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2015.1.15

2チームが奨励賞


キャンパスベンチャーグランプリ東京大会
参加メンバーたち。前列中央左が佐藤君、右が松本さん
参加メンバーたち。前列中央左が佐藤君、右が松本さん
 学生が新事業を提案する学生ビジネスコンテスト第11回キャンパスベンチャーグランプリ東京大会(最終審査会は昨年11月26日、東京・霞が関の霞山会館で開催=日刊工業新聞社・りそな銀行共催)で、SI‐LAB(ロボット技術の社会実装演習)に参加している3学科(未来ロボティクス、デザイン科学、プロジェクトマネジメント)学生混成3チームのうち、2チームが奨励賞を獲得した。
 2チームは、本紙11月15日号4面で紹介した▽チームPDR 介護施設と小学校で団欒を作るロボットキット「COMMURO(コメロ)」=PM学科3年・佐藤峻規君ら6人▽チームOKR48 入浴介助ロボットKP=同・松本果歩さん。
 チームPDRは、小学校の総合や理科の時間で、コメロと呼ぶロボットを作り、小学生とともに介護施設を訪問。コメロを使って一緒に歌ったり簡単な踊りをして楽しむプログラムを提供する。小学生と年配者のだんらんを形作ることを目的としている。
 チームOKR48は、介護施設で、楽しい入浴をめざし介助するシステムを提案。カッパを模したロボットKPに体温、脈拍、血圧の各センサーや、入浴・記録用の湯温度計、入浴タイマー、指紋認証、WiFiなどの機能を組み込み、体調管理を助けるシステム。入浴事故をなくし、バイタルも自動記録できるシステムだ。
 コメロも入浴介助ロボットKPも、デザイン科学科生のデザインが可愛く審査員に好評だった。
 佐藤君は「チームとしてプロダクトが評価され、自信につながりました」。松本さんは「モチベーションが上がります。参加してよかった」と語った。
 東京大会には258組がエントリー。書類審査で20組がセミファイナル・プレゼン発表会(昨年11月5日)に進み、さらに絞られ10組が最終審査へ。SI‐LABの3チームは3組ともセミファイナルに進出し、2チームが最終審査へ。最終10組中に本学2組が選ばれる快挙となった。
 最終審査は、すでに起業しているチームが6組ある中での激戦だった。
 指導した未来ロボット技術研究センターの富山健研究員は「単位取得に関係ない学生や、卒論で忙しい学生の混成チームが、4月から10カ月で成し遂げた成果として誇れます。同時に、学科をまたぎ現場を巻き込んだ演習科目の効果が如実に示されました」とコメントした。

伊藤君安生君が学生1位


超軽量構造コンテスト
受賞した伊藤君(左)と安生君
受賞した伊藤君(左)と安生君
 日本建築構造技術者協会(JSCA)が法人化25周年を記念して開いた「超軽量構造コンテスト」(公開本選会は昨年11月28日、工学院大新宿キャンパスで開催)で、本学の伊藤雅規君と安生仁君(ともに建築都市環境学科4年=多田脩二研究室)の作品「One Meter Bridge」が敢闘賞(総合3位=学生では1位)を受賞した。
 課題は「1キログラムの重さに耐えられるスパン1メートルの構造物」。素材・かたち・接合方法などは自由。独創的で美しい究極の超軽量構造を提案せよ、というもの。
 伊藤君・安生君は、吊り床構造をもとに、すべての力を、引っ張り力だけで伝達。桁は1本でなく2本の部材で挟み、断面を広げて強くしようと試みた。作品は角棒から円柱をくり抜いた中空のカーボン部材(最終重量12グラム)と釣り糸(ナイロン)で製作。見事、1キロの重さに耐え、座屈しない構造を提示した。
 軽量化を図るため、木材と糸で模型と解析を繰り返し、最適材にカーボンを採用。桁の断面は入手可能な最小断面の部材を探し、組み合わせた。
 全国から約100件の応募があり、15作が1次予選を突破。清水建設、竹中工務店、大成建設など大手ゼネコンや設計事務所の実務者が出展する中、伊藤・安生作品は学生作で1番上位の総合3位となった。
 2人は「大学生活最後の年に賞をもらえ、とても良い経験になりました。ゼミの活動の中で得た知識を生かすことができたと思います。多田先生と、相談に乗っていただいた方々に本当に感謝しています」と語った。
超軽量構造の作品
超軽量構造の作品

