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2012.10.15

「クインス」実用化技術賞
福島第一原発で活躍 ロボット学会


小柳fuRo副所長ら3人の開発を評価
(左から)吉田上席研究員、小柳副所長、西村研究員
(左から)吉田上席研究員、小柳副所長、西村研究員
 東日本大震災による福島第一原発事故に投入された災害対応ロボット「Quince(クインス)」の研究開発を評価され、未来ロボット技術研究センター(fuRo)の小柳栄次副所長、吉田智章上席研究員、西村健志研究員の3人が、日本ロボット学会(川村貞夫会長)から第17回(2012年)実用化技術賞を受賞。9月19日、北海道・札幌コンベンションセンターで開かれた学会授賞式で表彰された。
 クインスは昨年6月、福島第一原発に国産機として初めて投入された。もともと障害物克服能力抜群のクインスを、高温多湿・高濃度放射線に耐える原発対応に改造。無線の効かない厚いコンクリート建屋内で有線・無線の兄弟機を連携させる通信、半導体部品を防護する耐放射線能力、3次元センサー測定、撮影技術などを開発付加した。
 2、3号機建屋内に投入されるや、高画質写真撮影や放射線量測定、汚染水の水位測定、空中浮遊物採取などをこなし、東京電力作業員たちを被ばくから守った。
 その活動ぶりは9月6日、芝浦工大(東京都江東区豊洲)で開かれた同学会震災対応ロボティクス・シンポジウムでも報告され、小柳副所長が導入について講演した。
 小柳副所長らは「大変光栄です。大学関係者をはじめ多くの方々の協力にお礼を申し上げます。これを励みに研究に尽力します」と感想を述べた。
 日本ロボット学会は1983年の設立以来、ロボット学に関する研究の進展と知識の普及を図り、論文誌を発行、学会・シンポジウムなどを開催している。

吉田上席研究員ダブル受賞


ロボット技術解説で学会論文賞
 未来ロボット技術研究センター(fuRo)の吉田智章上席研究員が8月22日、秋田大学で開かれた計測自動制御学会(SICE=白井俊明会長)年次会議で2012年度計測自動制御学会論文賞を受賞した=写真。
 SICEは計測工学、制御工学、システム工学の研究者・技術者を中心とする専門家集団。
 2010、11年の2年間に学会誌に掲載された論文中、特に学問技術の発展に寄与するところが大きいと推薦され、選考委員会で審査の結果、受賞が決まった。
 論文タイトルは「3Dスキャナとジャイロを用いた屋外ナビゲーションプラットホーム」。
 自律移動ロボットの機能を公道で実証実験する「つくばチャレンジ」で課題を達成したfuRoのロボット「PapyrusII」についての論文。fuRoチームは09年から3年連続で市長賞を得ている。
 屋外自律移動には周囲の環境の測定方法、ロボットの動きの測定方法、ロボットの位置の推定方法といった技術が必要になる。PapyrusIIはレーザースキャナで周囲の3次元形状を計測する方法と、ジャイロを用いたロボットの動きの計測を組み合わせ、広く周囲を3次元で認識して走る。論文では09年に開発したこれら基盤技術について解説した。
 吉田上席研究員は「論文が、身近なところで動くロボットの開発や社会の発展に役立つならうれしい。いろいろな展開が考えられるので、引き続き研究開発を進めたい」と感想を述べた。

