NEWS CIT ニュースシーアイティ

2012.10.15

下園君が優秀発表賞


太陽電池材料の研究で
賞状を手に下園君
賞状を手に下園君
 電気電子情報工学科4年・下園庸介君が電気学会東京支部主催の第3回「学生研究発表会」(9月4日=工学院大学新宿キャンパス)で、優秀発表賞を受賞した。
 発表会は東京支部が、電気学会を担う研究者の育成を目的に、学会本格デビューに向けた論文作成のスキルやプレゼンテーション能力を習得できるよう、首都圏の大学生などを対象に開いている。今回は69人が応募した。
 下園君の研究テーマは「CuInSの薄膜作製とフォトルミネセンス」。
 高価なシリコンを使わないCuInS(銅、インジウム、硫黄から成る化合物)は1.5eVのバンドギャップエネルギー(荷電子帯最上部と伝導帯最下部とのエネルギー差)を持ち、直接遷移型半導体で毒性がないことから、環境にやさしく、太陽光発電のもととなる高効率薄膜太陽電池の材料として期待されている。
 しかしCuInS太陽電池の効率は現在、12%程度。下園君らは高効率化に向け、パルスレーザー堆積装置を用いて、良質な結晶性薄膜を成長させるよう研究している。
 また、作成したCuInS薄膜のフォトルミネセンス(光を使って高感度に半導体の中を調べる方法)を共焦点顕微鏡法(高解像度イメージと三次元情報の再構築が可能な顕微鏡法の一種)で詳細に測定し、CuInS薄膜の評価を行っている。
 他分野の研究生には分かりにくい内容なので、下園君は簡単に理解してもらえるよう工夫。実験装置図や原理図を、一目見て分かるよう、時間をかけて作成したという。
 学生たちは4会場に分かれ、質疑応答も含め1人約10分間プレゼン。発表者同士で投票した結果、優秀発表賞(各会場上位2人)に選ばれた。
 下園君は「院生や国立大学生も発表したので、予想外の受賞に驚いた。発表練習をした点がよかったのだろうと思いました」と語った。

遠山研が優秀ポスター賞


PM3年生の8人
「ノートテイカー」ゲーム制作
前列左から曽山さん、堀君、妹尾君、後列左から林さん、菊池さん、三木さん、太田さん、坂本君
前列左から曽山さん、堀君、妹尾君、
後列左から林さん、菊池さん、三木さん、太田さん、坂本君
 プロジェクトマネジメント学科の3年生8人(遠山正朗研究室)が、第29回医学情報サービス研究大会(8月26日・東京都中央区の聖路加看護大学で開催、実行委員長=松本直子・同大学図書館司書)で優秀ポスター賞を受賞した。
 受賞したのは堀康記君、太田千波さん、菊池祐圭さん、坂本光諒君、妹尾昭太君、曽山尚美さん、林真衣子さん、三木絵梨香さん。
 「聴覚障がい者の情報保障に寄与する方法に関する一考察」をポスター発表し、優秀と認められた。
 大学での講義で、わきに付いて重度難聴者の耳役を務める要約筆記通訳(ノートテイカー)は、あまり知られていない。ノートテイカーが、どうやって聴覚障がい者の情報を保障しているか――ゼミで、ノートテイカーの役割に焦点が当てられ、ボードゲーム制作が決まった。
 ゲーム化することで、興味を呼び、気軽に参加してもらえる。口頭や文章の説明で足りない疑似体験ができる。情報を受ける側にもなってみることで、聴覚障がい者が何に困っていて、何が必要なのかを理解できる。
 コンセプトは決まったものの、ゲームのルールづくりが難しかった。“速記”“聞き取る”と、ノートテイカーの要素を挙げていき、これらの要素をどう組み合わせてゲーム化していくかに時間を費やした。
 文字カードをプレーヤーが取りあい、ひとつの文章にしていく。取りあいは速記などで勝負をして勝敗を決める。手話も組み入れたゲーム形態で、ノートテイカーに求められる事柄を学ぶ。
 実際にゲームしながら細かいところまで全員で意見を出し合い、微調整した。次に、木材とアクリルボード、塗装材料を買って来て、みんなで制作。かなり体力を使う作業で、ゼミ終了時には、みんなクタクタになっていたという。
 ゼミ生全員で学外発表に行くのは今回が初めて。大会は医学・医療と関連分野の情報サービスに関する研究発表の場で、講演などが行われた。
 ポスターセッションには、医学図書館や研究機関から11題が参加。2階ラウンジのポスターの前で、8人がそれぞれ参加者の質問に答えた。
 ゼミ長・林さんは「他のプロジェクトも同時進行しながら、このゲームのルールを考え、実際に遊んでみたり、発表ではポスターだけじゃなく映像も見せよう!と考えたり――。大変でしたが、とても楽しく有意義で、あっという間だったなというのが印象です。その結果として賞をいただけたことは、うれしいと同時に今後の活動の励みになります」と語った。