堀江さん石川さん受賞


デザイン学会 学生プロポジション
 デザインと人間の好ましい関係を追究する佐藤弘喜教授の研究室から、2人の院生が日本デザイン学会秋季企画大会(昨年10月25日、東京都八王子市の東京造形大で開催)の2014年度「学生プロポジション」(ポスターセッション)で入賞を果たした。
受賞した堀江さん(左)と石川さん
受賞した堀江さん(左)と石川さん
堀江大さん(デザイン科学専攻修士1年)=「新しいツーリング用サイクルの提案」でクリエイティブ賞を受賞。
 サドルに座る自転車ではなく、寝そべり(リカンベント)型の二輪で新しいツーリングを提案した。
 リカンベントタイプは腰で座れるので長時間のライディングに耐えるといい、欧州で普及。堀江さんはこれを進めてハブ(車輪の中心軸部)を無くし、生まれるスペースをバックパックの積載や輪行しやすさに生かした。よりサイクリングに集中でき、電動アシスト付きならロードバイクやランドナー(ツーリング用自転車)より長い距離を速く走れるという。
 3Dプリンターで作製したが、3Dデータの採取や、きれいな仕上げに時間がかかった。多忙な時期に製作したので、疲労で塗装室の棚で寝てしまったりしたという。
 堀江さんは「グッドデザイン賞の審査員の方に、いいコメントをもらえたのが素直にうれしかった」と語った。
石川和也さん(同)=修士論文「ドラグストアでの医薬品購入時における問題解決に関する研究」でチャレンジ賞を受賞。
 提案したのは、市販薬を安全に購入してもらうため、外箱に制約を設けて、色やマークで種類を見分けやすくし、ビジュアルを統一するもの。
 市販薬の購入機会が多いお年寄りたちに協力を求めて実験。▽ドラッグストアで市販されているOTC医薬品(一般用医薬品)16種類について、1種ずつ被験者に示し、色見本24色から1色ずつ選んでもらう▽各症状で連想されるシーンやマークを、イラストと文章で表現してもらい、1症状に1マークを決める▽外箱サンプルで、色とマークの位置や大きさを検証▽新しい外箱と市販の外箱を比較してもらい、医薬品情報がうまく可視化されたか確かめる――などを繰り返した。
 最後に完成した外箱を陳列棚に並べ、既存品と比較し、全体の統一感や判別しやすさを検証した。
 「他の人の研究は難解で内容の濃いものが多かったので、その中で受賞でき、うれしい。モチベーションも高まったので、今後の研究に生かしたい」と話した。
堀江さんの作品 走行想像図
堀江さんの作品 走行想像図

富永さんCS領域奨励賞


電子回路シミュレーションを高速化
 コンピューターの性能を最大限に引き出す処理法について、富永浩文さん(情報科学専攻博士後期3年=前川仁孝研究室)が情報処理学会で「CUDAによるランダムスパース方程式求解の命令レベル並列性を用いた高速化手法」を研究報告。同学会の2014年度コンピュータサイエンス(CS)領域奨励賞に選ばれ、昨年11月11日、東京都文京区の東京大創造情報学専攻棟で開かれた研究発表会会場で表彰された=写真
 スマートフォンやタブレット端末は設計の際、さまざまな処理動作を検証する必要があり、その電子回路シミュレーションの高速化が求められる。検証時間の大部分は連立一次方程式の求解が占めている。
 富永さんは、多くの計算を一度にこなすGPUプロセッサを用い求解することで、高速化を目指した。だが、シミュレーションで解く連立一次方程式は、並列性が低い。どうやって、より多くの並列性を引き出し、GPUをフル稼働させるか、工夫を重ねたという。
 情報処理学会は「富永さんは拡張ベクトルLU分解法に対して静的な命令レベル並列性解析に基づいたベクトル化を施すことで、分岐によるロスを防ぐことに成功し、従来比1.6倍の高速化を実現した」と評した。
 GPUを用いた計算処理の高速化は現在、とてもホットな現場で、多数の論文が発表されているといい、富永さんは「その中で私の論文が選ばれたことに、とても驚いています」と語った。