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2022.10.15

民主主義の大切さ説く


チベット主席大臣が講演
 中央チベット政権(CTA)のペンパ・ツェリン主席大臣が初来日し9月22日、津田沼キャンパス2号館3階大教室で「国際社会におけるチベットの立場」と題して講演した。会場には学生・教職員約300人が集まり耳を傾けた。CTAはダライ・ラマ法王のチベット亡命政権の正式名称。
 ツェリン氏は中国政府とチベットの関係などについて現状を説明し「自由は当たり前と思ってはいけません」と、民主主義の大切さを訴えた=写真
 ツェリン氏は「黄河や揚子江、メコン川、インダス川などアジア地域を流れる多くの河川はチベットが源流。チベットの気候変動の問題はチベットだけでなく、アジア地域の約18億人が直接、間接に影響を受ける」と述べ、水の安全保障が重要な問題と説明した。
 質問タイムで、チベット出身の留学生テンジン・ツンデュさん(マネジメント工学専攻修士1年)が「チベットと日本の関係をさらに強化することについてどうお考えですか」、藤井日南子さん(情報通信システム工学科4年)が「チベットの文化で1つ、日本の人々と共有したいなら、どんなことがありますか?」と英語で質問すると、大臣は2人の質問に丁寧に答えた。
 講演後、本学に留学中のチベット学生らと懇談。その後、随行員とともに1号館20階に場所を移し、未来ロボット技術研究センター(fuRo)の清水正晴上席研究員から、災害対応ロボットや車いす型パーソナルモビリティー、ILY-A、CanguRoなどについて説明を受けた。デモンストレーションでは、自ら搭乗して操縦体験し、最先端技術の今後に期待を述べ、研究員たちに激励の言葉をかけた。

橋本研の渡邉さん、松本さん受賞


コンクリート改良を追究
 日本コンクリート工学会の年次大会2022(7月13〜15日、オンライン開催)で、年次論文集44巻に査読審査を通過し投稿された論文・講演の結果が発表され、都市環境工学科・橋本紳一郎准教授の研究室の渡邉大河さん(都市環境工学専攻修士2年)と松本修治さん(工学専攻博士後期課程1年、鹿島建設在籍)がともに年次論文奨励賞を受賞した。同賞は全国の40歳未満の若手研究者が対象で、全451件の講演の中から、上位1割に授与された。2人の発表内容と受賞の感想は次の通り。
渡邉 大河さん
 「石炭ガス化スラグ細骨材を用いたコンクリートのフレッシュ性状に関する検討」
 コンクリートは骨材不足から産業副産物の有効利用が求められており、中でも石炭ガス化複合発電で副生される石炭ガス化スラグの利用拡大が見込まれている。だが、石炭ガス化スラグを用いたコンクリートの性状は明確となっていない。渡邉さんは、石炭ガス化スラグの細骨材を用いたコンクリートの、練り混ぜ直後から硬化前までのまだ固まっていないコンクリート(フレッシュ性状)を調べ、施工性確保に適した石炭ガス化スラグの使用割合と配合条件の関係を明らかにした。
 「論文と講演を評価していただき、院生での受賞も3団体目で光栄です。橋本先生や共同研究先の方、研究室仲間、支えてくれる家族に感謝したいです」
松本 修治さん
 「汎用締固め不要コンクリートにおける新規の粉末分散剤と新たな充填性評価手法に関する検討」
 締固め不要の高流動コンクリートは高価だ。価格の大半を占めるセメントを減らすと、流動性に対し材料分離の抵抗性が不足する。松本さんはそれを細骨材中の微粒分量で補う方法を検討。さらに、各地域の生コンクリート組合の価格設定の仕組みから、最も安価な方法として、現場で混和剤を生コン車に添加して製造する方法に着目し、新しい混和剤を開発し実用化を図った。
 「2016年度からコツコツと継続してきた研究を認めてもらえ、うれしく思っています。博士論文として完成させたいと考えています」

前田さん優秀ポスター賞


機械学習“汎化能力への影響”を検証
 2022年電気学会電子・情報・システム部門大会(8月31日〜9月3日、広島県東広島市の広島大・東広島キャンパス会場とオンライン併用で開催)の学生ポスターセッションで、前田悠希さん(情報科学専攻修士2年、山口智研究室)が「畳み込みニューラルネットワークにおける複数層へのDropout適用と適用層の違いによる汎化能力への影響」を発表し、優秀ポスター賞を受賞した。
 前田さんは山口研で、機械学習の研究に従事している。
 ニューラルネットワークの性能(“汎化能力”)に影響を与えるDropoutに着目し、この手法の適用と適用層の違いによるネットワークへの影響を検証した。
 受賞に対し「素晴らしい賞をいただき、うれしく感じております。山口教授や情報工学科の先生方、発表の準備をサポートしてくれた学友に感謝します」と語った。

