基にした創造教育」という新しい教育理念を掲げ、国家枢要を担う人材養成を行うための拠点づくりに心血を注いだ人物でした。小原先生が掲げた教育理念は、文部科学省が進める大学改革における「教育の質的保証」「次世代を担う人材育成」の先駆けだと言えるでしょう。
 本学は昨年9月、小原先生が創立した玉川大学と包括的連携協定を締結し、教育研究や人材交流を深めていくことになりました。本学がはぐくんできた科学技術分野での教育・研究のノウハウと、玉川大学の工学・文化・芸術系のノウハウが融合すれば、両大学の総合力は飛躍的に高まっていくと確信します。
 新入生諸君が利用する新習志野キャンパスの図書館には、小原先生が揮毫した「夢」という書が掲げてあります。ここでは「夕」の部分が一画多くなっています。これは「大きな夢を持ってほしい」「一つでも多くの夢を持ってほしい」という思いが込められているのです。
 一流の科学技術者にもっとも必要なのは「夢」です。夢があってこそ、真に社会に役立つ科学技術が生まれてくるからです。新入生諸君は、大きな夢を抱きつつ、ひたむきに研究・学術に勤しんでください。そして、本学が脈々と受け継いできた独創性、挑戦する精神を身につけてください。我々、教職員も全力でサポートしていく所存です。ご家族の皆様にはぜひ温かいご支援を賜りたいと思っております。新入生諸君の夢が、いずれ大きく花開くことを心より祈念し、私の祝辞と致します。

学校法人千葉工業大学

理事長 瀬戸熊 修