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2018.11.15

次世代掃除ロボ 公開


fuRo+パナソニック 連携第1号
 本学fuRo(未来ロボット技術研究センター)と家電最大手のパナソニック(株)が共同開発した次世代ロボット掃除機のコンセプトモデルが11月1日、東京国際フォーラムで開催中のパナソニック創業100周年記念イベントで華々しく公開された。最先端のAI(人工知能)、自動操縦、ロボット技術を搭載したこのロボット掃除機の開発を手始めとして、パナソニックはfuRoとの産学連携をさらに強め、白物家電の知能化を一層進めていきたいとしている。
公開会場で(左から)古田所長、本間社長、パナソニック系BeeEdge社の春田真社長
公開会場で(左から)古田所長、本間社長、パナソニック系BeeEdge社の春田真社長
開発新手法 家電知能化を牽引
 「千葉工大とパナソニックの混成チームの目的は、知能化白物家電の開発プロセスの革新にありました」――fuRoの古田貴之所長は、東京国際フォーラムのホールCを埋めた約1500人の聴衆にこう話しかけた。
 本学とパナソニックは昨年12月、津田沼キャンパスに「パナソニック・千葉工業大学産学連携センター」を開設した。創業101年目をスタートさせたパナソニックが家電事業を今後、どのように展開・発展させていくべきか。その牽引役として、まずロボット掃除機の知能化を進めるためだ。
 「家電のロボット化を一緒にやってくれるパートナーを求めて、アメリカやヨーロッパ、中国まで回ったが、なんと足元の千葉工大に最適なパートナーがいた」と、パナソニックの社内カンパニー、アプライアンス社の本間哲朗社長は、この日のプレゼンテーションの中で打ち明けた。
 公開された次世代ロボット掃除機の開発プロセスの最重要点は「アジャイル開発」と「オープンイノベーション」だ。
 「アジャイル開発」はfuRoのロボット開発力と、パナソニックがもつ家電の企画・開発力を掛け合わせ、ソフトとハードを統合しながら、短期間で試作と改善を繰り返す手法。その結果、3カ月という「革新的な短期間」で完成させることができたという。
「進化はまだまだ進む」
 「オープンイノベーション」は、本学の「HallucⅡ」や「Cangu Ro」をデザインしたプロダクトデザイナーの山中俊治氏とパナソニックのデザイナーとの共同制作を指す。デザインとエンジニアリングの双方でオープンイノベーションを推進したこともこの開発プロセスの特徴だ。
 「ロボット掃除機は非定常の作業を毎日行う、メーカーにとって非常に難しい家電製品。今回のコンセプトモデルの開発で、私たちの事業の将来を見据えることができた。今後も千葉工大の力を借りながら、この動きをアプライアンス社全体に広げていきたい」と、本間社長はアピール。
 これに古田所長は「これは第一歩。これから家電の進化はまだまだ進みます」と応えた。
AI床センサー、ScanSLAM、otomo機能…
 fuRoとパナソニックが共同開発した次世代ロボット掃除機のコンセプトモデル=写真=は、床上の物体を認識し、段差に応じて自動的に本体を持ち上げて走行を続けたり(AI床センサー)、部屋の形状や人など、周囲全体の動・静物体を認識して、瞬時に自分と相手の位置を把握したりする知能(ScanSLAM)を備えている。
 また、自動操縦技術との組み合わせで、タブレット端末で掃除する場所を遠隔で掃除機に指示したり、人に寄りそうように追従する「otomo機能」を使って、掃除機と人が協調して掃除することもできる。
 周囲の環境と自分の位置を正確に把握できるため、確実に充電台に戻り、電動で充電台に縦置きに吊り上げる機能も実現した。
「1年以内に発売」
 記者会見で本間社長は「製品は1年以内に発売する」と明らかにした。

市川市とも包括協定


地域社会との共生 さらに
 本学は10月15日、市川市と包括的連携協定を締結した。千葉県内で同様の協定を締結した自治体は習志野市、浦安市、御宿町(以上2014年)、千葉市、香取市(同16年)、船橋市(6面参照)に続いて7番目。本学が積極的に進めている「地域社会との共生」がさらに前進した。
 市川市との連携事項では、第一に「通信技術の活用」が挙げられている。これは本学が学生全員に無償貸与し、授業などで使ったタブレット端末を市川市に寄贈。市川市はこれを市立小・中学校の特別支援学級などに配備・活用する。
 さらに、その現場で出てきた教員の意見を本学が汲み上げ、新たなアプリを開発する。これには市川市と別途、協定を結んだIT企業も参画し、産学官で市川市の小・中学校教育を一層活性化させようというもの。
 協定締結式であいさつした村越祐民市長は「市川市はこれまでさまざまな企業や団体、学校と協定を結んできたが、千葉工大との協定はそれらとは一味も二味も違ったものになると思う。市川市民に本当に喜んでいただける協定に育てていきたい」と、本学への期待を表明した。
 これに応えて瀬戸熊修理事長は「AI(人工知能)の急速な進歩で、10年後には日本の労働人口の約半分の職業がAIにとって代わられると言われている今、千葉工大がこのような形で市川市の小・中学生のお役に立てるのは、大変に光栄なこと。最先端の科学技術に挑んでいる5つの研究センターと5学部17学科の知財を集めて、市川市民との共生のために貢献していきたい」と語った。
 市川市との連携事項には、このほか▽まちづくり▽地域経済活性化▽教育、生涯学習、文化およびスポーツの振興▽人材育成――などが掲げられている。
協定書を掲げる村越市長(前列中央左)と瀬戸熊理事長(同右)、小宮学長(右端)
協定書を掲げる村越市長(前列中央左)と瀬戸熊理事長(同右)、小宮学長(右端)