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2016.6.15

西村さん笹川助成対象に


「ろう付け」最適化を追究する研究
交付式の会場で西村さん
交付式の会場で西村さん
 機械サイエンス専攻・西村大さん(博士前期課程2年=小澤俊平研究室)が取り組んでいる「酸素活量の影響を考慮したCu-Ag合金融体の高精度表面張力測定」が平成28年度笹川科学研究助成の対象に採択された。日本財団の助成を受け研究助成を運営している日本科学協会が4月22日、東京・赤坂のANAインターコンチネンタルホテル東京で交付式を行い、西村さんに採択証書が手渡された。
 研究は、金属材料を接合する「ろう付け」について、より詳しく解明し最適化を図るもの。ろう付けは、母材より融点が低いろう材(合金)を溶かして接着剤とするが、溶けたろう材の表面張力が溶着の成否を握る。
 西村さんは、最も多用されるろう材である銅・銀の合金(銅ろう)を対象に、これまで説明がつかなかった組成変化と表面張力挙動の関係を▽温度▽組成▽雰囲気――の3つを同時に考慮することで初めて明らかにしようと計画した。解明できれば、ろう付け製品の高品質化が期待できる。
 採択研究は来年2月10日までに成果を求められ、助成額は100万円まで。
 西村さんは応募の研究計画書を、読み手の興味を引くよう作成。慣れない作業に苦戦したという。そのかいあって選考委員会の審査をパスした。
 西村さんは「採択していただき、とてもうれしい。ご期待に沿えるよう全力で研究に打ち込んでいこうと思います」と感想を語った。

黒澤研究員に最優秀研究者賞


惑星科学会、天体重爆撃時代の物理・化学研究で
実験室で黒澤研究員
実験室で黒澤研究員
 日本惑星科学会の2015年度最優秀研究者賞に本学惑星探査研究センター(PERC)の黒澤耕介研究員と横浜国立大大学院工学研究院の癸生川陽子准教授の2人が選ばれた。5月25日の同会総会(幕張メッセ)で発表された。9月の惑星科学会(岡山市)で授与式と受賞記念講演が行われる。
 黒澤研究員は東京都立大物理学科、東京大大学院、JAXA・宇宙科学研究所宇宙航空プロジェクト研究員などを経てPERCに。地球はなぜ生命あふれる惑星なのかを明らかにしたいと、地球が激しい天体衝突を受けた時代の物理・化学過程を研究している。
 学会賞選考委員会などによると、黒澤研究員は、天体衝突現象で特にエネルギー密度の高い領域で引き起こされる相変化・化学反応過程の研究を、種々の計測法を駆使して展開。核融合用の高強度レーザーを利用した秒速10キロ超の衝突で、珪酸塩鉱物が実際に蒸発する現象を観測し、予測よりもずっと高い効率で蒸発することを指摘。月形成巨大衝突後の原始月円盤の熱力学状態や天体重爆撃で発生する衝突蒸気雲の酸化還元状態の理解の見直しを促した。
 さらに原始地球の大気に炭素質物質が衝突するときのシアン化水素生成効率を、衝突実験とレーザー照射実験を組み合わせて推定。炭酸塩岩からの衝突脱ガス量を、自ら開発した開放系気相化学分析法でかつてない精度で計測するなど、天体重爆撃が固体惑星の初期進化に与える影響の定量的評価の土台となる成果を挙げてきた。
 一方で、理論的考察や計算機シミュレーションにより惑星科学の諸問題に幅広く挑戦。国内外の共同研究をリードしてきた点が高く評価された。
 癸生川准教授は、太陽系の有機物の起源と形成過程を研究。母天体で水質変成・熱変成過程により分子構造がどう変化するかを解明し、水質変成実験で、隕石に含まれる複雑高分子有機物と似た有機物を得ることに成功した。はやぶさ2などが持ち帰る始原天体のサンプルの分析を支える研究者として期待されている。

過去最高195校が参加


高校教員に29年度入試説明会
津田沼校舎で開かれた入試説明会
津田沼校舎で開かれた入試説明会
 高校教員を対象にした本学の29年度入試説明会が5月27日津田沼、31日東京スカイツリータウンキャンパスで開かれた。工学部改編による5学部17学科体制で行われたこの春の入試の志願者数が7万6495人と全国9位になったことを受けて、2日間の参加高校は昨年を22校上回る195校と過去最高となった。
 地域別の参加者も東京都や千葉近県を中心に、近年志願者数の伸び率が大きい北関東や東北、甲信越へと広がり、岡山から参加した教員も。本学の人気が全国的に広がっていることを裏付ける形となった。
 27日の説明会で小宮一仁学長は工学部改編について「各学科の定員をコンパクトにして、高校や社会の皆さまから内容が見やすい、きめ細かい教育ができる態勢を整えました」とあいさつした。
 また日下部聡入試広報部長は28年度入試を総括する中で、近年学生の留年率が大幅に改善し、これに伴って退学率も全国の理工系大学の平均値を下回ってきたことを挙げて、「“志願者数が増えている千葉工大”ばかりに目を向けるのではなく、“教育改革をしっかり実行している千葉工大”を皆さまの脳裏にしっかりと刻んでいただきたい」と訴えた。
 この後、熊本忠彦入学試験委員長が29年度のAO・推薦、センター利用、一般入試と受験料軽減措置などについて説明。
 説明会の前後に設けられた個別相談会でも、昨年を上回る数の高校教員が入試委員と相対して熱心に説明を受けていた。
fuRo、PERCの活動ぶり紹介
 今回の入試説明会では“本番”の説明に入る前に未来ロボット技術研究センター(fuRo)の古田貴之所長と、惑星探査研究センター(PERC)の荒井朋子上席研究員が特別講演を行った。入試説明会では初の試み。マスコミなどで大きく報道されている千葉工大の最先端の研究について直接聞ける機会であることも、高校教員の関心を高めたようだ。
 古田所長の講演は「不可能を可能にするロボット技術」。2020年の東京五輪・パラリンピックに合わせて推進されている国家プロジェクト「先端ロボット技術によるユニバーサル未来社会の実現」でfuRoが中心的な役割を果たしていることや、fuRoが開発した最先端ロボットなどを紹介し、「先生方が『この子は世の中を変えてくれそうだ』と思うような生徒を千葉工大に送り込んでほしい」と訴えた。
 荒井上席研究員は、2009年4月に開設したPERCがすでに国内の惑星探査研究機関では最大規模となり、地球の生命誕生の謎に迫る研究では世界的に見ても最先端を走っているとして、PERC内で進められている独自の研究プロジェクトを紹介した。
講演する古田所長(右)と荒井上席研究員 講演する古田所長(右)と荒井上席研究員
講演する古田所長(右)と荒井上席研究員

「メテオ」来月にも観測開始


ISSの窓に設置される
 本学惑星探査研究センター(PERC)が国際宇宙ステーション(ISS)で行う「メテオ」プロジェクトの長期流星観測開始は7月となる見通しだ。プロジェクトリーダーの荒井朋子上席研究員が29年度入試説明会で行った講演の中で明らかにした。
 観測に使われる超高感度カメラは3月23日に打ち上げに成功。同26日にISSに搬入され、5月20日に所定の観測窓に設置。同21日には地上との交信も可能になったが、翌22日にISSに係留中のロシアの無人補給船「プログレス62P」から液体が漏れているのを宇宙飛行士が発見。固化した液体が窓ガラスに付着するのを防ぐため、窓のシャッターが閉鎖されたままになっている。
 プログレス62Pは7月5日にISSから切り離される予定のため、「メテオ」の観測開始はそれ以降となる。