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2021.10.15

松井館長の「空宙博」


シアトル航空博と協定
 本学の松井孝典学長が館長を務める岐阜かかみがはら航空宇宙博物館(愛称・空宙博=そらはく)が9月15日、アメリカのシアトル航空博物館とパートナーシップ協定を締結した=写真
 締結式はオンラインで開催され、松井学長は「シアトル航空博物館は、民間としては世界最大規模の航空宇宙博物館で、数多くの展示機体もさることながら教育プログラムにも力を入れており、学ぶべきことは非常に多い。できるところから双方の魅力を高め合い、発信する取組みを実現していきたい」と話した。
 空宙博側は松井館長をはじめ古田肇岐阜県知事と浅野健司各務原市長が出席。シアトル側はマット・ヘイズ館長、マシュー・バシェット博物館上級学芸員、ボブ・ハセガワワシントン州上院議員、稲垣久生在シアトル日本国総領事ら。また、両館のつなぎ役となったボーイング社を代表しウィル・シェイファー ボーイングジャパン社長がセレモニーを見届けた。

鈴木上席研究員 コンペで


位置推定技術で世界一
 Googleが主催し、世界のAIエンジニアたちが国際コンペのプラットフォーム「Kaggle」上でデータ分析技術を競う「Smartphone Decimeter Challenge(スマートフォン・デシメートル・チャレンジ)」(オンライン開催)は5月半ばから2カ月余かけて開かれ、8月7日、未来ロボット技術研究センター(fuRo)の鈴木太郎・上席研究員=写真=の1st Place(優勝)が決まった。
 コンペは、スマートフォンのGNSSデータ(GPSを含む衛星測位データ)などのセンサーデータから、車両位置を高精度に推定するもの。
 米国サンフランシスコ周辺を走行した車両のダッシュボードに置かれた複数のスマホのログが提供され、正しい位置情報(緯度、経度)を予測する。高精度なスマホの位置推定が実現すると、位置情報を利用したゲームのユーザーエクスペリエンスの向上や、車線レベルの位置検出とナビの高度化などが可能になるという。
 最終的に810チーム(最大5人までチームを組める)が参加した中、鈴木上席研究員は個人で参加し、車両位置の推定に抜群の成績を挙げた。
 鈴木上席研究員は「コンペは私の専門に非常に近い内容だったため、負けられない思いが強かった」という。
 優勝者はアメリカで開催されるION GNSSという学会で、手法について講演することが求められるといい、「準備が大変ですが、自身の研究であるロボットの位置推定技術にも応用できる新しい知見が得られ、非常に有意義なコンペでした」と語った。
 Kaggleは世界最大のオンライン・コンペのプラットフォームで、情報科学、統計学、経済学、数学などの分野から世界で約9万5千人のデータサイエンティストが登録。2017年にGoogleに買収された。

キャンパス再生 設計で


石原教授ら農水大臣賞
 森林国・日本の木材の新しい可能性を探る第24回木材活用コンクール(日本木材青壮年団体連合会主催、昨年末から今年1月に作品募集)で、本学建築学科の石原健也教授(総括設計者)と建築家の西田司氏(意匠設計主任)、本学OBで非常勤講師の一色ヒロタカ氏らが設計共同体として設計した「大分県立芸術文化短期大学キャンパス再整備(第1期)」が最優秀賞(農林水産大臣賞)を獲得した。
 表彰式はコロナ禍のため7月18日にオンラインで行われた。
 手掛けたのは大分市にある公立大キャンパスの再整備。「新たな学びの場を、分散的にキャンパス内へ埋め込む」をテーマに据え、雲状木屋根構造(相互依存的構造)による屋根を、緩やかな起伏のあるランドスケープの中で一体化する提案で、2016年の公開プロポーザルで最優秀賞を獲得して実現したプロジェクト。
 本賞の審査では、比較的安価な一般流通製材を複雑に組み合わせた屋根が、形を変えながら複数の棟の室内外に用いられ、キャンパスの一体感が生み出されていること、また、鉄骨とのハイブリッドの手法などが高く評価された。
 コンクールには114作品が応募した。3月7日の最終審査会で、最優秀賞2種のうちの1つの受賞が決まった。
 石原教授は「プロポーザルからの4年間、西田さん、一色さんなどの建築家、世界的技術コンサルタント会社Arupの徳渕正毅氏をはじめとするエンジニアとの協働が実を結びました」。
 一色氏は「千葉工大で培った知恵や技術をもとに石原先生と協働した仕事が、社会的な評価を得られたことをうれしく思います」とコメントを寄せた。
受賞作の構内
受賞作の構内
石原教授(左)と一色氏
石原教授(左)と一色氏

信川准教授らが成果発表


ADHD治療に数理手法
 注意欠如多動症(ADHD)を数理モデルで解析している信川創・情報工学科准教授=写真=と東邦大、福井大などのチームは9月7日、カオス共鳴機構を利用してADHDで起きる神経活動の乱れを即応的に正常化するアルゴリズムを開発し、シミュレーションで効果を確認した、と発表した。新たな手法として臨床への応用が期待されている。
 研究には兵庫県立大、高知大、金沢大、魚津神経サナトリウムの研究者も参加。成果は学術誌Frontiers in Computational Neuro scienceの電子版に9月1日付で掲載された。
 ADHDでは現在、心理社会的治療、薬物治療のほか、脳波を用いたニューロフィードバック法が一定の効果を得て注目されている。脳波などの脳機能画像法で得た神経活動情報をリアルタイムに脳にフィードバックし、徐々に神経ネットワークの変化を促すものだが、神経ネットワークに変化が現れるまで数十日の訓練が必要とされる。
 脳活動は刻々、生成される神経活動のゆらぎ(カオス)を利用して活動している。多くの精神疾患では、前頭野から感覚野への神経経路の結合が弱まり、ゆらぎの最適化が十分に機能しない状態となっていると考えられ、実際にシミュレーションモデルで生成された挙動は、ADHD患者の注意機能障害と高い整合性を示すという。
 信川准教授らは、このゆらぎの制御法である軌道領域減少法 (RRO法) を適用して感覚刺激入力を数理的に生成。その刺激を前頭野に入力することで、「カオス共鳴」と呼ばれる時間的に不規則挙動の少ない状態に遷移させ、正常な神経ダイナミクスを実現できることを確認した。
 このニューロフィードバックの新手法によれば、長期訓練を要さず即応的に神経活動の乱れを正常化できる道が開けそうという。
 信川准教授らは、先に診断分野で、瞳孔径からADHDを推定する解析アルゴリズムを発表しており、今回は治療で神経ネットワークの数理モデルを駆使した新手法を提案したものと評価されている。
 大脳視覚処理の数理モデル研究では、信川准教授は東邦大の我妻伸彦・情報科学科講師と共に、日本神経回路学会から9月23日付で最優秀研究賞を受賞している。

実験動物の慰霊祭開く


 実験動物の2021年度慰霊祭が9月24日、津田沼校舎5号館6階の会議室で行われた=写真。教育研究に貢献してくれた実験動物を供養するために、毎年開かれている。
 式典では、佐波孝彦副学長をはじめ、教職員、学生らが参列し、順番に献花して動物たちに感謝と哀悼の意を捧げた。
 本学は、科学技術の発展が実験動物の尊い犠牲の上に成り立っていることを再認識し、強い倫理観を持って教育・研究を進めていきたいとしている。