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2017.5.15

小松アさんベストプレゼン賞


き裂発生寿命の新たな予測式を提案
小松ア悟さん
小松ア悟さん
 日本機械学会関東支部の第56回学生員卒業研究発表講演会(3月16日、東京都葛飾区の東京理科大・葛飾キャンパスで開催)で、小松ア悟さん(受賞時機械サイエンス学科4年、緒方隆志研究室)が「CrMoV鍛鋼環状切欠き試験片のクリープ破断強度」を発表し、Best Presentation Awardを受賞した。
 緒方教授の研究室は、機械社会を支える金属材料の強度評価、損傷機構解明、寿命評価法の開発などをしている。例えば火力発電所で働く高温機器には信頼性の維持が欠かせない。高温のもと、蒸気タービンローターの応力集中部に応力が作用し続けると、材料が使用中に損傷することがある。クリープ損傷といわれる。
 小松アさんは、クリープ損傷の進行過程を実験で、また応力分布と損傷状態の関係を有限要素解析(微分方程式の近似解を得る方法の一つ)によって明らかにした。また、損傷が進行し、き裂を形成するまでの時間(き裂発生寿命)を予測する式を新たに提案し、従来の予測式に比べ精度よく予測できることを示した。
 走査型電子顕微鏡で微小な損傷(ボイド)を観察したり、有限要素解析での要素分割の最適化などに苦労したという。
 小松アさんは「受賞するとは――。大変うれしいですが、何より共に研究をして来た仲間たち、丁寧なご指導をいただいた緒方先生に感謝の気持ちでいっぱいです」と語った。

志賀さん学術奨励講演賞


成膜技術と反応過程解析を発表
志賀拓也さん
志賀拓也さん
 表面技術協会の第135回講演大会(3月9、10日、埼玉県川越市の東洋大・川越キャンパスで開催)で、機械サイエンス学科の志賀拓也さん(受賞時4年・井上泰志研究室)が「ICP‐CVD法を用いたSiO:CH成膜におけるその場観察法による反応過程解析」を発表し、第23回学術奨励講演賞を受賞した。
 井上教授の研究室では、先端技術を使って新奇物質を創成し、その構造や物性の評価、工業的応用を探っている。
 シリコン系のSiO:CH(有機基含有シリカ)薄膜は、水を完全にはじく超撥水表面や、LSIの信号遅延を防ぐ超低誘電性を実現する新材料として期待を集めている。
 志賀さんらは薄膜形成技術の一つであるICP‐CVD法(誘導結合型プラズマ化学気相蒸着)を使って、成膜過程のガス雰囲気や物質状態を直接観察し、綿密に解析。その技術や発表ぶりが評価された。
 志賀さんは「ポスターを見る立場になって、グラフや図表のレイアウトを工夫しました。大変光栄です」と感想を語った。

世界初 RNAアプタマー 濃縮過程を解析


坂本研 医薬品開発の促進に期待
坂本泰一教授(左)と天野亮さん
坂本泰一教授(左)と天野亮さん
 次世代型分子標的薬として注目されるアプタマー医薬品の開発について、本学生命科学科の坂本泰一教授、河合剛太教授、工学専攻博士後期課程3年の天野亮さん(現・東京大医科学研究所)らは3月21日、アプタマー創薬会社(株)リボミックと共同で、RNAアプタマーが濃縮される過程を核磁気共鳴分光法(NMR法=注1)でモニタリングすることに世界で初めて成功したと発表した。
 アプタマーは、標的分子を認識して強く結合する核酸だが、目的のアプタマーを得るSELEX実験(注2)は従来、研究者の勘や熟練度に頼るところが大きかった。坂本教授らの手法を使えば、望む性質のアプタマーを取り出しやすくなり、医薬品開発が促進されると期待される。
 バイオ医薬品はこれまで、遺伝子組み換え技術などを応用して動物細胞や大腸菌に治療に有用なたんぱく質を作らせる細胞培養方法をとり、糖尿病治療のインスリンやC型肝炎用のインターフェロンのほか種々の抗体医薬品を生み出してきた。
 一方、アプタマー医薬品は化学合成で大量生産が可能。細胞培養に比べて安価に安定して医薬品を生産できるため「次世代型」といわれる。すでに加齢黄斑変性症の治療で成功している。
 リボミックと千葉工大チームは10年以上、アプタマー医薬品開発の基礎的手法を追究してきた。
 坂本教授、河合教授は、たんぱく質やRNAなど生体高分子の立体構造を解明、デザインにつなげて環境・医療などに役立てたいと研究している。
 坂本教授は、「粘り強く研究を進めてくれた大学院生と大学のサポートに感謝したい。今後も、病気で苦しんでいる人のためにも、アプタマー医薬品の開発に貢献したい」と話している。
 この成果は、シュプリンガー・ネイチャー発行の学術誌サイエンティフィック・リポーツ(3月21日付)に掲載された。
(注1)核磁気共鳴分光法(NMR法)
原子核(炭素や水素)と磁場の間に起こる核磁気共鳴を利用し、分子の構造や運動状態などの性質を分析する方法。
(注2)SELEX実験
1015種類のランダムな配列の核酸プールを作成した後、その核酸プールの中から標的分子に結合する配列の選別と増幅を繰り返すことで、標的分子に非常に強く特異的に結合するアプタマーを得る。

長瀬教授、佐波教授に「フェロー」称号授与


電子情報通信学会
長瀬亮教授 佐波孝彦教授
長瀬亮教授 佐波孝彦教授
 機械電子創成工学科の長瀬亮教授、情報工学科の佐波孝彦教授の2人が3月24日、電子情報通信学会(IEICE)から、学会を代表するにふさわしい電子情報通信工学の専門家として28年度認定「フェロー」の称号を授与された。
 長瀬教授の専門は光ファイバー応用技術で、光通信技術の初期から通信用光コネクタの研究開発に携わり、基盤技術の確立や標準化に貢献。開発した光コネクタは世界の光通信ネットワークで使われている。学会ではエレクトロニクスソサイエティに所属。
 佐波教授は無線通信工学が専門で、通信ソサイエティに所属。次世代無線通信システムの高速化技術、干渉抑制技術などを考案し発表。通信ソサイエティでは最年少で論文誌の編集委員長やソサイエティ全体の編集長を務めた。
 長瀬教授は「機械屋の私が電子情報通信学会から称号をいただき感慨深いものがあります。ご指導いただいた先輩研究者や研究室院生、学部生らのおかげです。称号にふさわしい社会貢献が果たせるよう努めます」。
 佐波教授は「大変光栄に思っています。多くの経験をさせてくださった諸先輩方に感謝しています。今後も称号の名に恥じないよう努めます」とコメントを寄せた。
 IEICEは100年の歴史を持ち会員数は2万5千余人と国内最大級。2000年度からフェロー制度を導入し年度ごとに正会員の0.1%を上限に認定している。

名誉教授に4氏


小泉 俊雄氏 依田十久子氏 荻林 成章氏 五百井俊宏氏
小泉 俊雄氏 依田十久子氏 荻林 成章氏 五百井俊宏氏
 千葉工大で長年、教育・研究に尽くし学術の向上に寄与した4氏に対し、本学は4月26日付で千葉工業大学名誉教授の称号を授与した。
 新たに名誉教授となったのは元建築都市環境学科教授の小泉俊雄氏▽元工学部教育センター教授の依田十久子氏▽元経営情報科学科教授の荻林成章氏▽元プロジェクトマネジメント学科教授の五百井俊宏氏。