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2022.11.15

特殊椅子 fuRoと東大が開発


視聴でき“背中にも触感”
 未来ロボット技術研究センター(fuRo)は、東京大・先端科学技術研究センターが開発した椅子型触覚提示実験装置「TorsionCrowds(トーションクラウズ)」を基に、軽量型の展示用装置「Chainy(チェイニー)」=写真上=を開発した。チェイニーは東京スカイツリータウンキャンパスの展示スペースで12月18日までの土日祝日に一般公開している。同時公開中の巨大スクリーン展示「打ち上げ花火をデザインする」を、チェイニーに座ることで視覚と聴覚に加えて触覚を通じて楽しむことができる=同下
 開発したのはfuRoの大和秀彰副所長ら研究員。東京大先端科学技術研究センターの堀江新特任助教らがロボットや人工知能と“人機一体”で行動を支援する「JST ERATO稲見自在化身体プロジェクト」で開発した椅子型触覚提示装置「トーションクラウズ」の基盤技術を用いて作った。
 座面や背もたれにモーターを使った回転接触子を金属の輪で連結して「鎖化する」ことで面的に触覚を感じられるようにした点が特徴だ。
 fuRoの古田貴之所長は記者発表で「トーションクラウズ技術はとても可能性が高い。たとえばモビリティに触覚技術で情報を提示できる。通常の方法では走行中に刺激を与えても意外と分からないが、トーションクラウズだとビビッときた。『背中を指でネジネジされる』感覚。ぜひ体感してもらいたい」と強調。併せて「以前から展示していた花火の打ち上げ映像と組み合わせた。この技術とプロジェクトの楽しさや未来を感じてもらいたい」と語っていた。
 東京大先端科学技術研究センターの稲見昌彦教授は、「我々は人に寄りそう技術を開発してきたが、どうしてもプロトタイプ止まりで、論文で終わってしまうことが多かった。一方、fuRoはきちんと研究した技術をプロダクト化している。我々が開発した触覚を背中に提示できる技術を、fuRoにきちんと椅子のかたちにしていただいた」と連携の有用性を強調した。fuRoは今後も東大と連携を深め、研究を進めていくという。

デジタル変革期 千葉工大生に期待


産学懇談会に493社
本学志願者数などを報告する松井学長
本学志願者数などを報告する松井学長
 本学が企業と親睦を深め、学生の就職について情報交換する「産学懇談会」が11月2日、千葉市のホテルニューオータニ幕張で開かれ、昨年を上回る493社の人事・採用担当者が参加した。ロシアによるウクライナ侵攻や円安、物価高など外交・経済情勢が不透明感を増す中、ブランド力の向上著しい千葉工大生への信頼と期待が示された意見交換の場となった。
名刺交換会に詰めかけた企業の人事・採用担当者たち
名刺交換会に詰めかけた企業の人事・採用担当者たち
 産学懇談会は、第1部・講演会、第2部・名刺交換会の2部構成で行われた。本学からは瀬戸熊修理事長、松井孝典学長をはじめ、教職員らが総出で企業の人事・採用担当者らに対応した。
 松井学長は冒頭のあいさつで、本学が今春の入学試験で13万9千人を超える志願者を集め、全国の大学の中で近畿大に次ぐ2位の志願者数だったことを報告。一方、卒業後の就職は2021年度、94・1%の就職率となった。卒業生2000人以上の実就職ランキングで全国3位となり、毎年高い就職率を維持し続けていることを報告した。
 本学の研究活動については、創造工学部デザイン科学科の松崎元教授が「人を笑わせ、そして考えさせる研究」に贈られるイグ・ノーベル賞「工学賞」を受賞したことを紹介した。そして、現在、社会が求めている工業人材とは「未開拓の分野に、新しいプロジェクトを考案し、それを設計し、作り上げることができる『アーキテクト』と呼ばれる人材だ」と強調。今年、本学が創立80周年を迎えたことを報告した上で、「世界文化に技術で貢献する」という建学の精神を羅針盤として「今後ともアーキテクト人材の育成に務め、社会に貢献していく」と語った。
 教育方針については「学生の目線に立ち、学生の身に寄り添い、来たるべき時代に技術革新を担えるよう、必要な実践力を学生が身につけることができるよう日々学内の改革を教員と職員が一丸となって実行していく」と述べ、「採用では本学の学生をよろしくお願いいたします」と締めくくった。
 続いて、第1部ではゲストスピーカーとしてジャーナリストの櫻井よしこ氏が登壇。ウクライナ侵攻後の世界情勢について触れ「米国のインテリジェンスの情報によれば、台湾海峡有事は極めて近しいと言うことです。台湾海峡有事は日本有事でもある」と強調した。その上で、「米国との連携をきちんと固めながらも、日本独自の技術、力というものを持たないと中国に飲み込まれてしまう。一方で、今までとは違う世界規模での変革が起きている。この変革の波にうまく乗ってその変革の波をリードするような日本でなければ潰れてしまう」と警鐘を鳴らした。
 続いて、本学変革センターの伊藤穰一センター長が「web3がもたらす社会変革」を講演した。その中で「(インターネット上で)ブロックチェーンという新しいレイヤー(階層)が出てきたことで、新しい産業が生まれてくる」と強調。
 岸田文雄政権が新しい資本主義を提唱していることで、スタートアップやベンチャー支援、デジタル田園都市国家構想などの政策実現にweb3を役立てようとしていると解説した。
 その上で、「日本は官民挙げてweb3の世界に入っていこうとしている。そして投資家目線ではないweb3をきちんと作ろうとしている。Web3が本当に世の中にとっていいことなのか、どういうルールをつくればいいのかという議論をやるべきだ。そのタイミングが今」と強調。「1990年代以来、新しい技術にワクワクしているので、皆さんも検討してください」と語った。
 第2部では企業と本学の各学部・学科の就職担当教員との間で名刺交換会が行われ、各学科のブースの前には企業の参加者らが長い列を作った。一段と進むDX(デジタル・トランスフォーメーション)など社会変革の流れを受けて、企業が求める学生の所属学科(専攻)は多岐にわたる。各企業の事業内容も業種の垣根を越えて変化しつつあることを背景に、会場では名刺交換を通じて熱心な質疑応答が交わされた。
名刺交換で熱心に質疑応答
名刺交換で熱心に質疑応答
企業へ強いメッセージ
 参加企業側からは櫻井氏、伊藤センター長の講演に対し、「最先端のお話を聴くことができ、大変勉強になった」「我々企業の人事に対して強いメッセージだったと感じている。肝に銘じて日々の職務に邁進いたします」などのコメントが寄せられた。
 本学の上杉千佳部長(就職・進路支援部)は「企業の採用意欲は継続しており、2023年3月卒業生の求人も多数いただいた。また、情報系人材は、IT企業だけでなくさまざまな業界から求人が寄せられている。理系の皆さんの活躍の場は広がっている。自律的なキャリアの選択をするために、充実した大学生活を送ってほしい」と話した。