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2017.11.15

落合さん 河野さん
FIT奨励賞


情報科学技術フォーラムで発表
受賞した河野さん(左)と落合さん
受賞した河野さん(左)と落合さん
 情報処理学会の第16回情報科学技術フォーラム(FIT2017)は9月12〜14日、東京・本郷の東京大で開かれ、一般発表セッションで講演した落合涼さん(情報科学専攻修士2年、伊與田光宏研究室)と河野隆太さん(同、藤田茂研究室)が、ともにFIT奨励賞を受賞した。

●落合 涼さん

「投稿場所に着目したソーシャルメディア上の情報拡散の可視化と分析」

 ソーシャルメディアが普及し、発信情報が想像を超えた規模で拡散されることがある。中でも地震、豪雨などの自然災害では、情報が発信場所から他の場所の人々へどのように伝播するかを可視化することで、出来事の重大性を推測できる。
 落合さんらは、投稿場所に着目し、ソーシャルメディア上で情報がどのように拡散されていくのかを、地図上に可視化し分析した。
 特殊なソフトウエアでなく、より一般的なソフトウエアで汎用的に動かせるように工夫。セッション内で最も活発な議論が生まれた。
 「賞をいただき、モチベーションの向上につながりました。さまざまなアドバイスをもらい、不足点も明確になったので、改善していければと思っています。他大学の発表を聞き刺激を受けることができてよかったです」

●河野 隆太さん

「3次元回転不変位相限定相関法を用いた3次元点群位置合わせ手法の高速化」

 3次元モデリングやロボティクス分野では、複数の点群を重ね合わせる“点群の位置合わせ”処理が必要な場合があり、さまざまな手法が提案されている。
 その一つ、3次元回転不変位相限定相関法を用いた位置合わせに着目した。この方法は3次元点群を行列へと変換したものに適用。変換された行列は非常に疎な行列となり、これにフーリエ変換を適用するので、無駄な計算が多くなる。
 河野さんらは、点群から行列へと変換する際に、点群をフーリエ変換し行列に変換することで、疎な行列とせずに目的の行列を得る方法を提案。無駄な計算を減らし処理を高速化することができた。
 要点をかいつまんで、聴者が「細かいところは分からないが全体の流れは理解した」となるよう努力したという。
 「これまでの頑張りが認められたように感じ、とてもうれしかったです。質疑応答ではさまざまな視点からご意見をいただき、ためになりました。今後の研究に生かせたらと思います」

機サ 4人が受賞


IWP2017 英語で研究発表
(左から)手嶋教授、西田さん、(1人置いて)町屋さん、天池さん、金子さん=つくば国際会議場前で
(左から)手嶋教授、西田さん、
(1人置いて)町屋さん、天池さん、金子さん=つくば国際会議場前で
 科学系学生のために開かれるIWP(Interdisciplinary Workshop on Science and Patents=科学・特許に関する学際的ワークショップ)2017(9月26日、茨城県つくば市のつくば国際会議場で開催)で、本学・手嶋吉法研究室の4人が英語で優秀なプレゼンテーションを行い、賞を贈られた。
 賞の種類は、西田匠太郎さん(機械サイエンス専攻修士1年)がRafael Kiebooms Prize(ラファエル・キーブームス賞)、天池翔さん(機械サイエンス学科4年)、金子雄輝さん(同)、町屋佑季さん(同)の3人がUndergraduate Prize(在学生賞)。
 発表した研究と受賞の感想は次の通り。

●西田匠太郎さん

「Boerdijk-Coxeter helix and Its Rolling Property」

 Boerdijk-Coxeter helix(正四面体を直線状に面連結した構造)を機械要素へ応用するための基礎研究で、発表ではBoerdijk-Coxeter helixの試験片作製と、転がり実験の結果を報告した。
 英語での発表で、原稿をしっかり覚え、話すスピードと発音に注意して大きな発声を心がけたという。
 「光栄な賞をいただきうれしく思っています。手嶋先生のご指導と研究室の皆さんの協力のおかげで、感謝を忘れず精進していこうと思います」

●天池 翔さん

「A straight ruler that can be deformed into two kinds of triangular rulers(2種類の三角形の定規に変形できる真っ直ぐな定規)」

 新たな商品を考え出すのが何より大変で、思い浮かんでも既存の商品ばかりで苦労しました。
 ポスターの英訳や、発表時の英語の区切り方、アクセントが難しく、国際会議は初めなので難しかったという。
 「自分が受賞したとは思わず、とても驚きました。ペーパーモデルを使用して発表したことが受賞につながったようで、いい経験になりました」

●金子 雄輝さん

「Shampoo refill container whose bottom is conical shape(底に円錐形状を加えたシャンプー詰め替え容器)」

 シャンプー詰め替え容器の底に、円錐形状を加え、更に底に円柱の穴を加えた。これにより最後の一滴まで余さず使えることを目指した。
 「今まで練習をしてきたことがこのような形になって、とてもうれしいです」

