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2019.9.15

総工研と先川原室長


法典西小でロボット教室
 文化会・総合工学研究会(小瀧直輝部長=機械工学科3年)の学生4人による「ロボット操縦体験」と、先川原正浩・未来ロボット技術研究センター(fuRo)室長の「ロボット講義」が9月5日、船橋市立法典西小学校で開かれ、5年生約120人と先生方が参加した。
 体育館中央に設けられたロボットフィールド=写真上=に、学生たちは2足歩行ロボット4機を登場させ、児童たちに囲まれながら自身とロボットを紹介。ロボットの特徴などを説明すると、児童たちから「かっこいい」と声が上がった。
 「ロボット操縦してみたい人!」の声がかかると、児童たちは精一杯声を上げてアピール。抽選で約20人が次々に操縦に挑戦し、簡単な説明を受けて器用にコントローラーを扱い、ロボットの機敏な動きに歓声を上げた。倒れても、ボタンを押すとすぐに起き上がる動作に、「起き上がれるんだ!」と、驚き、子どもたちの操縦に先生方も拍手を送った。
 恒例のロボットバトルは、1回だけ披露し、学生たちの真剣勝負に声援が響いた。
 続いて先川原室長が講演した。未来のロボット社会がどうなるのか、役に立つ最新ロボット事情を紹介。ロボットを製作途中の失敗動画集を公開すると笑いが起きて、にぎやかな出張講座となった。
 その後、学生たちは児童に伴われて各教室に移動し、一緒に給食をとった。食事の間にも質問が飛び交い、楽しい時を過ごした。
 総工研メンバーは夏休み中、現代産業科学館=写真下=や高根台公民館でも操縦体験を開催。今後も松戸市六実市民センターや新習志野公民館で、と引っ張りだこだ。

出版


十分な素養が身につく
村上教授
村上教授
土木技術検定試験 問題で学ぶ体系的知識 改訂版
土木技術検定試験
問題で学ぶ体系的知識
改訂版
著者= 土木技術体系化研究会(依田照彦・早稲田大名誉教授、本学の村上和仁・生命科学科教授ら)
発行= ぎょうせい
価格= 3888円(税込み)
 土木学会が行う「土木技術検定試験」向けの唯一のテキスト。最新の問題傾向に対応し、7年ぶりに改訂された。
 検定試験の過去問題をベースに、土木工学を学ぶために必要な事例を厳選。5章構成で▽検定試験の受験にあたって▽技術者倫理や工学知識に関する基礎問題▽土木材料・施工・建設マネジメント、構造工学・地震工学・維持管理工学、地盤工学、交通工学や土木環境システムなどの専門問題▽先輩社会人らのアドバイス▽2級土木技術者の国際的な位置づけ――など、全370問を収録している。
 考え方の基本が身に付くよう、1問1問に丁寧なポイント解説付き。検定試験を立ち上げた土木技術体系化研究会メンバーを中心とした執筆なので心強い。
 土木環境システムの問題を担当した村上教授は「この1冊を理解すれば学部卒業レベルの土木技術について、概ね十分な素養が身につくでしょう」。
 授業をより深く理解するため、また検定試験の受験対策として、有効な1冊となっている。A5版・418ページ。

