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2022.1.15

齊藤研の渡邉さん、村上さん


統計分析コンペで特別賞
 発表された地域別統計(SSDSE=教育用標準データセット)を用いて、データをどう読み解くか、分析のアイデアと解析力を競う「第4回統計データ分析コンペティション」(総務省統計局、統計センター、統計数理研究所、日本統計協会など共催)は昨年5〜8月にオンラインで募集され、渡邉晃大さん=写真左=と村上竜之介さん=同右(ともに知能メディア工学科4年、齊藤史哲研究室)の「自治体間の人口流動性を考慮した潜在的な人手不足の可視化」が大学生・一般部門の特別賞(統計分析)を受賞した。
 10月18日に受賞論文が発表された。
 2人は近年、都市部に人口が集中し、地方人口は減少していることに着目し、人手不足で衰退の可能性がある地方産業の業種と地域の関係を可視化することに挑戦した。
 都市部への人口集中の原因特定や、対策の糸口発見を目的にデータを解析。機械学習手法〈非負値行列因子分解〉で因子情報を抽出し、結果を把握しやすいよう、分解された行列の重みを都道府県別に彩色して、データの特徴を可視化した。
 課題を決めるまで調査や議論を繰り返した。変数操作や前処理の作業が大変だったという。
 論文審査会の講評では「分析手順はシンプルで分かりやすく、結果も大変興味深いものが出ている」とされた。
 渡邉さんらは「人生初の学術研究への取り組みで、至らない点があり、受賞できるか心配でした。特別賞をとてもうれしく思います。サポートしてくれた齊藤先生に感謝しています」と語った。

長瀬研の前島さん


光コネクタで若手研究者賞
 IEEE(米国電気電子学会)のエレクトロニクス実装技術部門が主催する国際会議「第10回シンポジウムジャパン(ICSJ2021)」は昨年11月10〜12日、「5GおよびB(ビヨンド)5G用のエレクトロニクスパッケージング」をテーマに、会場とZoomの両方式で開かれ、前島寿紀さん(機械電子創成工学専攻修士2年、長瀬亮研究室=写真)の「Connection Characteristics of Hollow-Core Fiber Connector(中空コアファイバー用光コネクタの接続特性)」がEarly Career Researcher Session Award(若手研究者部門賞)に選ばれた。11月12日、京都大の百周年時計台記念館で授賞式が行われた。
 光ファイバーで、将来の大容量伝送を担う候補として中空コアファイバー(HCF)が注目されている。HCFは多くの利点がある半面、内部構造が壊れやすいため、従来の物理接触型の光コネクタは使用できない。
 前島さんらは、HCF用の新しい光コネクタを開発する世界初の取り組みに挑戦。今回、試作した光コネクタが、通信ネットワークで利用できる接続特性を発揮した、と報告した。
 国際会議で関係者が興味を持って議論してもらえるよう、英語のプレゼンとポスター表現に工夫したといい、前島さんは「会場で多くの方にご評価いただき光栄に思います。支えてくださった長瀬教授や研究室の皆さん、関係企業の研究者に感謝の気持ちでいっぱいです」と述べた。

山口研の飯沼さん


ESN研究で最優秀論文賞
 計測自動制御学会システム・情報部門の学術講演会(SSI2021=昨年11月20〜22日、オンライン開催)で、飯沼貴大さん(情報工学科4年、山口智研究室=写真)を筆頭著者に、山口教授と信川創准教授の3人連名で発表した「多次元入力下でのEcho State Networkの応答特性」が、SSI最優秀論文賞を受賞した。
 Echo State Network(ESN=エコーステイトネットワーク)とは、電算機による機械学習を、脳の神経回路の一部を模した数理モデルで行うもの。先行のディープラーニングに比べて学習効率が非常に高く、世界で研究されているが、空間的な多次元入力に対しては性能劣化が問題となっていた。
 論文では、未研究だった高次元入力下のESNの応答特性を調査。高次元入力下では従来法とは異なるパラメータ調節が必要なことを示し、問題解消のための対策法を複数考案し、効果を示すことに成功した。
 学術論文の記述に慣れず、序論や考察部分の執筆では何回も推敲を繰り返し、1カ月かけて完成させた。当たり前ながら読み手に誤解なく分かりやすく伝えることが最も大切、と感じたという。苦労が報われ、150件以上の応募論文中、頂点に選ばれた。
 飯沼さんの話 卓越した人工知能研究者の山口教授と、非線形神経ダイナミクスの研究者・信川准教授のご指導で初投稿した論文が認められ、大変光栄で、自信につながりました。今後も頑張りたいと思います。ご指導いただいた他の情報工学科の先生方にも感謝します。

