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2017.1.15

応用物理学会で脇田研の2人受賞


R・パウカルさん
 太陽光発電の材料などを追究する脇田和樹教授の研究室の大学院生2人が、応用物理学会の研究会で成果を発表し、表彰された。
三元タリウム系化合物の熱電特性で優秀ポスター賞
 従来の光学分野に加え量子論的なフォトニクス関連領域を扱う応用物理学会フォトニクス分科会の第1回フォトニクス研究会「光の境界を開拓する!!」(12月2、3日、那覇市の沖縄県青年会館で開催)で、パウカル・ラウールさん(工学専攻博士後期課程3年=写真)が「Tl In S2結晶における偏光ラマン散乱スペクトルの温度依存性」を英文でポスター発表し、優秀ポスター賞を受賞した。
 R・パウカルさんはペルーからの留学生。最難関カトリック大(リマ市)工学部電気電子工学科を卒業後、本学大学院の電気電子情報工学専攻修士課程に入学して無事修了、さらに工学専攻博士後期課程に在籍している。
 三元タリウム系化合物は二次元結晶構造に由来して、温度の低下につれて構造相転移(結晶が対称性の異なる構造に変わる現象)し電気的・熱電的性質が変化するため、熱電発電の材料として期待されている。しかし基礎物性と構造相転移との関係が十分に解明されていない。
 R・パウカルさんらは、解像力が高い最先端の共焦点レーザー顕微システムを用い、三元タリウム系化合物に属するTl In S2結晶で、構造相転移温度付近での偏光ラマン散乱スペクトルの温度依存性を調べた。
 その結果、格子振動が温度に敏感に変化する振動モードと、そうでない振動モードを分離し、それぞれの起源が結晶層間と結晶層内の分子結合による、と見極めることができた。
 実験は低温領域において10度刻みで散乱スペクトルを測定。準備が大変で、得られたデータを解析し結論を導くのがまた一苦労だったという。
 ポスター発表21件中、2件が優秀賞に選ばれた。R・パウカルさんは「受賞は全く予想外でしたが、とてもうれしい」と感想を述べた。
小谷さん講演奨励賞
環境に調和した太陽電池へ薄膜作製研究
 応用物理学会の多元系化合物・太陽電池研究会年末講演会(12月9日、福島県郡山市の産業技術総合研究所・福島再生可能エネルギー研究所で開催)で、小谷昌大さん(電気電子情報工学専攻修士2年=写真)が「PLD法によるCZTS薄膜の作製と組成評価」をポスター発表し、講演奨励賞を受賞した。授賞式は12月10日、ふくしま磐梯熱海温泉ホテル華の湯で行われた。
 四元系半導体Cu2 Zn Sn S4(以降CZTS)は希少元素や有毒元素を用いない環境調和型の半導体。太陽電池材料として期待され、これまでにCZTSを光吸収層として用いる際の最適組成比率が報告されている。
 小谷さんらは、パルスレーザー堆積法(PLD法)=レーザーを1秒間に数回ターゲットに打ち付け物質を蒸発させて基板まで飛ばし、堆積させる方法=で薄膜を作る際に使う“CZTS多結晶ターゲット”の組成比率を最適に制御するため、溶媒を用いない固相反応法で多結晶を作り、評価した。また、PLD法でCZTS薄膜を作り、物性を解析した。
 この結果、作製したCZTS多結晶と薄膜は、均一性が高いことを確認。また、Sn Sなどの異相物質がないことも、X線回折測定とラマン分光法測定で確かめた。
 作製プロセスが複雑で、試料を統括し研究を取りまとめるのに苦労した。データベースを作り共同研究者とうまく連携できたことが成果につながったという。発表20件中、2件が受賞した。
 小谷さんは「大変光栄です。脇田先生と研究室の方々にお礼を申し上げます。今後も精進します」と語った。

