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2015.7.15

「メテオ」打ち上げ 重なる不運 乗り越え
3度目挑戦 12月にも


「準備は万全」
荒井上席研究員
 2度のロケット爆発という不運に見舞われながらも、国際宇宙ステーション(ISS)からの長期流星観測プロジェクト「メテオ」に携わる惑星探査研究センター(PERC)の研究員は意気盛んだ。3度目の打ち上げ予定は今年12月と決まった。観測に使う超高感度ハイビジョンカメラの準備もOK。
「3度目の正直」に向けて国際的な打ち上げ環境が整うのを見守っている。
「カメラ(手前)も準備OK」―帰国後、記者対応する荒井上席研究員
「カメラ(手前)も準備OK」―帰国後、記者対応する荒井上席研究員
 「メテオプロジェクトとしては、3度目の打ち上げに向けて何の問題もありません。予備のカメラも、明日にでもNASA(米航空宇宙局)に引き渡せる状態のものが用意してあります」と、PERCの荒井朋子上席研究員は言う。
 「メテオ」カメラをISSに運ぶロケットの2度目の爆発事故は日本時間6月28日午後11時21分の打ち上げから2分19秒後に起きた。荒井研究員は7月1日午後に帰国し翌2日午前、NASAとの電話会議で「12月3日(現時点での予定)」の再々打ち上げを提案された。
 これはNASAが予定しているISSへのもっとも早い物資補給の機会で、使用ロケットは「アトラス5」。これまでに多数の地球観測衛星を打ち上げた、成功率の高いロケットだ。また、補給船は昨年10月29日の1度目の「メテオ」打ち上げに使われたのと同じ「シグナス」の4号機。
 12月3日の打ち上げが成功して「メテオ」カメラがISSに届けば、12月7日から11日間、活動期間を迎え、14日から15日にかけて極大期を迎える「ふたご座」流星群の観測ができる可能性がある。
 それには今月23日(日本時間)にロシアの有人宇宙船「ソユーズ」で出発する油井亀美也さんら3人の長期滞在クルーが、ISSで順調に活動を開始することが前提となる。ISSでの実験活動には6人の宇宙飛行士がそろっていなければならない決まりだからだ。
 つまり「メテオ」プロジェクトがスタートするためには、あと最低2回のロケット打ち上げ成功が必要だ。
 NASAとの契約では、流星観測期間は2年間だが、2度の打ち上げ失敗でISSでの観測条件に変更を余儀なくされている。このため「私たちが必要とする観測データが2年間で得られないときは、観測期間の延長も可能という感触を得ています」と、荒井上席研究員は話している。

「めげず支援」理事長


現地で見守り
打ち上げの瞬間を待つ松井所長と荒井上席研究員
打ち上げの瞬間を待つ松井所長と荒井上席研究員
 「メテオ」カメラを載せたスペースX社の商用補給船「ドラゴン」7号機が、ロケット「ファルコン9」で米フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から打ち上げられる光景を瀬戸熊修理事長、松井孝典PERC所長、荒井上席研究員らは同空軍基地に隣接するNASAのケネディスペースセンター内の施設の5階テラスから見守っていた。発射台までの距離は約4キロ。
 ロケットは順調に高度を上げ、やがて噴煙に包まれて機体が見えなくなる。誰もが成功を信じた次の瞬間、NASAの職員が飛び出してきて「異常」を知らせた。最初は「ロケットが軌道を逸れたため、地上からの指令で1段目を破壊した。補給船は大西洋に落ちた」と、回収が可能であるかのような情報も流れたが、その後、液体酸素タンクの圧力上昇でロケットともども木端微塵になったことが確認された。
 昨年10月の「アンタレス」ロケット打ち上げ失敗もあり、一行は今回事前にNASAケネディ宇宙センター長のロバート・カバナ氏を表敬訪問し「昨年のような間違いは絶対に起こさない」と聞かされたばかりだった。
 本学は今回も再打ち上げに先立ち6月23日に記者発表した。打ち上げに再び失敗した後も報道機関の取材が現地に滞在中の荒井上席研究員に殺到し、大きく報道された。
瀬戸熊理事長の話
 科学の進歩に失敗がつきものであることは歴史が証明している。われわれが経験した2つの事故は、人類が宇宙に出て行くことの困難さを改めて示した。これは「世界文化に技術で貢献する」を建学の精神とする本学の学生への、優れたメッセージでもあると同時に、本学の卓越した研究を改めて世界の人々に知っていただくことにもなった。本学は「メテオ」プロジェクトが成就するまで、めげることなく支援していきます。
カバナ・ケネディ宇宙センター長を訪問した瀬戸熊理事長(左)と松井所長
カバナ・ケネディ宇宙センター長を訪問した瀬戸熊理事長左と松井所長

メテオの兄弟ミッション


S‐CUBE 近く打ち上げ
世界初 宇宙から流星紫外線観測
 「メテオ」カメラの再々打ち上げに先立ち、PERCが開発した流星観測衛星「S−CUBE」(エスキューブ)が8月16日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の無人補給機「こうのとり」5号機に積載されてISSに打ち上げられる。詳細は7月21日に行われる記者発表会場で公開される。
 担当の石丸亮研究員は「大学規模で独自に推進できるプロジェクトとして、宇宙惑星探査の新たな方向性を切り開きたい」と話している。

新学部学科 始動へ弾み


新習志野 説明会に847人

 現在の工学部を再編して来年度に開設予定の3学部12学科の説明会が6月7日、新習志野キャンパスで開かれ、進学希望の高校生と保護者など847人が訪れた=写真。一部のプログラムを予約制とする異例の説明会だったが、予想通りの人気となったことで新学部学科のスタートに大きく弾みがつくと期待される。
 新学部学科の全体説明会は事前に大学ウェブサイトで予約した来場者を対象として、2回に分けて行われた。会場に当てられた1号館1101・1102教室を埋めた来場者は、産業界の実例などを引いた分かりやすい各学部・学科の説明に熱心に聞き入っていた。
 また、新たに設けられる12学科の担当教員が、それぞれの学科の教育内容を説明する新学科個別説明会を40分ずつ3回行い、これを利用して3つの学科の説明を聞く来場者も見られた。
 学科別AO入試説明会には、来場者のほぼ半数が参加。個別説明会と合わせてみると、工学部応用化学科と先進工学部生命科学科で女子生徒の姿が多いのが目立ち、本学の“女子学生人気”の広がりを感じさせた。

 これとは別に終日イベントとして▽在学生に聞いてみよう▽図書館・自学自習室見学▽展望ラウンジ&アスレチックジム見学▽職員による進学相談コーナー――などが行われた。在学生の案内でキャンパス内の施設、学生寮を見学するツアーも行われた。