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2011.12.15

興味映す鏡≠ナ優秀賞


デザイン学会秋季企画大会
デザイン科学 院生 小畑さん
小畑一真さん
 人と物事との相互作用(インタラクション)をデザイン面から追究する工学研究科デザイン科学専攻修士1年、小畑一真さん(山崎和彦研究室)が、平成23年度日本デザイン学会秋季企画大会(11月12日、東京・本郷の東大工学部2号館で開催)の学生プロポジションで研究発表し、優秀賞を受賞した。
 テーマは「人の興味を惹くインタラクションデザインの研究」。研究室で制作した作品「行為の鏡」をメインに発表した。
 「人が近づく」という行動を、画面が感じ取り、地図や広告が距離に応じて拡大され、同時に情報も拡大されるという双方向装置。
 人の行動に対する反応だけでなく「興味」の相互作用化を考える場合、どんな要因が必要か、作品制作を通して実証していく過程での作品。距離を感知するには、距離センサーやプログラムを駆使しなければならず、多数の人たちに手伝ってもらって制作したという。
 会場に実物を展示したかったが、スペースがなかったので発表前日、作品紹介ムービーを作り、パソコンでムービーを見せながらプレゼンした。
 小畑さんは「内容がまだ薄いので、受賞できるとは思わず、驚きました。手伝ってもらった人たちにとても感謝しています」。また「ムービーがなかったら作品の内容がうまく伝わらなかった。頂いたアドバイスを参考に、ブラッシュアップしていこうと思います」と語った。

節約"ペダル・シャワー"
ダイソン賞で国内4位


姫野、星野、宮口さん
ダイソン賞国内4位の(左から1人おいて)星野さん、姫野さん、宮口さん 受賞したユニット。シャワーを浴びる時だけ枠下のペダルを踏む
ダイソン賞国内4位の(左から1人おいて)星野さん、
姫野さん、宮口さん
受賞したユニット。
シャワーを浴びる時だけ枠下のペダルを踏む
 独創家電で知られる英ダイソン社のジェームズ・ダイソン氏が設立した財団が主催する国際学生デザイン賞「James Dyson Award2011」で、工学研究科デザイン科学専攻修士2年の姫野剛さん、同1年の星野創一郎さん、宮口裕基さん(佐藤弘喜研究室)の3人がデザインしたシャワーユニットが、国内審査トップ10に選ばれ4位を獲得した。
 姫野さんらの作品名は「Pedal Faucet(足踏み式水栓)」で、足で操作し、湯水を節約するシャワーユニット。
 シャワー時、湯水を出しっ放すと、毎分約5リットルも流れる。出しっ放す原因は、蛇口コックが遠いことだと考えた。そこで足下にペダルを配置し、ペダルを踏んでいる時だけ湯水が出る方式をデザイン。シャワーを止めるには、踏んでいる足を上げるだけでよい。
 ふつう、シャワーを浴びる人は、ほぼ全て手で洗い、足は使っていないことに着目した。足でも操作している自動車などからヒントを得て、足ペダルを発想したという。
 腰の高さほどのすっきりした枠にまとめ、枠上には洗髪料などを置けるようにした。
 「J.D.Award」は、想像力や独創性を重視し、欧州各国や豪州、シンガポールなど18カ国のデザインやエンジニアリングを専攻する学生・卒業生を対象に作品を募集。今年のテーマは「日常の問題を解決するアイデア」で、550点を超す応募があったという。
 作品選考は、国内審査(一次審査)、二次審査、三次審査を経て、ダイソン氏が最終審査。国際最優秀賞には受賞者と在籍・出身大学にそれぞれ賞金1万ポンド(約130万円)が贈られる。審査員には各国で活躍中のデザイナーやジャーナリスト、ダイソン社エンジニアらがなり、日本ではプロダクトデザイナーの山中俊治氏と下川一哉「日経デザイン」編集長が審査にあたった。
 姫野さんは「国内ファイナリストに選ばれ、うれしい。授賞式で審査員を務めた山中俊治さんと改善点などを話し合えたことが、今後の糧になるよい機会でした」と話した。
 授賞式は11月2日、東京・渋谷区の明治神宮外苑前広場で開かれた「TOKYO DESIGER'S WEEK」会場で行われ、ダイソン財団から賞状と記念品が贈られた。