電気学会部門大会で


佐藤研2人 優秀論文発表賞
 2022年電気学会産業応用部門大会ヤングエンジニアポスターコンペ(YPC) は8月30日〜9月1日、都内千代田区の上智大・四谷キャンパス会場とオンラインを併用して開かれ、機械電子創成工学科・佐藤宣夫教授の研究室の松井五月さん(同創成工学専攻修士1年)と長嶋一真さん(同)がYPC優秀論文発表賞を受賞した。
 2人は佐藤研で、太陽光発電システムに関する要素技術の開発などに携わっている。発表内容と受賞の感想は次の通り。
松井 五月さん
  「観測データを用いたSiCプレーナ型MOSFETの数値計算モデルの検討」
 電力変換技術のキーデバイスの1つ・SiC(炭化ケイ素)製パワー半導体は性能向上や省エネ化が要求されるが、内部構造が複雑化し故障の解明や性能限界の見極めが難しくなっている。松井さんらはSiC―DMOSFET(スイッチング速度が速く変換効率が高いトランジスタの1種)について性能の数値計算モデルを検討した。
 「とてもうれしく思います。研究室メンバーをはじめ、多くの方々にご協力いただいた結果で、感謝を伝えたいです」
長嶋 一真さん
 「ダウンコンバージョン法と電流経路可視化技術によるアルミ電解コンデンサの定量劣化評価に向けた一検討」
 現状では、非接触でのアルミ電解コンデンサの劣化評価は困難だ。長嶋さんはアルミ電解コンデンサの劣化(静電量量の低下)により分流比が変化することに着目し、電流経路可視化技術を用いることを提案。また、磁気センサの感度と周波数応答特性は両立して測れないが、ダウンコンバージョン法を応用して、磁気センサの感度を保ったまま周波数応答特性を向上させ、高い周波数帯での測定も可能にした。
 研究中はほぼ毎日1時間、先輩と公園で研究の話をしながらキャッチボールしてストレス管理。アイデアが浮かび、楽しく研究できたという。
 「大変光栄です。親や先輩、教授をはじめ皆様のご支援の賜物です。これに満足せず精進したいです」

位置推定技術で 鈴木上席研究員


国際コンペ連覇
 オンライン上の「Kaggle」を舞台に車両位置推定の精度を競う国際コンペ「Google Smartphone Decimeter Challenge 2022、7月30日」で、未来ロボット技術研究センター(fuRo)の鈴木太郎上席研究員=写真=が、昨年に続き1位を獲得。さらに陸・海・空・宇宙のナビゲーションを専門にする世界的組織IONの国際会議(9月22日、米コロラド州デンバー)に招かれ、連覇した技術について発表し、ベストプレゼンテーション賞を受賞した。
 Kaggleは、世界中のAIエンジニアが、企業や政府から出題される課題に対し精度を競うコンペ。2017年にグーグルが買収。情報科学、統計学、経済学、数学などの分野から100万人以上が登録している世界最大のプラットフォームだ。
 コンペではスマートフォンのGNSSデータ(GPSを含む衛星測位データ)などのセンサーデータから車両位置を推定し、デシメートル精度(1メートル以下の位置推定精度)を目指す。スマホの高精度な位置推定が実現すれば、位置情報を利用したゲームや車のナビの高度化などが可能になる。
 今回も米国サンフランシスコ、ロサンゼルス周辺を走行した車両のダッシュボードに置かれた複数のスマートフォンのログが提供され、緯度、経度の割り出しを競った。今年度は571チーム(1チーム最大5人まで)が参加。鈴木上席研究員は昨年同様、個人で参加し、連覇した。
鈴木上席研究員の話
 昨年優勝しており、非常にプレッシャーがありました。私の研究テーマであるロボットの位置推定技術にも応用できる新知見が得られ、有意義でした。最終スコア(位置推定精度)が、1.2メートルで、目標のデシメートルにあと少しで到達できなかったことが残念です。継続して研究を進めていきます。