マイクロソフト主催の近未来技術コンテスト


閔さん小川さん「技術賞」
受賞した閔さん(左)と小川さん
受賞した閔さん(左)と小川さん
 世界最大のコンピューター・ソフトウエア会社マイクロソフトの実行委が主催する「Kinect for Windows Contest2012」(9月14日・新宿パークタワー)で、閔弘圭さん(工学専攻博士後期3年)と小川祐司さん(未来ロボティクス専攻修士2年)=ともに王志東研究室=のチーム「先進的マルチキャリア育成プログラムTeam CIT」(千葉大学共同プロジェクト=閔弘圭代表)が技術賞を受賞した。
 コンテストは、Kinect(キネクト)を使った新技術・新サービスとアイデアを募集した。
 キネクトとは、Windows用に開発されたPCセンサー(距離・映像センサー、方向感知マイクなどを装備)と、無償の開発ソフト(SDK)を組み合わせて使う新デバイス。
 音声や骨格・動作などを認識して追跡できるので、例えば目前にPC画面を現出させ、手ぶりでコンピューターを操作するSF映画のような近未来技術が期待できる。
 閔さん、小川さんらの作品は「非接触型咀嚼センシング〜食環境づくり噛むログ〜」。
 体の自己管理やダイエットの観点から、食事の咀嚼の重要性が再認識されている。咀嚼回数を簡便に計測するツールは需要があり、いくつか製品化されながら、体脂肪計ほど普及していない。
 閔さんらはその理由を、既存製品が接触型で、摂食行動を阻害するから、と考えた。そこで、キネクトが持つ画像認識技術と赤外線センサー技術を使い、初の非接触型の咀嚼回数モニタリングを考案した。
 誰もが簡単に、ストレスなく使え、誤動作しないものを――。骨格トラッキングやフェイストラッキング、音源方向推定など、キネクト技術を活用し、咀嚼センシングシステムを作り上げた。
 応募87作品(エントリー数140件)のうち10作品が1次審査を通過。プレゼンテーションが行われ、実行委が最終審査した結果、閔さんらの提案が将来性や操作性、完成度などで高得点を得て、技術賞が決まった。
 2人は夏休み中に急きょ、アイデアを練り、システム開発したという。
 プレゼンではアイデアだけでなく、市場の需要の現実をしっかり捉えたシステムであることを強調。デモ展示では利用シーンをはっきり描いた。
 技術賞については、ユーザーインターフェイスに、タッチパネルを重視したWindows8のMetroスタイル風を取り入れたことが、特にマイクロソフト関係者に評価されたのではないかという。
 閔さんは「企業や大学、研究機関など実力者ぞろいの中で、1次審査通過自体、大変うれしく思っていた。最終審査のスライド発表、デモ展示で否応なく実力の差が出ると感じていたが、ターゲットにした咀嚼(噛むこと)への関心や咀嚼センシングが面白がられたことはうれしく、技術賞受賞は開発者名利につきます」と感想を述べた。

坂本君、木村君 経産省局長賞


プログラミング演習支援アプリで
(左から)木村君、坂本君
(左から)木村君、坂本君
 若きプログラマーが力作を競う経済産業省主催「第33回U‐20プログラミング・コンテスト」(9月30日=東京都港区芝公園の機械振興会館)で、情報科学部の情報ネットワーク学科1年・坂本蓮君と情報工学科2年・木村陽一君の2人が経産省商務情報政策局長賞を受賞した。
 コンテストはコンピュータープログラマーとしての“才能の芽”発掘を目的に毎年開催される。
 2人が考案したのは「Source Walker」。高校・大学などでプログラミング演習する際、授業を支援するウェブ・アプリケーションをつくった。
 学生は履修授業で、あるプログラミングの課題が出たら、ウェブ・ブラウザからプログラムのソースコードをアップロードして課題を提出する。するとウェブ・アプリケーションサーバー側でそのソースコードが自動的にコンパイル(実行可能形式に変換)され、生徒のブラウザにほぼリアルタイムでプログラムの実行結果と課題の合否が表示される。先生側の管理画面では、生徒が提出した答えの確認、生徒向けの課題の作成・履修登録ができる。
 ほかにも、学生が提出してきたコードがいわゆるコピペされていないか確認を手助けするなど、先生の負担が減る機能も搭載。学生にとっても、先生にとっても、プログラミング演習の有力な授業支援システムになる。
 坂本君らはプログラミング演習の機能を、どうシンプルに特化して盛り込むか、工夫を重ねたという。1次審査通過10作に選ばれ、9月30日の最終審査会で審査員らを前にプレゼンテーション。その結果、着眼点と技術の優秀さが認められ、商務情報政策局長賞6作品の一つに選ばれた。
 授賞式は10月1日、千代田区内幸町のイイノホールで行われた。
 木村君は「自分たちがつくった趣味のソフトウェアを発表できる数少ない機会なので、賞をいただけてとてもうれしく思います」。
 坂本君は「U‐20に応募できる最後の年で、自分たちのつくったプログラムが評価され、とても光栄です」とコメントした。