盛さん優秀ポスター賞


金属学会
コーティング研究で
盛さんと出展ポスター
盛さんと出展ポスター
 機械サイエンス専攻修士1年、盛建さん(坂本幸弘研究室)が11月7〜9日、沖縄県宜野湾市の沖縄コンベンショセンターと隣接カルチャーリゾートフェストーネで行われた日本金属学会2011年秋期大会講演・ポスターセッションで優秀ポスター賞を受賞した。
 発表テーマは「熱遮蔽コーティングにおけるボンドコート表面粗さの影響とプロセス依存性」。
 盛さんは、本学大学院と連携協定を結んでいる物質・材料研究機構のコーティンググループに属し、機械サイエンス学科の坂本教授の指導を受けながら、機構側の第一線の研究者らとともに研究を進めてきた。
 ジェットエンジンのタービンブレードなど、摂氏1600度以上で使用される耐熱材料にとって、酸化は耐熱性劣化のもと。盛さんらのグループは、高温でも酸化に耐えるボンドコートを研究。従来の成膜プロセスに改良を加えたウォームスプレー法(WS)を開発することにより、成膜時の膜中酸化量がより低く、皮膜表面がより粗いボンドコートの形成を可能にした。
 試験で良好な耐酸化性が裏付けられ、膜中酸化量こそが耐酸化性に大きな影響を及ぼす因子であることを、モデル推定から見いだした。
 ポスター発表に向け盛さんは、聴衆の足を止めるインパクトを、と工夫。黒地に白字を使い、文字サイズや配色などに細心の注意を払ったという。インク使いすぎ!と少し怒られたが、目立つポスターに仕上がった。
 審査員の投票により優秀ポスター賞に選ばれ、11月8日、那覇市のロワジールホテル那覇で授賞された。
 盛さんは「坂本教授をはじめ物質・材料研究機構の方々、研究室の仲間たちのご協力、助言のおかげです。身に余る栄誉でお礼申し上げます」と受賞を喜んでいる。

震災復興の橋渡し役に


マネジメント工学 院生 清藤さん
慶応大学日吉キャンパスで写真展を準備する清藤さん(左端)
慶応大学日吉キャンパスで写真展を準備する清藤さん(左端)
 東日本大震災の被災地を支援するため、社会システム科学研究科マネジメント工学専攻修士1年、清藤圭さん(鴻巣努研究室)は、震災写真展ツアーの主催メンバーとして活動、学生がボランティアに参加できるよう、NPO団体との橋渡し役を務めている。
 今回の震災で首都圏の大学生・院生の多くが東北で復興支援を体験。そうした約30人がコアとなり、支援のための「みちのくcaravan」を立ち上げた。被災地の現状を伝える写真展「みちのくphotocaravan〜東北のキセキ〜」を企画。日本写真家協会や国境なき医師団から受賞歴のある渋谷敦志氏など、著名フォトジャーナリスト3人の協力を得た。
 目的は、メッセージ性の強い写真を通して、震災地への関心を一過性に終わらせないため。また「何か手伝いたいけど……」と思い悩む学生たちを、ボランティアに結集しようという試みだ。
 清藤さんは8月に福島で支援活動し、現地を見てボランティアがもっと必要と痛感。ボランティア仲間の1人が写真展の代表で、話を聞くうちに参加を決意したという。
 写真展では、プロの作品のほか、Youthfor3・11(学生ボランティア派遣の学生団体)などを通してボランティア活動をした学生たちが写した被災地の風景、生活、ボランティア活動などの数々を用意。10月17日から、国際基督教大学を皮切りに12月16日まで、慶応大、早稲田大、東京大、筑波大など首都圏9大学のキャンパスで3〜5日間ずつ延べ11回、写真展を開いた。
 会場には清藤さんらが交代で詰め、訪れる学生たちの質問に答え、ボランティア希望者にNPOなどの窓口を紹介した。各展最終日には東北支援の説明会を開き、プロの写真家によるトークショーも行っている。
 清藤さんが所属する鴻巣研究室では、主要テーマの1つが、プロジェクトの成功に必要なメンバー間のコミュニケーションやリーダーシップの研究で、清藤さんのボランティア活動とも重なる。
 清藤さんは「ボランティアに行って変わった。震災に向き合うようになった。被災した方々の声を聞いて、被災地に何が必要か、自分なりに考えるようになった。より多くの学生に大震災と、ボランティアのことを伝えたい」と語る。
 今月中旬からは、関西圏の大学でも写真展を開く。