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2023.1.15

コンクリート 松本さん 池田さん


配合・品質研究で優秀講演賞
 令和4年度土木学会全国大会の第77回年次学術講演会(昨年9月14〜16日、国立京都国際会館と京都大吉田キャンパスで開催、10月17日受賞者発表)で、松本修治さん(工学専攻博士後期課程1年〈鹿島建設〉、橋本紳一郎研究室)と池田信義さん(都市環境工学専攻修士2年、同)が優秀講演賞を受賞した。2人の発表論文と受賞の感想は次の通り。
●松本 修治さん
 「炭酸カルシウム微粉末を用いた高流動コンクリートの簡易な配合選定に関する一考察」
 締固めを行わない自己充填型の高流動コンクリート=ハイパフォーマンスコンクリートは、現在では一般的な技術となっているが、未だに高密度配筋部など特殊部位への使用に留まる。一方で省人省力化から高流動コンクリートの活用が見直されている。松本さんは、通常コンクリートの配合の細骨材・粗骨材の一部を炭酸カルシウム微粉末に置き換えることで、簡単に高流動コンクリートの配合を選定できることを示した。
 「大変うれしく思っています。将来の働き手不足に対し、締固め不要な高流動コンクリートを普及させることが最も効率的な対応。今後も研究開発を続けられればと思います」
●池田 信義さん
 「コンクリートポンプ工法におけるスランプフローコンクリートの管内圧力損失及び圧送前後の品質変化に関する一考察」
 コンクリートの流動性指標スランプフローで管理するコンクリートでは、圧送計画に必要な管内圧力損失や品質変化の影響範囲が示されない。
 池田さんは文献調査を基に、コンクリートの水平管1bあたりの管内圧力損失や圧送前後の品質の変化を調査した。
 その結果、管内圧力の損失はセメントと水の重量比W/Cが50%程度なら通常の圧送と同様に扱えることが示唆され、圧送に伴う品質変化の低下量の目安も算出することができた。
 「多数の参加者中で自分の発表が認められ、素直にうれしい。今後も精進を重ねていきたいと思っています」

山田さん、ABEMAが募集


サッカーW杯CMで最高賞
 未来型ネットテレビをうたうABEMA主催の広告クリエイティブ学生コンペ「渋杯−シブカップ−」(昨年8月25日から募集、11月1日結果発表)のCM部門で、山田涼晴さん(情報ネットワーク学科3年、中村直人研究室)が最高の金杯(ゴールデンカップ)賞を受賞した。
 コンテストは「FIFAワールドカップ・カタール2022」を全試合生中継したABEMAが開幕前、専門学校から大学院まで在学中の学生に募集。広告グラフィックとCMの2部門のうち、CM部門は出題されたメインコピー「すべてをみせるときがきた。」を解釈し、15秒で表現する内容。W杯や選手の素材使用はNG。
 山田さんは、見ている私たちに眠っていたパワーも、ワールドカップを見て一気にみなぎる様子を映像で描いた=写真。テンポ感を重視し、編集段階(ポスト処理)でカメラに動きを付けて、15秒という短時間でも変化を持たせたという。
 ビジュアルのインパクト、センスに優れ、審査員の1人・チーフプロデューサーは「W杯がやってくることを自分たちの世界観に落とし込み、若さという個性を生かした点で素晴らしかった」と講評。受賞作はABEMAのプロモーションに活用された。
 山田さんは、CM納品規定に沿うようプロの基準で制作することを心掛けたという。「受賞はとても光栄です。締め切り直前の2日間に短期制作したので撮影・出演・編集とすべて1人で作り上げましたが、挑戦してよかったと感じています。渋谷の野外ビジョンに自身制作のCMが出て、とても貴重な経験ができました」と喜んでいた。

