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2014.11.15

本学教員22人が発表


千葉エリア産学官フォーラム2014
 千葉県内の大学・研究機関と地方公共団体、ものづくり企業が手を携えて、地域の未来を支える産業の育成・振興を進めようという「千葉エリア産学官連携オープンフォーラム2014」(実行委員会委員長・黒ア直子学長補佐)が9月16日、津田沼キャンパス6号館で開かれた=写真
 2010年にスタートし第5回を迎えたこのフォーラムが本学で開催されるのは今回が2回目。千葉大、日本大、木更津工業高専と放射線医学総合研究所の研究者や企業関係者ら約200人が外部から訪れた。
 フォーラムの冒頭、本学の小宮一仁学長が開催校代表として挨拶。「千葉工大は旧制大学だった時代に中島飛行機と産学連携協定を結んで、本学の教員・学生が中島飛行機の研究所などで研究し、中島飛行機の研究者が実習や講義を手伝ってくれたという記録も残っている。それから70年以上たった今でも、本学は産学官連携を非常に大切にしている」と、本学の姿勢をアピールした。
 今回のフォーラムのテーマは《未来を創る/つながれ! 明日にかける橋》。科学技術の進歩で私たちの生活は豊かになったが、反面、解決しなければならない問題も多く抱えている。これらの問題を解決し、よりよい社会を築き上げるために、産学官が協力し合って新技術の開発や新事業を創出し、さらにそれらを次世代に橋渡ししていこう―という意味が込められている。
 このテーマに沿って、研究シーズ展示会では「特定テーマ」として医療機器、機能性食品、再生エネルギーの3分野、「一般テーマ」として環境・エネルギー、ライフサイエンス、材料・ナノテク・モノづくり、IT・情報・通信、フロンティア(複合・新領域)など6分野から合わせて61件の発表(ほかに5件の共催・後援機関事業紹介)が行われた。
 これらの展示に本学からは工学部生命環境学科・橋本和明教授など教員22人が参加し、日ごろの研究の成果を披露した=別項参照。橋本教授は展示に加えて研究シーズ講演も行った。
 さらに本学惑星探査研究センター(PERC)の荒井朋子上席研究員が「南極隕石探査〜地球外天体のかけらを探せ!〜」と題して特別講演。一昨年12月から昨年1月まで米国南極隕石探査隊に12人の隊員の1人として参加し、南極大陸の人跡未踏の氷原で6週間に渡って“隕石拾い”をした過酷な体験を披露した。
 この中で荒井上席研究員は11月30日打ち上げ予定の小惑星探査機「はやぶさ2」と、国際宇宙ステーション流星観測プロジェクトについても触れ、「千葉工大からもエキサイティングなニュースが発信されるだろう」と“予告”した。
 フォーラムの参加者の一部は、未来ロボット技術研究センター(fuRo)と工学部デザイン科学科の研究施設も見学した。
研究シーズ展示・特定テーマでの本学教員の発表
【医療機器】
骨置換性および骨組織親和性に優れるβ型リン酸三カルシウム系バイオセラミックスの創製=生命環境科学科・橋本和明教授▽多機能手術台におけるタブレット端末リモコンの操作性に関する研究=デザイン科学科・長尾徹教授
【食品(機能性食品等)】
原種の柚子を用いた抗酸化能を有する機能性食品添加物の開発=教育センター・南澤麿優覽助教
【エネルギー(再生エネルギー等)】
洋上型ソーラー筏「PVギガフロート」=プロジェクトマネジメント学科・久保裕史教授
■一般テーマでの本学教員の発表
【環境・エネルギー】
インパルス高電圧計測標準のMRAへの道のり=電気電子情報工学科・脇本隆之教授▽加速度計を用いた野外活動時の行動および安全性の分析手法=生命環境科学科・五明美智男教授▽5%以上の省エネを検証:グリーンセンサによる省エネ対策・設計技術の開発=経営情報科学科・藤本淳教授
【ライフサイエンス】
エッセンシャルオイルを活用した冷房時の省エネルギー=建築都市環境学科・小峯裕己教授「材料、ナノテク、モノづくり」▽新しい磁性材料の製造技術の開発=機械サイエンス学科・齋藤哲治教授▽千葉県産ヨウ素を用いた機能性表面の創製=機械サイエンス学科・坂本幸弘教授▽業務アセスメント方法の研究=プロジェクトマネジメント学科・下田篤准教授▽核磁気共鳴法を用いた磁性体中の電子状態の観測=教育センター物理教室・木山隆准教授
【IT・情報・通信】
ベクトル型全変動による画像復元技術=電気電子情報工学科・宮田高道准教授▽マルチセンサを用いた人間推定と推定情報のマッピング=未来ロボティクス学科・王志東教授▽列車運行状況の可視化=情報工学科・富井規雄教授▽領域マッチングと転送色信頼度に基づく画像参照型カラリゼーション=情報ネットワーク学科・八島由幸教授▽HTML5ベースのシミュレータ教材=情報ネットワーク学科・須田宇宙准教授
【フロンティア(複合・新領域など)】
エージェントベースによるボトムアップ型のマクロ経済社会モデル=経営情報科学科・荻林成章教授
【その他】
経験価値デザインプロセスによる地域特産品パッケージのデザイン=デザイン科学科・安藤昌也准教授▽ロボットの省自由度型機構構成法=未来ロボティクス学科・太田祐介教授▽メタヒューリスティクス手法による実数値最適化=情報工学科・山口智准教授▽協力ゲーム理論を用いた集合評価手法=金融・経営リスク科学科・喜多村正仁助教

