NEWS CIT ニュースシーアイティ

2020.5.15

和田研、打ち上げ成功


新型エンジン搭載ロケット
御宿町で発射準備をする宇宙輸送工学研のメンバーたち
御宿町で発射準備をする宇宙輸送工学研のメンバーたち
 ガス化した特殊なプラスチックに酸化剤の亜酸化窒素を直接注入して完全燃焼させ、高性能の推進力を得る新型ロケットエンジンを搭載した小型ロケットの打ち上げ実験に、機械電子創成工学科・和田豊准教授の宇宙輸送工学研究室が世界で初めて成功した。
小型軽量で安全 宇宙空間移動用
飛翔するガスハイブリッドロケット
飛翔するガスハイブリッドロケット
 
打ち上げロケットの各部
打ち上げロケットの各部
 このロケットエンジンは同研究室と日本油脂(株)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の共同研究で開発された。打ち上げは3月30日、千葉県御宿町の本学惑星探査研究センター(PERC)ロケット実験場で行われた。
 ダイレクト・インジェクション型ガスハイブリッドロケットと呼ばれるこのエンジンは、燃料に「それ自体が発熱しながら、分解してガスになるエネルギー」を持った「グリシジル・アジド・ポリマー」(GAP)を使っている。火薬を使わないため極めて安全な上に燃焼効率が高い。
 また、GAPガスの入った1次燃焼室に亜酸化窒素を直接注入する構造のため、2次燃焼室を必要とせず、小型・軽量化が可能だ。
 亜酸化窒素は液体酸素のように冷却する必要がなく、衛星に搭載する上で非常に扱いやすい。加えて亜酸化窒素の供給を停止することによって自動的に消炎でき、かつその後の再着火も可能という特徴も備えている。
 これらのさまざまな利点を持つこの新型ロケットエンジンは、小型人工衛星や小型惑星探査機の軌道高度の変更など、宇宙空間での移動のための推進系としての用途が想定されている。
 今回の打ち上げ実験の成功を足掛かりに、和田准教授らは新型ロケットエンジンの実用化に向けて、宇宙空間を模擬した環境下での燃焼実験や、さらなる小型・軽量化を目指した研究を進めていく計画だ。
 この新型エンジンの研究には、宇宙輸送工学研究室に所属する大学院生・学部4年生がそれぞれ修士論文、卒業論文の一環として取り組んでいる。また「機電創成発展実験実習」でロケットの機体製作に取り組む学部3年生と学生サークル「SPARK」のメンバーが機体製作に協力している。
地元漁協も協力
 打ち上げに際しては、御宿岩和田漁業協同組合から周辺漁協への事前周知活動に始まり、3月30日の打ち上げ当日は、警戒水域の監視や海上にパラシュートで落下したロケット機体の回収など多大な協力を得た。周辺漁協からも該当海域での実験実施への理解と、警戒区域への不進入などの協力があり、実現に至った。

農家の認証取得 後押し


森ゼミ アイデア賞
(左から)小川さん、稲村幸仁・千葉銀行副頭取、明角さん、裏巽さん
(左から)小川さん、稲村幸仁・千葉銀行副頭取、明角さん、裏巽さん
 千葉銀行主催の第8回「ちばぎん学生版ビジネスアイデアコンテスト」(2月20日に結果発表)で、知能メディア工学科・森信一郎ゼミの明角達哉さん、裏巽晴菜さん、小川暖斗さん=全員3年、グループ名メロンソーダ=が提案した「千葉県の農作物を海外へ」が、ビジネスアイデア賞(副賞10万円)を受賞した。
 提案は、農業生産工程管理の優れた取り組みに与えられる「GAP認証」の取得を後押しするビジネス。クラウド上に認証取得システムを構築し、農家が認証を得やすくする。
 農作物の安全性を世界的に保証するにはグローバルGAP認証(GGAP)制度があるが、日本農家のGGAP取得率はまだ低い。このため例えば東京五輪に訪れた外国選手たちが、日本で生産された農作物を口にできない事態もあり得る。
 GGAP認証申請には多くの書類作成が必要。取得後も逐次記録が求められるなど、手続きの面倒さが取得意欲を削いでいるとみられている。
 グループが考えたのは、データマイニングを活用し自分とよく似た農家の資料を探す「農作業のフォーマット化」と、機械学習を活用した「リアルタイム入力」の技術。前者は認証導入時の工数を、後者は継続推進時の工数を削減するもので、システムに沿って作成を進めていけば容易に手続きできる。
 大量のデータを安価にシステム運用しようと、アマゾンウェブサービス上に「GAPサーバー」を構築。負荷の大きいフロント作業には農水省の農業データ連携基盤WAGRIの活用を考えた。
 現在、ドローンや自動耕運機によるスマート農業がいわれるが、農作業の情報活用は進まないのが実態。GGAP取得支援ビジネスを推進することで、農作業の情報を統合・共有でき、農業の発展に寄与できそうだ。GAPの枠組みを耕作農業だけでなく畜産・水産農家にも広げ、クラウドで連携させれば、地域社会における循環型一次産業協調システムへと発展させていけそうだと構想する。
 代表して明角さんは「約半年間、ゼミのみんなと先生で一致団結して今回のビジネスコンテストに取り組み、受賞することができて大変うれしく思います」と述べた。