NEWS CIT ニュースシーアイティ

2011.6.15

松井PERC所長らが解明


土星衛星タイタン大気形成の謎
松井孝典所長
松井孝典所長
 この宇宙は地球外生命で充たされているのか――。津田沼の本学8号館・惑星探査研究センター(PERC)から宇宙を望み壮大なテーマを探求する松井孝典所長が、地球型大気に包まれた土星衛星タイタンの大気形成の謎を共同で解明。成果は英科学誌Nature Geoscience誌の5月8日付電子版に掲載された。他の地球型惑星、生命の可能性を探す際の重要なヒントの一つとなる。
 タイタンは太陽系で地球以外に唯一、厚い窒素大気層を持つ。地表は極低温なので水は凍っているが、液体メタンが海や川、湖となって地球そっくりに蒸発・降雨し循環している。違いは大気の形成過程。
 地球大気の8割を占める窒素は、地球の材料物質に含まれる窒素が集積期に脱ガスして形成されたが、タイタンの場合、材料物質に含まれるアンモニアが脱ガスしてもその後地表に凍りつき、窒素が形成されるためには別のメカニズムが必要だ。どのようにして出来たのか。NASAと欧州宇宙機関の土星探査機カッシーニの観測により、諸説が次々に否定され、大きな謎となっていた。
 松井所長は古巣・東京大学の関根康人助教らと共同で、太陽系形成後6億年(今から約40億年前)に系内で起きた巨大隕石の重爆撃期に着目し、衝突熱でアンモニア氷が分解され窒素が生成された、と推定。タイタンの地表に似せたアンモニア氷に、高エネルギーレーザー銃で、隕石を模した金属片を発射、衝突で生成する気体を調べるシステムを世界で初めて開発し、隕石の衝突シミュレーションを繰り返した。
 その結果、隕石の衝突速度(秒速推定10〜11キロ)の衝突熱で、アンモニアがほぼ100%気体窒素と水素に分解された。タイタンを取り巻く窒素大気の「重爆撃期形成説」が実証されたことになる。
 松井所長らは「惑星や衛星が大気を獲得するメカニズムに新視点を与えた。こうした理解は今後、太陽系外の地球型惑星の大気や、表層環境の推定にもつながる」と期待している。
土星の衛星タイタン。大気のため輪郭がかすんで見える(米航空宇宙局撮影)
土星の衛星タイタン。大気のため輪郭がかすんで見える(米航空宇宙局撮影)

大震災に 何をすべきか


公開討論会開く 建築・意匠系
「現場を直接見て・・・」。真剣に話し合われた公開討論会
「現場を直接見て・・・」。真剣に話し合われた公開討論会
 本学津田沼キャンパスで4月22日、公開討論会「東日本大震災 私たちは何をすべきか 何ができるか」が開かれた。
 建築・意匠系に携る者として、この未曾有の事態にどう取り組むか――建築都市環境学科・石原健也准教授が企画した。
 同学科の古市徹雄教授、建築家・西田司氏(オンデザイン主宰)、大阪市立大学大学院の宮本佳明教授の3人が講師役となり、建築を専攻する学生ら91人で意見を出し合った。
 被災地で現状を見てきた古市教授ら講師3人が基調リポート。沿岸部、津波が及んだ地域の建物は、土台だけを残して流された家が多かったという。しかし「津波が及ばなかった地域では、地震そのもので倒壊した建物は、ほとんどなかった」と宮本教授は報告した。
 討論会ではさまざまな意見が出され、講師陣は、学生たちに「とにかく現場を実際に見ること」「生半可な動機で望まない」。自分に何ができるか、と戸惑う声には「学生という意識でなく、プロの建築家として、考えてほしい」とアドバイス。学生たちに自覚を促す討論会となった。