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2022.11.15

変革センターが共催 「朝日教育会議」


web3で変わる社会
 千葉工業大学と朝日新聞社共催の「朝日教育会議2022」が10月23日、「web3がもたらす社会変革」をテーマに都内の会場=写真上=とインターネット・ライブ配信で同時開催された。第1部では本学変革センターの伊藤穰一センター長が基調講演、「web3は、技術やガバナンスの面でまだ多くの問題を抱えているが、多くの可能性を秘めている」と強調、偽造や改ざんが難しいブロックチェーン技術を活用した「分散型webの世界」と定義されるweb3時代の推進に意欲を示した。
伊藤センター長ら 「分散型」に期待示す
 朝日教育会議は、朝日新聞が2019年から全国の大学と共催している教育フォーラム。直面する社会的課題を議論し、大学から広く発信することを目的にしている。
 この日は第1部に続いて、第2部で東京藝術大准教授のスプツニ子!氏がデジタルアートの未来について講演。第3部では、伊藤センター長とスプツニ子!氏が参加してパネルディスカッションが行われた。進行は小林哲朝日新聞科学みらい部部長代理が務めた。
 今年は岸田文雄首相が「新しい資本主義」の文脈でweb3を語るなど急速にweb3という単語が社会に浸透しつつある。ブロックチェーンほかの暗号技術を使い、決済などの取引を1本の鎖のようにつなげて記録する社会を指しており、「情報を個々人が分散管理する」時代。伊藤センター長によれば、web3は「分散的=非中央集権的」で、①オープンとグローバルな標準化②透明性③プログラム可能なスマートコントラクトとDAO(分散型自立組織)――が実現する社会という。
 例えば現在は、土地を買うと公証役場や銀行、弁護士、会計士などが間に入った上での契約とお金の移転が必要だが、ブロックチェーンを使った「スマートコントラクト」だと「お金が入金されたら鍵を渡すというプログラムをすることで、弁護士や会計士、銀行などがいらなくなるだけでなく、契約手続きの簡素化も可能になる」と説明した。また、自分が所有しているトークン、たとえばNFT(非代替性トークン)などもすべてブロックチェーン上に記録されるので、改ざんや詐欺も防止できるという。
 web3については、国の規制のあり方についても議論されている。伊藤センター長は「本当に役に立つのかどうかというのは国民と政治家が議論しなくてはならない。その議論の後に国はルールを決めるべきで、役に立つかどうかはまずやってみなくては分からない」と語り、現段階で厳格なルールを決めてしまうことがないよう警鐘を鳴らした。
表現の新しいキャンバスに スプツニ子!氏
 第2部で講演したスプツニ子!氏は冒頭、自身が制作した「ムーンウォーク☆マシーン」のNFTアートが昨年開催された日本初のNFTオークションで最高額で落札された体験などを紹介。「NFTは革命。web3の可能性に気づいた時は興奮して2日くらい眠れなかった」と語った。
 その上で、これまで芸術品はモノとしての売買でしか価値が認められづらかったが、ブロックチェーン技術を使ったNFTによってデジタル作品が売買される時代になったと解説。「NFTはアーティストの新しいインフラであり表現の新しいキャンバスになる」と講演を締めくくった。
 第3部のパネルディスカッションでは、伊藤センター長は「社会変革の流れと技術革新が同時に起こっているので、web3は非常に面白いタイミング」と強調。スプツニ子!氏は「web1は情報が滑らかになった時代。web3は資産や価値が滑らかになる時代」と比喩的に表現。「web3はワクワクもするけど、私はそういう時代に溶け込むタイプ。未来の可能性は未知数だらけ。ワクワクもするし、どっちにいくか、分からない時こそ、そこに飛び込んで理解することで、より良い方向にweb3やNFTが使われるようにしたい」と語った。
スプツニ子!氏 伊藤センター長
スプツニ子!氏 伊藤センター長
■web3時代
 web1はブラウザ(閲覧ソフト)を使ってインターネットを利用した時代。今のweb2時代はSNSと呼ばれるソーシャルメディアの時代だが、グーグルやアップルなどのプラットフォームを経るので、巨大ハイテク企業が個人情報や利益を独占する時代でもある。
 次世代インターネットとされるweb3は、ブロックチェーン技術などにより「情報を個々人が分散管理」し、巨大企業が情報を独占できなくなる時代とされる。

伊藤センター長・学生たちと


近未来技術を語る
web3時代の技術を学生たちに説明する伊藤センター長
web3時代の技術を学生たちに説明する伊藤センター長
 学部3・4年生と大学院生を対象に、変革センター・伊藤穰一センター長とのトークセッションが11月10日午後、津田沼校舎2号館3階大教室で開かれた。
 伊藤センター長は、近い将来、私たち人類になくてはならない技術と考えられているweb3やメタバース、NFT(非代替性トークン)について「これらの技術と実際に共生していく学生たちと直接、ディスカッションする場が重要」と、楽しみにしていたという。
 当日は伊藤センター長がミニ講義した後、参加学生たちとフリートークが展開された。
 伊藤センター長の著書「テクノロジーが予測する未来」(SB新書発行)を読んでいることが参加条件だったが、近未来を変革する技術を肌で感じたい学生たちが多く参加し、活発な質問や討議が繰り広げられた。
 学生たちは「有意義な時間だった。今後もこのような機会を望みます」「web3の可能性を改めて感じました。学科を超えたプロジェクトに期待します」などと意欲的な感想を寄せた。