清宮、殿岡、広瀬、下村さん


小澤研の4人が受賞 毛利ポスターセッション
(左から)広瀬さん、清宮さん、下村さん、殿岡さん
(左から)広瀬さん、清宮さん、下村さん、殿岡さん
 微小重力環境を利用した材料科学などを研究する日本マイクログラビティ応用学会の第33回学術講演会「毛利ポスターセッション」は昨年10月13日、オンラインで開催された。毛利衛宇宙飛行士らが審査した結果、清宮優作さん(先端材料工学専攻博士1年、小澤俊平研究室)が優秀賞、殿岡和己さん(同修士1年)と広瀬圭吾さん(先端材料工学科4年)が奨励賞、下村健太さん(同)が敢闘賞に決まり、10月14日、ライブ配信で授賞式が行われた。
 小澤教授の研究室では、材料を空中に浮遊させる電磁浮遊法やガスジェット浮遊法を駆使して表面張力などの高精度熱物性計測や、新材料開発に関する研究を行っている。4人の発表論文と受賞時の感想は次の通り。
清宮 優作さん
 福島原発のメルトダウン処理のために必要なジルコニウムについて研究し、「ジルコニウム融体の表面張力に対する雰囲気ガスの影響」を発表。
 (英語によるポスター発表で)文字サイズや図の色使いを工夫し、研究分野の違う人にも理解してもらえるよう心掛けた。
 「受賞できて、大変うれしく思います。満足せずに今後も自分の研究に努めていきたい」
殿岡 和己さん
 高温蓄熱材として期待されるFe-Cu合金について、「電磁浮遊法を用いたFe-Cu融体の表面張力測定」を発表。
 「オンラインでのポスター発表は初めてで戸惑いましたが、受賞できてうれしく思います、今後の励みになりました」
広瀬 圭吾さん
 新しい半導体材料開発に必要なゲルマニウムについて、表面張力を精密測定して「Ge融体の表面張力に及ぼす表面酸素分圧の影響」を発表。
 概要の英訳や、分かりやすくポスターにまとめることが大変だったという。
 「毛利先生から授賞される機会をいただき、非常にうれしく思います」
下村 健太さん
 高性能デバイス材料として期待される希土類酸化物の結晶成長条件について、「六方晶Dy Mn O3相における雰囲気酸素分圧とトレランス因子(TF)の関係」を報告。
 内容を簡潔に、かつ英文でどう表現するかに苦労した。
 「初めてこのような賞を頂け大変うれしく思います。小澤先生と栗林一彦先生(附属研究所客員研究員)には多くの指導をいただき感謝しています」

橋本研の渡邉さん


コンクリート 品質評価研究で優秀講演賞
 土木学会の第76回年次学術講演会(昨年9月6〜10日、オンライン開催)で、渡邉大河さん(都市環境工学専攻修士1年、橋本紳一郎研究室=写真)が発表した「締固めを必要とする高流動コンクリートの材料分離抵抗性評価に関する基礎的研究」が優秀講演賞を受賞し、10月8日付で賞状が贈られた。選出は全国の若手研究者や技術者を対象に行われ、本学では唯一の受賞となった。
 橋本准教授の研究室では、コンクリートの施工性や耐久性に関する研究をしている。最近のコンクリート構造物は阪神淡路大震災を機に鉄筋量を増加して耐震性を確保する傾向にある。これに伴う施工不良の改善策として、流動性を増した「締固めを必要とする高流動コンクリート」が検討されている。
 このコンクリートは従来のコンクリートよりも困難な施工が可能になる一方で、粘性が低いため振動締固め時に材料分離を生じやすく、分離抵抗性を定量的に評価する手法は確立されていない。
 渡邉さんらは、使用材料や配合条件を要因に試験方法を検討した結果、骨材品質の違いが材料分離抵抗性の評価に影響を与えることを確認し、材料分離の適切な評価に有効な試験の組み合わせを示した。
 コロナ禍で思うように実験できない分、実験計画を万全にし、研究室仲間の協力も得てデータをまとめることができた。
 渡邉さんは「初の学会発表で緊張しましたが、評価され、うれしい気持ちでいっぱいです。橋本先生や協力企業、研究仲間、家族に感謝しています」と語った。