加地さん学生優秀発表賞


モンゴル語の母音を研究
 日本音響学会の2022年秋季研究発表会(9月14〜16日、札幌市の北海道科学大で対面開催)で、加地優太さん(知能メディア工学専攻修士2年、竹本浩典研究室=写真)が「声道断面積関数の操作によるモンゴル語母音音韻特徴の検討」を発表し、学生優秀発表賞を受賞した。
 竹本研では人間の音声生成や音声合成技術を研究している。
 モンゴル語には方言で変わる母音が7、8種あり、男性母音、女性母音にグループ分けされる。同一グループの母音が1単語内で混在しない母音調和がある。
 母音は咽頭腔の広さでグループ分けされると考えられたが、音韻的予測やMRIでの計測にとどまり、咽頭が変化することによる音声への影響はよく分からなかった。
 加地さんは、モンゴル人女性の協力のもと、母音発話中の咽頭・口腔の形状それぞれを男性母音と女性母音で入れ替えた時の音声を生成。咽頭部分を入れ替えても音声の知覚が変化しなかったため、グループを分ける基準は咽頭に局在するわけではないことを明らかにした。
 拓殖大・内蒙古大・国立国語研究所との共同研究。事前知識がほぼゼロで苦労したが、他大学の先生や竹本教授の指導で筆頭著者として学会発表できたという。
 加地さんは「受賞など考えずにただひたすらやってきた研究なので、受賞するとは思いませんでした。とてもいい経験をさせてもらいました」と語った。

光学学会


瀧野教授が「上級会員」に
 機械工学科の瀧野日出雄教授=写真=が6月30日、光学・光工学の世界的学会OpticaからSenior member(上級会員)の称号を授与された。
 瀧野教授は材料の表面加工、「ナノやマイクロの微細形状を持つ表面」の創成技術を研究しており、今回、光学素子の精密加工など光学・フォトニクス分野での経験と業績、学会への貢献が高く評価された。
 Optica(Optical Society of America)は1916年に設立された。世界に約2万2千人の会員を抱え、ノーベル賞受賞者を41人輩出している。
 称号授与に瀧野教授は「Opticaは若いときから論文投稿や国際会議への参加、専門分科会の実行委員を努めたりして、思い入れのある学会です。栄誉ある称号を頂き、ありがたいと同時に、ご推薦頂いた国内外の学会員の方々にお礼を申し上げます。より一層、光学分野の発展に貢献できるよう努力します」と感想を寄せた。

細胞性粘菌で「進化」を研究


成田助教に学会学術賞
 生命科学科の成田隆明助教=写真=が日本細胞性粘菌学会に発表した「細胞性粘菌におけるポリケタイドシグナリングの進化発生学的解析」に対し、同学会は昨年10月9日の第12回例会(オンライン開催)で2022年度学術賞を授与した。
 細胞性粘菌とは、単細胞生物として土壌中で栄養を取り込み分裂・増殖し、飢餓状態では多細胞化・休眠することで生き抜く微生物。研究では、単細胞期と多細胞期という2つの生活様式をもつ細胞性粘菌に着目、細胞性粘菌が細胞内で合成している化学物質の機能解析をしている。
 特に、多くの細胞性粘菌種が共通してもつ酵素について、酵素が作り出す化学物質の役割を種間で比較することで、「生物は進化の過程でどのように多細胞性を獲得してきたのか?」という謎を生化学的に解明しようと試みている。
 受賞当日の記念講演では、DIF-1やMPBDという化学物質が、細胞性粘菌の種によって全く異なる生命現象を制御していることを明らかにしたと発表。これらは「日本細胞性粘菌学会に貢献する優れた研究成果」と称えられた。
 成田助教は「受賞を光栄に思います。細胞性粘菌を実験材料として『生命の進化』について(生化学的に)研究しているのは、国内では本学の細胞生化学研究室のみで、この点も大きく評価していただきました。今後も本学から基礎生命科学の研究分野へ大きく貢献していきたいと思います」とコメントを寄せた。