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2015.7.15

女性が当選する選挙カー


▼佐藤研・石川さんら連携して開発
 地方選挙で「女性が当選する選挙カー」を(株)栄光自動車工業(千葉市若葉区、木俣博光社長)と本学デザイン科学科・佐藤弘喜教授の研究室、千葉大・デザイン心理学研究室が連携して開発し、実車化された。デザイン科学専攻の石川和也さん(修士2年)が中心となって、愛らしい形を生み出した。
 地域で小回りが利く軽自動車を選択。演説スペースやスピーカーを配置した。目を引くのは車体半分に弧を描く階段の手すりで、候補者がマイクを手に、階段途中にも、高い天辺にも立てる。反対側車内には移動中、候補者が街の人々に見えるよう、ベンチシートを外側に向けた。窓は広く、全体がコンパクトで丸い曲線に包まれている。
 「目を引き、親近感を持たれる車にしたかった」と石川さん。選挙カーという厳しい制約下のデザインをクリアした。
 マイクには声が鮮明に通るよう音響研究を生かし、千葉大側も演説内容で色が変わるLED表示や車体カラー研究を提供。試験走行し、8月にも首都圏でレンタルを始めるという。
 石川さんは、自身のデザインが世に出る感動に「今後もコンペやプロジェクトに挑みたい。いつか、みんなが見て触って“感じたことがある”ものを提供し、世界を変えるデザイナーになりたい」と語った。
 「当選する選挙カー」開発は、中小企業庁の「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業」にも採択されており、今後は国政選挙用の大型車などもそろえる計画という。
開発した選挙カー(上)と車を試す石川さん(下)
開発した選挙カー上と車を試す石川さん下
開発した選挙カー(上)と車を試す石川さん(下)

若林准教授に論文奨励賞


▼熱帯適応者の体水分・体温調節を比較研究
 教育センター(体育教室)の若林斉准教授が、日本生理人類学会第72回大会(5月30、31日、札幌市の北海道大で開催)で2014年度論文奨励賞を受賞した=写真
 若林准教授は、さまざまな温熱環境でのヒトの体温調節や作業能力を研究。今回は日・韓・マレーシア・インドネシアの研究者による共同プロジェクトで、マレーシア人と日本人を対象に、暑熱環境で運動し水分を補給した際の体水分・体温調節反応を比較研究した。
 その結果、日本人では水分補給すると発汗量が過剰に増加する(無効発汗)のに対し、マレーシア人では発汗量はそれほど増加しないのに、深部体温の上昇は小さいことが明らかになった。これは熱帯適応者では体水分のロスを抑えつつ、少ない発汗量で効率的に体温調節していることをうかがわせる。
 同学会は「短期的暑熱適応と、熱帯地で生育した慢性的な暑熱適応との違いを、体水分調節と体温調節に焦点をあてた精緻かつ計画的な方法で明らかにした」と評価した。
 若林准教授は「これまで携わった中で最大規模のプロジェクトで、論文執筆にも時間がかかっただけに、思い入れが強い。研究領域が広がり、人類の環境適応能や生理的多型性に理解を深めることにつながった。学会や共同研究者に感謝したい」と感想を語った。
 若林准教授は67回大会でも、局所冷却による前腕部組織温度の低下と骨格筋代謝の変化の研究で優秀発表賞を受賞している。
 日本生理人類学会は産官学から人類学、生理学、人間工学、健康科学、体育科学、建築学など幅広い分野の研究者が集まり▽環境適応能▽テクノ・アダプタビリティー▽生理的多型性――などをキーワードに、現代人の生理特性・メカニズムを研究している。

浮く船着き場がある橋


▼安生さん・石井さん 審査員奨励賞
 「往来・停泊」空間をテーマに斬新な構造を募集した「学生・若手実務者のための第2回2015構造デザインコンペティション」(同コンペ企画運営委主催)で、安生仁さん(建築都市環境学専攻修士1年=多田脩二研究室)と石井那実さん(建築都市環境学科4年=田島則行研究室)の「Bridge Station‐浮力を利用した船着き場の提案‐」が審査員奨励賞に決まった。6月20日、東京都港区の建築会館で開かれた2次審査会場で表彰された。
 安生さんら2人は、隅田川にかかる唯一の歩道橋・桜橋(浅草)に着目。今はX字型をしており、花見客や夏の花火大会の屋形船でにぎわうが、普段は閑散とすることも。
 浮力を利用した船着き場を設け、親水堤としてヒトとフネが共にある橋に変えてみたら……。
 構造は上下の弧で支えるサスペンアーチを採用し、下のアーチは水中に入れて浮力で荷重を軽減。また、アクリルのボックスにして水面下を人が歩くことができるようにした。
 上のアーチは通常の橋、下アーチとの間に構造体とは独立して水に浮いている船着き場を作り、今までにない空間を作り出した。
 安生さんは「1年間学んできた構造のことを生かし、構造の著名な方々に評価して頂きうれしい。石井さんと、手伝ってくれた後輩や研究室のみなさんにはとても感謝しています」。
 石井さんは「コンぺに費やした日々も、著名な構造家の方々と話し講評していただいたことも貴重な時間でした。構造の難しさ、面白さを改めて実感しました」と語った。
安生さんらのイラストと出展模型
安生さんらのイラストと出展模型
安生さんらのイラストと出展模型
安生さん(左)と石井さん
安生さん(左)と石井さん

竹の住まい提案 特別賞


▼尾澤君・関君 京都の“改修”コンペで
尾澤君(左)と関君
尾澤君(左)と関君
 住宅産業で需要が高まっているリノベーションのアイデアを募る「リノベーション×フリーダム学生アイデアコンペ2015」(5月31日に審査結果公表、NPO法人京都くらし方研究会主催)で、尾澤佳樹君と関将吾君(ともに建築都市環境学科4年=田島則行研究室)が、竹を生かした住居「TAKEtion」を提案し、選外ながら審査員特別賞を受賞した。表彰式は6月27日、京都市下京区のYIC京都で行われた。
 2人はコンペ課題地・京都府向日市に放置竹林が多いことに着目。地主・自治体と協力して竹林保全を図る一方、間伐された竹を利用して課題地の会社社宅を改修。竹を組み合わせた壁やパーティション、天井で、住み良い竹の空間をつくることを提案した。
 住居の一部は地域に解放しイベント空間に。竹細工や子供会の竹とんぼ作り、近隣住民のタケノコ料理の集いなどを楽しめる場にした。そうすることで住居が地域に根ざし、親から子へ、子から孫へ、地域と関わっていけると考えたという。
 コンペの参加資格は関西圏の学生が対象だったが、2人はあえて応募。審査で最高得点を獲得したため特に考慮されて審査員から賞を贈られた。
 尾澤君は「対象外なのに最高得点をつけていただき、大変うれしい。やるだけやってみようと、お互い奮起したのがよかったのでは……」と感想を語った。
「TAKEtion」説明図の一部
「TAKEtion」説明図の一部