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2023.2.15

蛯ウん 学生奨励賞受賞


非破壊検査の性能向上で
 2022 IEEE AP-S Japan Student Encouragement Award(米国電気電子学会アンテナ・伝搬学会の東京支部が主催する学生奨励賞)は、昨年推薦された論文の審査結果を発表。蝸揄宸ウん(情報通信システム工学専攻修士2年、長敬三研究室=写真)の「Reduction of synthetic aperture array element in THz imaging using compressed sensingとA Study on THz Reflection Imaging of Two Metal Wires Using Compressed Sensing(テラヘルツ波を用いた非破壊検査における圧縮センシングによる分解能向上に関する2論文)」が学生奨励賞に選ばれ昨年12月25日付で表彰された。
 長研究室では、携帯電話などの無線応用技術、特にアンテナに着目し空間多重伝送技術などを研究している。蛯ウんはテラヘルツ波を用いた非破壊推定について、位置推定アルゴリズムに圧縮センシングを用いることで検査の精度を上げることができた。
 論文では、分かりやすく定量的に表すよう意識したという。蛯ウんは「学外で研究を見ていただく機会はあまりないので、良い評価をいただき心からうれしく思います」と喜んでいた。

国際シンポ 安田さん松元さん
体内時計や脳神経回路


信川研2人 学生論文賞
 数学・科学の非線形理論関連の成果を交換する国際シンポジウムNOLTA2022(12月12〜15日、Zoomによるオンライン開催)で、情報工学科4年・信川創研究室の安田義熙さんが最優秀学生論文賞、松元唯吹さんが学生論文賞を受賞した。2人の発表論文と受賞の感想は次の通り。

●安田 義熙さん

「Analysis of Functional Connectivity of EEG Reflecting Circadian Rhythm Using Phase Lag Index(Phase Lag Indexを用いた概日リズムを反映した脳波の機能的結合性の解析)」

 近年、概日リズム(体内時計)の乱れがうつ病や気分障害、内科疾患の症状悪化につながるとされ、乱れを定量的に把握し、個々人の症状に適した治療法を提案するためバイオマーカー(生理学的指標)の開発が求められている。
 従来の脳波解析では、部位特異的な神経相互作用の特定は困難だった。
 安田さんはPhase Lag Indexと呼ぶ手法で機能的結合性を解析。シータ、デルタ、ベータと呼ばれる周波数帯域で、機能的結合性が昼間と夜間で統計的に有意な変化があることが確認できた。この手法は概日リズムのバイオマーカー開発につながると考えられる。
 「英語が得意なわけでもないのに大きな賞を頂けたのは、信川先生のご指導と研究室の皆さんの協力のおかげです。修士に進学して研究を進めたいと思います」
●松元 唯吹さん

「Long-Tailed Distribution of Excitatory Postsynaptic Potentials Enhances Learning Performance of Liquid State Machine(興奮性シナプス後電位のロングテール分布がもたらすリキッドステートマシンの性能向上)」

 脳の神経回路で、興奮性シナプスを介した入力で上昇したニューロンの電位を興奮性シナプス後電位(EPSP)という。特に興奮性ニューロン同士の結合のほとんどは結合強度が弱いが、ごくわずかに強い結合が存在する。
 松元さんは、このごくわずかな強い結合(long-tailed EPSP) が与える影響を調べようと、リザバーコンピューティング(RC)モデルという機械学習モデルにlong-tailed EPSPを組み込んだスパイキングニューラルネットワークを用いて評価。わずかな強い結合はRCの性能向上に大きく貢献していることが確認され、ガンマ波の神経活動による決定論的なダ イナミクスが影響を与えている可能性も示唆された。
 「国際学会で賞をいただき光栄です。英語論文は初めてで、文章の添削や相談に乗ってくださった信川教授と東邦大、関西医科大の先生方に感謝しています」

色材協会国際会議 小野澤さん大原さん


柴田研の2人が受賞
 顔料・塗料・印刷インキなど色材研究の学術団体「色材協会」の創立95周年記念国際会議(昨年10月25、26日、都内・アルカディア市ヶ谷私学会館で開催)で、論文発表した小野澤彩さん(応用化学専攻修士1年、柴田裕史研究室)が優秀口頭講演賞を、大原明香理さん(同)が優秀ポスター賞を受賞した。
 2人は柴田研で、物質の界面(接し合う面)をデザインして新機能材料を開発する研究に携わっている。発表テーマと受賞の感想は次の通り。
●小野澤 彩さん