●町屋 佑季さん

「Needleless compass」

 「針のないコンパス」の構造と仕組みを発表した。スピーチでは、原稿を持たず前を向いて発表するように努めたという。ポスターが見やすくなるよう、構成や色使いも工夫した。
 「優秀な他大学の学生もいる中、賞をいただけるとは考えてもいなかったのでとても驚きました」
IWP
ヨーロッパ特許庁のキーブームス博士の来日を記念し、筑波大が2011年から毎夏開催。医学、物理学、化学、工学、天文学、数学など科学の全分野での交流と、学生やポスドクの研究奨励を目標とし、今年度は高校の部も開催した。

JASMA 小澤准教授に論文賞


ミルククラウン形成のメカニズム解明
小澤准教授
小澤准教授
 日本マイクログラビティ応用学会の第29回学術講演会(JASMAC-29)は10月25〜27日、日本大生産工学部津田沼キャンパス(習志野市泉町)で開かれ、先端材料工学科・小澤俊平准教授の発表論文が論文賞を受賞。学生会員が発表する毛利ポスターセッションでは、小澤研究室の板倉真博さん(機械サイエンス専攻博士前期課程1年)と鈴木岳大さん(機械サイエンス学科4年)がともに敢闘賞を受賞し毛利衛宇宙飛行士(日本科学未来館館長)から表彰状を手渡された。
 小澤研究室では、国際宇宙ステーション(ISS)内などの微小重力環境を利用し、金属材料や酸化物を浮遊させ、酸素が非常に少ない極低酸素分圧状態と組み合わせて新材料の開発や高精度な熱物性計測に関する研究を行っている。
 小澤准教授らの受賞理由、感想は次の通り。

●小澤准教授

 発表論文「Splash and Bounce of Droplet on Liquid Layer under Low-Gravity(低重力下の液面における滴の飛散とバウンド)」(International Journal of Microgravity Science and Application2016年31号に掲載)への評価。

 ミルクに小さな滴を落とすと、ミルククラウン(coronet)と呼ばれる王冠のような美しい形になることが知られている。エンジン内部の燃料やスプレー塗装でもこの現象が見られるが、ごく短時間に生じ、地上では必ず重力の影響があるので、形成メカニズムへの重力の寄与について議論が分かれていた。
 小澤准教授は、航空機の放物線飛行を利用して無重力状態や重力を地上より1/10や1/20に小さくした状態で実験を行った。
 その結果、重力が小さくなると、滴が液面に衝突してもミルククラウンは形成されにくくなり、地面に落としたボールのように跳ね返りやすくなることが分かった。また、ミルククラウン上部の小さな滴(王冠部分)の形成は、重力に依存しないことを初めて実験的に証明し、形成メカニズムの議論に決着を付けた。
 「この研究は、私の専門外の内容が多く、実験から論文まで長い時間がかかりました。公開できて幸運にも論文賞を頂けたことは、共著者の方々と、実験を手伝ってくれた学生たちのおかげで、感謝しています」
マイクログラビティ応用学会
国際宇宙ステーションや回収型衛星、航空機、落下塔などを利用して得られる無重力環境下で流体科学、結晶成長、物理化学、材料科学、燃焼科学、基礎物理学、生物科学などの基礎から応用までを幅広く研究。研究者の交流や情報交換を行っている。

毛利ポスターセッション


板倉さん 鈴木さん 敢闘賞
毛利宇宙飛行士(右)から賞状を手渡される板倉さん 同・鈴木さん
毛利宇宙飛行士(右)から賞状を手渡される板倉さん 同・鈴木さん

●板倉 真博さん

「酸素活量を考慮した電磁浮遊法によるシリコン融体の表面張力測定」

 一般的な半導体はシリコン単体だが、ゲルマニウムを添加すると、より高速・低消費電力で動作しノイズも生じにくい。国際宇宙ステーションでは日欧米共同プロジェクトとして、Si-Ge(シリコン-ゲルマニウム)の研究に微小重力環境を利用。単結晶成長プロセスの最適化や現象解明を目指し、高精度の表面張力測定が始まっている。
 板倉真さんらは、この宇宙実験結果を正しく取り扱うための基礎データとして、シリコン融体の表面張力に対する雰囲気中の酸素の影響について明らかにした。
 1枚のポスターに要点を分かりやすくまとめるため、発表内容の取捨選択と構成に悩んだ。
 「受賞できて非常にうれしいです。毛利さんから励ましの言葉をいただけたことは私の宝であり、励みになりました」

●鈴木 岳大さん

「電磁浮遊法によるジルカロイ融体の表面張力測定」

 東日本大震災では、東京電力福島第一原発で炉心溶融(メルトダウン)が発生。事故処理と今後の安全対策のため数値解析によるシミュレーションが行われている。シミュレーションには、物性データの1つである表面張力が必要になる。
 鈴木さんらは、従来は測定が困難だった原子炉材料の一つ、ジルカロイ融体の表面張力の測定に成功し、それがほんのわずかな組成の違いによっても影響を受けることを明らかにした。
 ポスターをどう作ったら伝わりやすいかで、とても苦労したという。
 「学部4年でJASMACに参加し、賞をいただけたことをとてもうれしく思います」