NEWS CIT ニュースシーアイティ

2016.5.15

東京五輪年“未来実験場”めざして


千葉市と本学 包括連携協定
協定書を交わし握手する瀬戸熊理事長(右)と熊谷市長
協定書を交わし握手する瀬戸熊理事長(右)と熊谷市長
 本学は4月14日、千葉市と包括的連携協定を締結した。広範囲な分野で相互に人的資源などを活用するとしているが、とりわけ本学に期待されているのが国家戦略特区に指定されている幕張新都心での未来ロボット技術研究センター(fuRo)の技術を活用したパーソナルモビリティー・シェアリングサービスの実証実験だ。
 千葉市役所で行われた協定調印式で熊谷俊人市長は「市外の大学との包括協定は初めてだが、幕張新都心から挑戦する未来都市づくりなど、科学技術を積極的に活用した地域活性化を進めていく中で、千葉工大と密接な連携ができないものかとかねてから考えていた」と本学への期待を表明。
 瀬戸熊修理事長は「本学は市内千種町に約5万坪の校地を保有し、最盛期には650人の寮生が暮らしていた。千葉市と習志野市は隣同士であり、千葉市の地域活性化に本学の知的財産を投入し貢献できるのは大変光栄です」と応えた。
 さらに瀬戸熊理事長は「本学は5学部17学科を擁する工業大学だが、理学分野でも世界の先端を走っている」として、惑星探査研究センター(PERC)の松井孝典所長が進めているヒッタイトの「鉄の謎」に挑む研究に言及。「人類がいつ鉄を使い始めたかについて世界史の通説を覆す成果が期待されている」と、本学の研究の一端を披露した。
 幕張新都心でのパーソナルモビリティーのシェアリングサービス実証実験は、2020年の東京五輪・パラリンピック開催に併せて、fuRoと千葉市、イオンモール(株)が連携して現行法規の最高速度を超えてパーソナルモビルティーを公道(歩道)で走らせる実験などを同地区で行う。
 協定ではこのほか1本学から千葉市内の学校や教育拠点へのタブレット端末の無償提供・効果的な活用法の検討2本学研究者による介護ロボットの普及促進・開発支援3PERCによる千葉市の科学都市戦略事業方針の推進支援4起業志向のある学生に対する創業・新事業創出に関する支援――が盛り込まれている。
 調印式終了後、fuRo研究員によるHallucIIX(ハルクツー・カイ)と全方位移動型電動車イスの実演が行われ、熊谷市長らが歓声を上げる場面も見られた。

幕張新都心でモビリティー実験


ユニバーサル未来社会推進協
fuRoを技術顧問役に
 本学未来ロボット技術研究センター(fuRo)と文部科学省が事務局を務める国家プロジェクト「『先端ロボット技術によるユニバーサル未来社会の実現』を推進する協議会」(鈴木寛会長)は4月22日に開いた会合で、幕張新都心でfuRoを技術アドバイザーとするパーソナルモビリティー(移動支援ロボット)のシェアリングサービス実証実験などを推進するワーキンググループ(WG)の設置を決めた。
 同協議会は2020年の東京五輪・パラリンピックに併せて先端ロボット技術を使った未来社会の“実験場”を作ろうと、文科省が主導して昨年9月に発足した。実施場所には競技会場が設けられる東京臨海副都心のお台場地区や幕張新都心が充てられる予定。
 千葉市は、地域を限定して規制を緩和する国家戦略特区などを使って、幕張新都心でドローンによる宅配サービス、ロボットタクシーの無人運転と並んで、パーソナルモビリティーのシェアリングサービス実証実験を行う。
 実験に使用するパーソナルモビリティーの製作企業は、同協議会のプロジェクト会員などから募集する。また公道(歩道)での最高制限速度が現行法では時速6キロとなっているのを10キロに緩和することなどで、実証実験の成果を高め、幕張新都心の活性化につなげたい考えだ。
 fuRoは、4つの形態に変化する「ILY―A(アイリーエー)」や全方位移動型電動車イスなど、近未来のパーソナルモビリティーで卓越した技術を開発している。こうした技術を背景に幕張での実証実験を主導していく。
 会合の終了後、会場のイオンホールで原発ロボット「櫻弐號」のデモンストレーションが行われた=写真上。また未来ロボティクス学科林原研究室の牧角知祥さん=修士1年=が開発した衝撃吸収機構を内蔵した人間サイズのヒューマノイドロボットが展示され、参加者の注目を集めた。