「Preparation and solid acid catalytic properties of ZnO/TiO2 composite particles(ZnO/TiO2複合粒子の調製およびその固体酸触媒特性)」

 酸化亜鉛(ZnO)粒子の表面にチタニア(TiO2)を複合化させることで電子の動きをデザインし、よりよい触媒の開発を試みた。
 発表資料の作成は柴田教授と何度もブラッシュアップを重ねた。一部専門外の有機合成実験があり、他研究室の力も借りたという。
 「初参加した学会の口頭発表で賞をいただき、うれしく思います。柴田先生と先輩方が積み上げてきたデータの上に成り立つ賞で、今後も研究に尽力したいと思います」
●大原 明香理さん

「Preparation of a hexagonal platelike ZnO particles aggregate with a hollow structure(中空構造を持つ六角板状の酸化亜鉛粒子凝集体の調製)」

 酸化亜鉛は光触媒材料として知られ、光触媒の性能を向上させるためにさまざまな調製が検討されている。大原さんらは、六角板状酸化亜鉛粒子を用いたO/Wピッカリングエマルション(乳濁液)を調製し、その油滴を鋳型とした球状中空粒子の調製に成功した。酸化亜鉛粒子で構成された空洞を持つ構造物、と読み手に伝わるような図を作るのが大変だったという。
 「初めての学会に英語ポスターで発表することは不安で、緊張しましたが、賞をいただけうれしかったです」

天満さん 軽金属溶接協会賞


アルミニウムのフラックスフリーのろう付け向上
 軽金属学会の第143回秋期大会ポスターセッション(昨年11月12日、オンライン参加)で、天満郁実さん(先端材料工学専攻修士2年、小澤俊平研究室=写真)が小澤教授と連名で「アルミニウム合金製密閉構造体のフラックスフリーろう付におけるフィレット形状と酸素分圧の関係」を発表し、軽金属溶接協会賞を受賞した。
 自動車用熱交換器は、密度が小さく熱伝導性に優れたアルミニウム合金をろう付けして製造される。その際、表面に生じる酸化被膜の除去と再酸化防止のため、フラックス(はんだ付け促進剤)が使われるが、その残滓が電気自動車やハイブリッド車の電子部品を故障させる危険性がある。
 天満さんらは、還元性の高いマグネシウムを微量添加したブレージングシート(母材表面に、ろうを重ねた板)を用いてアルミ合金のフラックスフリーろう付けを行い、密閉構造体としたときのフィレット形成(溶融ろう形状)を検討した。
 その結果、密閉容積が小さい場合は内部フィレットが、密閉容積が大きい場合は外部フィレットが大きくなった。これは密閉内部での酸化に起因した酸素分圧の低下効果と、外部での気相生成反応に起因する表面酸素分圧の低下効果の競争によって、内外で溶融ろうの表面張力差が誘発されるためだと考察した。
 天満さんは「受賞できて光栄です。小澤先生や試料作製に協力してくれた後輩に感謝します」と語った。

大山さん 発表会で敢闘賞


スタンガンの性能に指針
 電気学会東京支部千葉支所の2022年度(第18回)研究発表会(昨年11月26日、オンライン開催)で、大山ゆりかさん(電気電子工学科4年、脇本隆之研究室=写真中央)が発表した「スタンガンの性能特性試験」が敢闘賞に選ばれ、1月17日、賞状が届いた。
 共著者に竹下佳佑さん=写真右、石川涼さん=同左(ともに同学科4年)と脇本教授が名を連ねた。大山さんらは脇本研で、高電圧工学・新エネルギーなどの研究に取り組んでいる。
 スタンガンは映画などに凶器として登場することもあるが、人体に悪影響を及ぼすほどの威力はない。大山さんらは人体にどれほど影響を与えるのか実験で具体的数値を出し性能評価の指針を示した。
 大山さんは「約1年頑張ってきたことが認められ、とてもうれしい。春から社会人ですが、自信がつきました。脇本先生の指導で分かりやすい表現に気をつけました」と語った。