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2012.3.15

原発対応クインス
新型2機、福島へ


トラブルに強い互助機能
クインス2、3号機の新機能を説明する小柳栄次fuRo副所長
クインス2、3号機の新機能を説明する小柳栄次fuRo副所長
 立ち往生した時は「相棒」が助けます――。未来ロボット技術研究センター(fuRo)が1月30日、「原発対応版Quince(クインス)」の新型機を芝園キャンパスで報道陣に公開した。福島第一原発の原子炉建屋内を単独で活動した1号機と違い、新型機は常にコンビで運用するのがポイント。通信ケーブルのトラブルで操作不能に陥っても、待機しているもう1台が出動し、無線通信可能な範囲まで近づきその後一緒に帰還する。
 新型機は2号機と3号機の計2台。線量計や温・湿度計、無線機、前後2つの高機能カメラなど原子炉建屋の内部環境をモニタリングする共通の機器に加え、2号機に空気中の浮遊塵を採取するダストサンプラーを、3号機に内部の破壊状況を把握する3次元スキャナーを装備している。
 救援の手順はこうだ。どちらがミッションを行うにせよ、もう1台はオペレーターの近くで待機する。通信ケーブルが切れた場合、動作中のクインスは緊急停止、自動的に無線通信に切り替わり、照明を点滅させて救援を待つ。オペレーターが待機中のもう1台の電源を入れると、お助け役は約2分で起動し仲間のもとへ急行。2台のロボットは、お互いに無線で交信しながら共に戻って来る、という流れ。通信ケーブルが切れたため原子炉建屋内に取り残された1号機を教訓に、バックアップ機能を加えた。
 福島第一原発では、廃炉に向け今後さまざまなロボットの導入が見込まれる。原子炉建屋の中はがれきが散乱し、被ばく防止のため仕切りが多い。通信ケーブルが切れたり絡まるなどしてロボットが進退きわまる事態も予想され、「クインスに限らず、有線ロボットならすべて無線で救援できるよう他のロボットメーカーと実験を始めている」と、開発した小柳栄次副所長。新型機はロボットのライフセーバーとしても活躍しそうだ。
 このほか、1号機のトラブルのもとになった通信ケーブルの巻き取りを自動化。ケーブルの張力に応じてスムーズに巻き取る能力を高めた。また、操作する人の疲労を軽減するため操作画面を改良。電波強度やバッテリー残量などの警告表示を目立つ配置にしたり、ロボットの進行方向に合わせ操作情報が瞬時に切り替わることで、集中力が持続するという。
 記者会見の冒頭、古田貴之所長は「原発対応版クインスは東京電力と機密保持契約を結んだうえでfuRoが独自に開発したもの」と一部報道に見られる混同を指摘。クインス自体はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトとして東北大などと共同で誕生させたものだが、東日本大震災以降、本学が社会的な意義を認め開発資金を含め無償貸与していると説明した。
異種ロボも開発へ
 2台は2月20日、福島に向け出発。小柳副所長によると、fuRoが福島に送り出す原発対応版クインスは今回で打ち止め。東電やプラントメーカーの要望を受け、次は高所撮影用ロボットや狭い空間で作業できる小型ロボットの開発を進める。ロボットの足回りを除染する装置や、ガンマカメラを搭載した大型ロボットも依頼されており、NEDOの「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」の公募事業に認められ次第、着手する方針だ。
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