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2019.12.15

へき地医療に未来車


4人チームがデザイン賞
 電気自動車普及協会の「国際学生EVデザインコンテスト2019」は10月27日、東京都江東区の東京ビッグサイトにファイナリスト10チームを集めて最終審査が行われ、嘉部晴章さん(デザイン科学専攻修士1年、佐藤弘喜研究室)、高澤省吾さん(同、赤澤智津子研究室)、中村裕一さん(同、八馬智研究室)、佐藤海斗さん(デザイン科学科3年、佐藤弘喜研究室)の4人チームが提案した「へき地における医師や病院不足を解消する未来のモビリティー」=下図=が、グランプリなど7賞中のカーデザインアカデミー賞を受賞した。
 自動運転で巡回する医療車をデザインしたもので「nofa」と命名。NofaではMRI、心拍血管センサー、聴診器による診察を誰でも手軽に受診でき、地域のかかりつけ医のような存在を目指す。
 公共の診察車なので、親しみやすいデザインにした。スタイリングにまだ納得できず改善していきたいという。過疎地医療の問題は海外の国々でも重要になると予想され、テクノロジーとアイデアで解決を図ろうとした点が評価された。
 4人を代表した嘉部さんは「受賞はうれしいです。著名デザイナーたちを前にしてのプレゼンに緊張しましたが、よい経験になりました。多くの方にご指導いただき、自身の成長を感じることができました。このチームで参加できてよかったと思います」と喜んだ。
(左から)高澤さん、嘉部さん、佐藤さん、中村さん
(左から)高澤さん、嘉部さん、佐藤さん、中村さん

車椅子女性用に礼服


嘉部さん 優秀賞
 日本デザイン学会の2019年度秋季企画大会(11月9〜11日、山形市の東北芸術工科大で開催)・学生プロポジションで、嘉部晴章さん(デザイン科学専攻修士1年、佐藤弘喜研究室)が「女性車椅子ユーザーのためのフォーマル服」=写真=をポスター発表し、優秀賞を受賞した。
 車椅子を使う女性について“座り姿を美しく”をコンセプトにフォーマル服を提案した。猫背がちになってトップスにシワが寄り、だらしなく見えてしまう▽腕や足が貧相に見える▽トイレでスカートを汚してしまう――などの点をデザインで克服。褥瘡や着脱しやすさにも配慮した。
 車椅子を使わず、洋服のデザインも知らない自身が、女性服で配慮したい点を洗い出すのは、予想以上に難しかったという。
 福祉の問題は健常者には気づきにくいことが多く、あえてそこに取り組んだことが評価された。
 嘉部さんは「優秀賞をいただけて非常にうれしく思います。制作に協力していただいた方々に感謝します。今回得られた意見などを参考に、よりよい物になるよう努めていきたいと思います」と語った。

障害児に居場所を


佐藤さんに発表奨励賞
 日本インテリア学会の第31回大会(10月26、27日、広島市の広島工業大で開催)で、佐藤里咲さん(デザイン科学科4年、橋本都子研究室=写真上)が「小学校における落ち着ける居場所づくりの報告―特別な支援を必要とする児童のための学習環境づくり」を、共同で研究する明治大の学生1人と連名で発表し、学生発表奨励賞を受賞した。
 注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)の児童が小学校の普通学級で学習するケースが増えている。佐藤さんらは、児童が落ち着いて学習できるよう、教室の近くに気持ちをクールダウンさせる場所を提案する研究を進めている。
 佐藤さんは、千葉市内の小学校で毎週観察し、担任教師にヒアリングしながら、例えば教室後方にコルクマットやベンチ、クッション、棚などを使って居場所づくりを試み、観察と改善を続行。今回は卒業研究として、夏休み前までの結果をまとめ、発表した。
 対象児童の好みや行動特性に合うよう居場所を工夫するが、児童のその日の体調、機嫌や個人差に左右され、観察を長期間続けないと本質的な変化がつかめない点が難しいという。
 佐藤さんは「初の学会発表で緊張しましたが、何度も練習した結果、受賞できてうれしいです。橋本教授と共同研究者に感謝します」と語った。