活躍する校友


「技術系」生かして
努力と忍耐 モットーに
白洋産業株式会社社長
松本 祐之氏(まつもと さちゆき)氏(69歳)
(昭和44年、機械工学科卒)
松本 祐之氏
「石の上にも3年。頑張ってほしい」と松本社長
 180センチを超える長身に温和な人柄。いささかも感じさせないが、苦労人である。ヨド物置といえば社名がピンとくる淀川製鋼所(本社・大阪市)を経て、同社の窓口商社である白洋産業(同=来年1月から「淀鋼商事株式会社」に社名変更予定)のトップとして舵取りを任されて4年。「この歳になって働いているのは私くらいなもの」と笑いながら、全国のお得意先回りに忙しい毎日だ。
 父は鳥取県で高校教師をしていた。付けてくれた名前(「さちゆき」)は、「きちんと読んでくれたのはこれまでお坊さんひとりだけ」(松本さん)というほど珍しい。進学校である県立倉吉東高の、普通科ではなく、腕に技術をと工業科を卒業した。これまたユニークである。同じ中国地方の岡山県倉敷市にある大手自動車メーカーの工場へすぐ就職した。
 が、現実の厚い壁にぶつかった。「同じ仕事(設計)をしても、大卒とは処遇が大きく違うんです」。3年目の春、進学を決意し、本学の門をくぐった。
 いささかの蓄えはあるものの、学費は親が出してくれたという。塾の試験監督などアルバイトもいろいろやった。千葉市内で1年間下宿生活ののち、そのころ西船橋にあった鳥取県人会の学生寮へ。松本さんら3人の本学学生など約50人の同郷人はにぎやかで、箱根へドライブに行くなどバラエティーに富んだ3年間だったようだ。
 「とくに思い出深いのは因幡の傘踊りです」。浴衣に手甲脚半、白鉢巻きに白たすき姿で、小さな鈴のついた傘をシャンシャン響かせながら回して踊る鳥取の民俗芸能である。学生寮の寮祭にあわせ、津田沼駅前で披露した。喝采を浴び、「楽しかったね」。
 熱力学の「細線の熱伝達」をテーマに卒業研究をまとめ就活戦線へ。東京オリンピック(1964年)や大阪万国博覧会(1970年)の特需もあり、まだ売り手市場だった。応募学生には交通費のほか、会社によっては日当さえ支給していた。夏休み、大学の紹介で大阪の淀川製鋼所(通称・ヨドコウ)を「里帰り気分で」受けたら内定をもらった。今からすれば夢のような話だ。
 ところが、入社間もなく、再び千葉県へUターン。カラー鋼板メーカーとして業界トップクラスの技術を誇る同社は大阪、呉(広島県)工場など西日本中心だったが、東日本の生産拠点として市川工場(市川市)を計画、前職での設計経験も見込まれ、その建設メンバーに加えられたのだ。寮、社宅のできるまで丸1年間は、独身者も妻帯者も本八幡の旅館に“缶詰め”状態でまい進した。
 「臨海部の埋め立て地なので地盤は軟らかく、建家や重い機械を支える基礎杭は45メートル以上、それも1000本近い。ゼロから始まった建設は若い時の貴重な経験で、いい勉強になりましたね」
 軌道に乗った頃、再び呉工場へ転勤し、国内勤務のあと、1996年から2年間、ヨドコウの台湾子会社(高雄市)へ役員として出向、技術指導などにあたった。目指すマーケットは中国、米国である。
 「通訳を付けると言われて現地へ着いたら、それは最初の1日だけ。ひどいよねぇ!」と苦笑い。赴任してから週2回、中国語レッスンへ通ったものの、直ちに役立つはずもなく、唯一の共通語である英語で、たどたどしいながら、仕事をこなした。「学生時代に英語くらいマスターしておくんだった」と悔いたという。
 2004年、ヨドコウグループの白洋産業へ移り、呉工場長や取締役を経て2010年、技術系初の社長に就任した。「努力と忍耐」をモットーに約150人の社員を引っ張り、鋼板や建材などのヨドコウ製品をユーザーの元へ届ける。「趣味の古寺・名刹めぐりは、しばらくお預けです」。
 では、若い社員について一言を。「近ごろは、気に染まない仕事だと、すぐ退社していく。“石の上にも3年”の気持ちで頑張ってほしい。それと外国語を使えるように」。