木内さんケニアで活躍


コンピューター教える PM卒業生
 本学卒業生が青年海外協力隊の一員として、アフリカのケニアでコンピューターを教えている。
 千葉県山武郡芝山町出身の木内峻宏さん(28歳)で、平成18年にプロジェクトマネジメント学科(堀内俊幸研究室)を卒業。IT企業(アイ・ビー・エム・サービス株式会社)でシステムエンジニアとして勤務後、JICA(独立行政法人国際協力機構)のボランティアに応募して平成22年第3次隊に加わり、ケニア西部ニャンザ州ロンゴ県にあるモイ技術専門学校に配属された。
 ロンゴは首都ナイロビから約400キロ(バスで約8時間)離れた農村部で、大通りが数本程度の小さな街。モイ技術専門学校は、中心部からさらに約7キロ離れており、周辺に小さなマーケットがあるだけという。
 学校は中等教育修了生を対象に7学部14学科あり、木内さんはコンピューター講師として数学・コンピューター学科に配属。1年生=基礎、2年生=応用、3年生=卒論――を担当するほか、学校のIT化やコンピュータールームの管理も行っている。
 活動参加のきっかけは、本学在学時代に、途上国を旅行したこと。子どもたちが学校に行けず両親の手伝いをしている姿を見て、途上国の人々の役に立てる存在になりたい、と国際協力を志すようになったという。
 ケニアの最大産業は園芸作物、紅茶などの農業。携帯電話が驚くほど普及している反面、パソコンの日常使用者はまだ少ない。木内さんはコンピューターレベルを上げ、住民の経済的な助けになれば、と思った。
 現地入りして感じたことは、水と電気の大切さ。家に水道がなく、外にある共同水道からバケツで補給。電気も不安定で、3日間電気のない生活をしたりすると、実に不安になった。一方、アフリカの自然の豊かさに心を打たれた。
 日本で思うアフリカは、貧困や内戦のイメージが先行しがちだ。しかし、木内さんの活動地域は、自然に恵まれ、雨が多く、食物が育ちやすい。困っている人を助け合う伝統文化があり、人々がのんびり楽しく生活している姿を見ると、日本で朝から晩まで働いたころを疑問に思うこともあるという。
 千葉工大在学時の木内さんに一番役に立ったというコースを、モイ技術専門学校のクラスで再現。授業は理論ベースが多く、実践コースはほとんどない。そこで、コンピューターの理論と、社会での使われ方を結びつけることで、より実践的なコースを作り上げた。任期は来年1月までだが、コースが持続するよう、同僚への引き継ぎ方を検討しているという。
 木内さんは恩師・堀内教授とメールを交わしており、本学の後輩たちへ「学生のうちに異文化を体験してほしい。海外の人々との出会いで“違い”を感じ、日本人として許せないこともあるでしょう。でも、その違いを受け入れ、理解し、尊重し、さらに興味を持つ過程は、人間関係を広げ、人生を豊かにしてくれると信じます」とメッセージ。「青年海外協力隊でなくても機会はあると思います。好奇心をもって、どんどん新しい世界に飛び込んで、新しい自分を発見してください」と、励ました。
 木内さんの活動報告はJICAのホームページ(http://www.jica.go.jp/kenya/office/others/volunteer/201205_01.html)でも紹介されている。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 木村さんの教え子たち(左)と授業風景
木村さんの教え子たち(左)と授業風景