多田研2人 最優秀賞


“構造アート” 4点も入賞
 日本建築学会主催の第15回学生サマーセミナー2019「集積あるいは変化するストラクチュラル・アート」(7月13日、東京都港区の建築会館で最終審査)に、多田脩二・建築学科准教授の研究室が参加。応募約100点の中から最優秀賞に狩野裕也さん(建築都市環境学専攻修士2年)・布施晃輔さん(同1年)の「CRYSTAL JOINT 」が輝いたほか、次の4点が入賞した。
 ▽優秀賞=「天高群星近(てんたこうしてぐんせいちかし)」 喜多崇之さん(建築学科4年)
 ▽大野博史審査委員賞=「むしものがたり」 穀野直貴さん(同)
 ▽田村恵子審査委員賞=「Atmospace」 野内竜樹さん・齋藤良成さん(同)
 ▽永井佑季審査委員賞=「和紙の華」 岡田大樹さん(建築都市環境学専攻修士1年)。
 コンテストには日中台韓4カ国・地域の16大学が参加。「集積」と「変化」から思い描く、構造的で自由なカタチを作った。「組立―完成―解体」が容易なのが条件。6月末に募集が締め切られ、著名な建築家・構造家たちの一次審査を経て、建築会館で組み立てる最終審査が行われ、各賞が決まった。
 布施さんらの「CRYST AL JOINT」は、炭素結合の原理を用いた幾何学による新しい接合部を提案。「最終審査日は朝6時から部材が届くのを待っていたので、早起きしたかいがありました」
 喜多さんの「天高群星近」は、テンセグリティー(引っ張ろうとする力と戻ろうとする力で自立安定する構造)による新たな構造形態と、構造の力の変動を表現。「有機的な材料を使用したため、作業中に何度も麻紐が切れたり竹が割れたりしたが、協力してくれた方のおかげで思い描く作品が作れました」
 穀野さんの「むしものがたり」は、アーチ形を用いた幾何学と面の連続を提案した。「私の形態は、発泡ボードで構成したので、湿気が最大の難敵でした。当日は、湿気を吸う前に完成したものを全体に見せることができて、よかった」
 野内さんらの「Atmosp ace」は、切り紙のシステムを応用した新たな立体構造。「当日の作成は1枚の紙を切るところから始まりました。制作で遅れを取っていたと感じましたが、思いを一つにして躯体を立ち上げることができました」
 岡田さんの「和紙の華」は、一葉双局面構造を柔蠕材(柔らかくうごめく材料)で成立させるもの。「和紙を立体的に立ち上げる。考えただけで不可能に近いところを、一葉双局面構造を用いて解決を図りました。結果的に躯体は独立しなかったものの、その華やかさやインパクトは一番だったと感じています」
サマーセミナーで受賞した多田研の学生たち
サマーセミナーで受賞した多田研の学生たち

次世代太陽電池へ薄膜分析


高橋さん講演奨励賞
 応用物理学会多元系化合物・太陽電池研究会の年末講演会International Workshop on Ternary and Multinary Compoundsが11月16日、本学津田沼キャンパス2号館の大教室で開かれ、高橋直さん(電気電子情報工学科2年、脇田和樹研究室)が「マイクロ領域におけるCZTS薄膜のラマンマッピング評価」をポスター発表し、講演奨励賞を受賞した。
 太陽電池は普及しているシリコン系のほか化合物系、有機系があり、高橋さんは低コストで将来性が期待される化合物系半導体Cu2ZnSnS4(CZTS)を研究。CZTSはガラス基板に半導体薄膜を蒸着して作るが、なお変換効率が低く、薄膜結晶のマイクロ領域の分析が実用化に大きく貢献する。
 高橋さんは、PLD(Pul se Laser deposition)法で成膜したCZTS薄膜を、共焦点顕微システムを用いたラマン分光の2次元走査で測定し、薄膜表面の結晶構造または異相を解析した。さらに比較サンプルとしてCZTS薄膜に硫黄を充填しアニール処理(加熱し材料の残留応力を取り除く処理)を施したものを使い、処理前後の異相分布の変化を検討した。
 ポスターはとにかく見栄えをよくして、他分野の研究者にも立ち止まってもらおうと工夫したといい、「受賞すると思っていなかったので、衝撃でした」と語っていた。