下川さん最優秀賞
2位も秋山さんら


関東学生景観デザインコンペ
 第3回関東学生景観デザインコンペティション(関東学生景観デザインコンペ実行委員会主催)の公開審査会が昨年11月27日、埼玉県和光市中央公民館で開かれ、下川翔平さん(建築都市環境学専攻修士1年・今村創平研究室)の「屋根倉が紡ぐ大地の営み」が最優秀賞に選ばれた。
 次点の優秀賞にも本学の秋山怜央さん(同2年・遠藤政樹研究室)・高橋由寛さん(同)・川合豊さん(同1年・今村研究室)ら3人の「時の生きづく風景」が選ばれた。
 上位3作品は市民のために12月中は和光市中央公民館、1月は12日まで市民文化センターで展示された。
 今回テーマは「時を繋げる景観デザイン」。埼玉県和光市の荒川下流域に広がる大規模環濠集落跡・午王山遺跡を舞台に、昔と今を繋ぐ和光市特有の景観デザインが募集された。
 下川さんの「屋根倉……」は、埋蔵遺構を直に露出させず、素朴な屋根付き回廊で覆って、発見された田畑地帯をたどらせた。屋根の下には倉や作業場を設け、周辺の人々が暮らしを営み続けるための場所をつくった。
 1週間、集中して模型やプレゼン形式をつくった。リサーチ内容やアイデアがうまく反映できたという。
 埼玉県内外の建築関係者、イタリア国立ボローニャ大から招いた建築学部准教授、松本武洋・和光市長らに市民30人も票を投じ公開審査。「遺跡公園をつくるだけではなく、この場所で暮らす古代と現在の人々が繋がるための場所と景観を、さまざまな形態の屋根によってつくり出すことができていた」と評価された。
 下川さんは「前回(3位に相当する景観デザイン賞)に続いて入賞できて光栄です。小さい頃から興味があった考古学と今学んでいる建築を介して、古代遺跡を残していく提案ができたと思います。市長や和光市民から多くの意見が頂け勉強になりました」と語った。
 優秀賞・秋山さんらの提案は、遺跡群を歴史的価値に加え町の生活環境を形成する場と捉え、史跡公園の在り方を再構成したもの。3人は「地域の人々とのディスカッションの中で審査が進められるという貴重な場で、建築を見つめ直す機会になりました」などと語った。
最優秀賞の下川さんとその作品「屋根倉が紡ぐ大地の営み」
最優秀賞の下川さんとその作品「屋根倉が紡ぐ大地の営み」

自家骨化しやすい補填材


橋本教授が産学連携で開発
 応用化学科・橋本和明教授=写真=の研究室は大王製紙(株)、(株)福山医科(千葉市)と共同でパルプを原料とするセルロースナノファイバー(CNF)を利用した多孔質の人工骨補填材=写真下=の開発に成功した。
 新開発の人工骨補填材はリン酸カルシウムとCNFを混合して乾燥、成型し、焼結することでCNFの部分が微細な孔として残り、従来の気泡剤を使った製法に比較して開気孔率が高まる。
 このため孔内に細胞や血液が入って、患者自身の骨組織と一体化する「自家骨化」がしやすくなる特長をもつという。
 人工骨は整形外科の医療現場で多く使われているが、補填材の中には自家骨化しないものもある。新開発の人工骨補填材を使うことによって、埋植手術が一度で済み、治療期間が短縮される。さらに孔内に薬剤を充填しての治療にも役立てられるなどの効果が期待される。
 共同開発に当たった3者は昨年11月25日、製造技術の基本特許を申請した。
橋本教授の話
 私にとっては10年がかりの研究に1つの結果が出たわけだが、周辺特許の申請から製品化まで研究はさらに息長く続きます。これからも外部企業と協力し合いながら、人の役に立つものを社会に送り出していきたい。

教育功労者表彰


土手内課長 上杉課長
上杉千佳課長 土手内徹課長
上杉千佳課長 土手内徹課長
 本学の土手内徹・学務部学務課課長と上杉千佳就職・進路支援部就職課課長が12月3日、千葉県私学教育振興財団から教育功労者として表彰された。
 土手内課長は平成元年4月に勤務以来、人事課、秘書チーム、国際交流課、入試広報課、学務課で、持ち前のバイタリティーを発揮して業務を遂行。平成8年度には本学国際交流の先駈けとして中国・哈爾濱工業大で海外研修を経験しグローバル化に貢献した。
 上杉課長は平成元年4月に勤務以来、人事課、教務課、就職課で熱心に職務を遂行。特に学部・学科改組に伴う教育課程変更、教学システムの導入などで複雑な業務をこなし、本学発展のために尽力した。