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2019.6.15

生命誕生の種 含む?


中米隕石 PERCが入手 一般公開へ
PERCが入手した隕石「AGUAS ZARCAS」
PERCが入手した隕石「AGUAS ZARCAS」
 地球生命の起源解明の研究に新たな一歩を記すと期待される貴重な隕石を惑星探査研究センター(PERC)が入手。この夏にも東京スカイツリータウンキャンパスAreaⅡに展示し、一般に公開することになった。
荒井主席研究員 共同で分析作業
分析を進める荒井主席研究員
分析を進める荒井主席研究員
 この隕石は今年4月23日夜(現地時間)、中米コスタリカの首都、サン・ホセ郊外の上空に現れた複数の巨大な火球から無数の破片となって降り注いだ「AGUAS ZARCAS」(スペイン語で「ザルカス海」)。民家の屋根を突き破るほどの大きさのものもあり、これまでに採集された量は約30キログラムと推定される。
 コスタリカ大学の初期分析や、その後の米アリゾナ州立大学の分析で、地球生命誕生の「種」となる炭素質物質や水を含んだ鉱物を含む「CMコンドライト」であることが分かった。
 これまでに確認されたCMコンドライトで最大のものは、1969年9月にオーストラリアに飛来した「マーチソン隕石」。この隕石からは地球上の生体では見られない有機物(アミノ酸)も発見されており、AGUAS ZARCASにも世界中の隕石研究者が熱い視線を注いでいる。
 AGUAS ZARCASが飛来した4月23日は「こと座流星群」の極大日。このため母天体はこと座流星群の「Thatcher」彗星(公転周期415年)ではないかと一時は考えられたが、軌道計算の結果、全く別の短周期彗星(公転周期20年未満)であることが分かった。
 PERCが入手したAGUAS ZARCASは大きさ7×5×5センチ、重さ172グラム。スカイツリータウンキャンパスで一般公開する一方、試料の一部を切断し、荒井朋子主席研究員が外部の大学や研究機関の研究者と共同で詳細な分析を進める。来年3月、米ヒューストンで開催される月惑星探査の国際会議で分析結果を発表する予定だ。
リュウグウと比較も

荒井主席研究員の話

 今、「はやぶさ2」が探査を進めている小惑星「リュウグウ」も、AGUAS ZARCASに近い物質でできていると考えられます。はやぶさ2が試料を持ち帰れば、両方の比較も科学者には尽きない興味をそそる研究課題です。

隠れた市民意識を可視化


本学DSI 千葉市に分析報告
熊谷市長(中央奥)に分析結果を説明する久武機構長(その右)
熊谷市長(中央奥)に分析結果を説明する久武機構長(その右)
 本学の国際金融研究センター(GiFr)の中に設けられているデータサイエンス機構(DSI)の久武昌人機構長(センター副所長)は5月23日、千葉市の熊谷俊人市長に、同市が行った「まちづくりアンケート」のデータを、自治体の分析ではあまり用いられない高度な分析手法「多項ロジット・モデル」を用いて分析した結果を報告した。
 DSIは、実証に基づく政策立案(EBPM=Evidence Based policy Making)の専門組織として昨年4月に開設。財政事情のひっ迫などで、政策の効果をデータに基づいて客観的に評価する必要性に迫られている地方自治体などにEBPMの導入を促し、より良い政策立案に役立ててもらうための研究活動を行っている。
 多項ロジット・モデルは、関係者が感覚的に捉えているに過ぎなかったものに、定量的な根拠を示すことを可能にする統計手法。ある政策手段の実施が、市民の評価の変化にどの程度の影響を与えるかも、定量的に示すことができる。
 千葉市の「まちづくりアンケート」は、中期計画見直しの基礎資料として3年に一度実施。今回DSIが分析したアンケートは、市民のいま住んでいる地域での「生活満足度」や「住み続けたいか」をさまざまな側面から問うもので、昨年秋に行われた。
 このデータ分析を、多項ロジット・モデルを駆使して行うことで、これまでの一般的な分析では見えてこなかった市民の意識を、客観的なデータとして表すことができたという。
 DSIのこの分析結果について、熊谷市長は「非常によく見てくださり、今後のアンケートのやり方の参考にもなる分析をいただいた」と謝意を表明。同席した総合政策局幹部からは「これまで職員の力量だけでは分析手法の選択自体が難しかったが、この結果を見て、新たな領域に踏み込んでいくための一条の光が見えてきた感じです」といった声が寄せられた。
 本学と千葉市は2016年4月に包括的連携協定を締結。このアンケート結果の分析も同協定に基づいて行われた。DSIは今後、本学と包括連携協定を結んでいる千葉県内の他の9市町にもEBPM導入のための共同研究などを働きかけていく方針だ。

九十九里町と包括協定


 本学は5月29日、県東部沿岸の九十九里町と包括的連携協定を締結した。千葉県内で同様の協定を締結した自治体は習志野市、浦安市、御宿町(以上2014年)、千葉市、香取市(同16年)、船橋市、市川市(同18年)、勝浦市、酒々井町(同19年)に続いて10番目。本学が積極的に進めている「地域社会との共生」がさらに前進した。
 九十九里町立中央公民館で行われた締結式では、大矢吉明町長=写真右=と本学、瀬戸熊理事長=同左=が固い握手を交わし、「地域社会の発展と人材の育成に貢献・協力していきたい」とあいさつした。