活躍する校友


作画ソフトを先導
新たな開発怠らず
(株)セルシス代表取締役社長
成島 啓(なるしま けい)さん(45歳)
(平成9年、工業デザイン学科卒)
成島 啓さん
「4年間に無駄な時なし」と成島さん
 パソコン(PC)上で描いた漫画やアニメをスマホで楽しむ時代だ。デジタル全盛。そのソフト制作では国内のトップを走る株式会社セルシス(東京都新宿区)。「ツールは裏方。新しいコンテンツを生みだすクリエイターのお手伝いができれば」。平均年齢が37歳と若い社員(150人)を引っ張る成島さんは控えめである。
 セルシスは1991年設立のベンチャー企業。プロ向けのTVアニメソフト「RETAS!Pro」(1993年)をはじめ、世界初のPC用漫画作画ソフト(2001年)、電子書籍閲覧ソフト(2003年)などを発表してきた。
 イラスト、漫画、アニメを最新技術で作る「CLIP STUDIOPAINT」は数々の賞に輝き、業界ナンバー1のシェアを持つ。「ほとんどのプロには使ってもらっている」(成島さん)と自信をのぞかせる。
 埼玉県で生まれ、子どものころはプラモデル、ラジコンに熱を上げた。もの作りが好きで、工業デザイン学科へ。本学では吹奏楽同好会でパーカッション(打楽器)をやり、3年次には部長になっている。
 ほぼ同じころ没頭したのが、デザインツールとして普及し始めたPC(マッキントッシュ)の世界。画面上で描けることに対する驚きだ。手間や材料の面倒なアナログに比べ、省力化、低コスト化、安定した品質などに優れ、「食べるのも忘れるくらい面白かった」。
 といっても、PCさえ高価な時期だ。周辺機器までセットするのは並大抵ではない。夜のコンビニ店員で稼いだバイト代を注ぎ込み、秋葉原へもせっせと通い、そろえた。おかげでアパートのガス代を滞納、4回ほどガス会社に元栓を止められている。「シャワー使わせてよ」。そのたび同じ学科の友人のアパートへ。
 さらに、これはPCのせいばかりではないが、順当なら2年次で終わるドイツ語の単位取得を4年次まで持ち越した。「ときどき、『あぁーっ、卒業証書がもらえない!』とうなされるんです」と苦笑する。
 実はこの4年次、アルバイト求人情報誌で目にとまった会社が人生の針路を決めた。セルシスである。「でも、動機が不純なんです」。
 吹奏楽同好会の1年先輩(トランペット)に工業化学科首席卒業の才媛がいた。たまたま勤務先がセルシスに近い。「バイトもデートも新宿で」のつもりで働き始めた。折しも、アジア通貨危機(1997年)などで団塊ジュニア(1971〜74年生まれ)を襲った就職氷河期のさなか。卒業と同時にセルシスへ制作部デザイナーとして就職、才媛ともめでたくゴールイン。まるで絵に描いたような展開だ。
 デジタルデザインの領域は幅広い。企業のホームページ、PCを使った通信教育、自動車に実装化の進む液晶モニター、携帯電話の画面、そしてセルシスのソフトウェアにも携わった。
 とくに漫画創作を一変させたといわれる。たとえば、効果線のひとつである集中線(光の放出・拡散を示すような線)のマスターには「修業10年」といわれたアナログの時代。今なら画像選択のクリックひとつで線の太さ、色、位置どりなど思いのまま。
 「ユーザーのニーズを聞き、ふさわしい機能づくりを模索するうち、だんだんマネジャー的になって」と成島さん。朗らかで外交的な性格が向いていたのだろう。副社長をへて2016年、社長に就任した。
 「社員のやることには、できるだけ口出ししません。なにか言えば、そのぶん、社員が考えなくなるので。社是(企業哲学)もなし。あると逆にしばられますから」
 徹底した自由主義。
 描写法、彩色などは国の文化や風土で千差万別。しかし、ツールは同じ。セルシスの一部のソフトはデファクト(事実上の世界標準)化しつつある。それだけに、「安定して提供し続けられるか」(成島さん)が、新しい技法の開発とともに、問われることになる。
 現在、日本語を含め七つの言語でソフトを出す。社員の約2割は9カ国・地域の外国人。親会社「アートスパークホールディングス」(新宿区)傘下のグループ4社のひとつは在オーストリア。セルシスの社員が出かけ、情報交流も行う。まさに技術に国境なし。
 「仕事が“息抜き”」というほど一心同体のデジタル世界への入り口は学生時代にあった。「いまでも付き合うグラフィックデザイナーら同好の士を得られたのが一番の喜びです。4年間に無駄な時はありません。意味はあとでつながってきますよ」。