HallucIIX披露


国内初 よみうりランドで
 本学未来ロボット技術研究センター(fuRo)が山中俊治・東大生産技術研究所教授と共同開発した未来の乗り物「HallucIIX(ハルクツー・カイ=写真上)」が3月28日、東京都稲城市の遊園地よみうりランドで開かれた「モノづくりフェスタ2016」で、春休み中の小中学生など来場者にお披露目され人気を集めた。同機は昨年9月にオーストリアのリンツで開催された世界最大のメディアアートの祭典「Ars Electronica(アルス・エレクトロニカ)」に世界初出展されたが、国内で一般に公開されたのはこれが初めて。
 「HallucIIX」はfuRoの古田貴之所長と山中教授が2003年に始めた、環境と共存できる未来のロボットビークルの開発を目指す「Hallucigenia(ハルキゲニア)プロジェクト」の最新機種で、2007年に発表された「HallucII」をさらに進化させたもの。
 多関節ホイール・モジュール(車輪モジュール)を8脚装備し、56個のモーターを駆使して、状況に応じてビークル(車両)モード、インセクト(昆虫)モード、アニマル(動物)モードの3形態に変形。変幻自在に移動することができる。
 山中教授は「車輪がたくさんあって、とても低くて、スケートボードのようなものに人が自然に乗っているような、そんな未来を想像しながらロボットビークルを作っています」と同機を紹介。
 また、古田所長はfuRoとアイシン精機の共同プロジェクト「ILY―A」(アイリーエー)や原発ロボット「クインス」と「櫻壱號」、2足歩行ロボットとしては世界最大級の100キロの可搬重量性能をもつ「core(コア)」などの自慢作を映像と実演で紹介。「櫻壱號」が会場の急な階段を簡単に昇降する場面では、会場から感嘆の声が上がっていた。
 「モノづくりフェスタ」は日本の「ものづくり産業」の振興と子どもたちの「ものづくり」への関心を高めようと、経済産業省が後援するイベント。

林原教授がミニレク


図書館シンナライブに97人
 新学期最初のシンナライブが4月20日、新習志野キャンパス図書館前で開かれ、未来ロボティクス学科・林原靖男教授のミニレク「人工知能とロボット技術が作り出す未来のカタチ」を聴こうと新入生など97人が詰めかけた=写真
 「皆さん、20年後の世の中はどうなっていると思う?」と切り出した林原教授は、まずラリー・ペイジ(グーグル)、スティーブ・ジョブズ(アップル)、ビル・ゲイツ(マイクロソフト)という“世界を変えた”3人のトップの言葉を引用しながら、「次の20年は、いま皆が住んでいるのとは全く別の社会が訪れる」と話しかけた。
 そして、いま10人で行っている仕事のうち8人分はロボットや人工知能がするようになる。2045年には人工知能が人間の知能を超え、人工知能自体が人工知能を作る時代がやってくるという予測もある。そうなれば人間はどうやって生きていけばいいのかという新しい課題が出てくる――と畳みかけた。
 さらにこの「ポスト・ヒューマン時代」は人間の自滅行為であるかも知れず、だからこそ慎重に進めていかなければいけないとした上で、「皆さんはぜひ学生のうちに、たくさんのチャレンジをして、知識と技術を蓄え、来るべき世の中のキーマンになって社会を良い方向に変えてほしい」と結んだ。レクの最後には、昨年と一昨年のロボカップ世界大会で優勝したヒューマノイドロボットの実演も行われた。
 シンナライブは昼休みの30分間、普段の授業では聞けない先生方の“取って置き”の話を聴こうと、同キャンパス図書館事務課のスタッフの発案で昨年10月にスタートした月1回の“教職協働”イベント。
 5月18日には小林憲司教授による「超電導物質の謎を探る」が行われ、今後▽6月17日=赤澤元務教授「日本人の脳は世界標準か?」▽7月5日=八馬智准教授「街角デザインを楽しもう」と行われる。