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2014.5.15

瀧山さんに笹川助成金


新有機材料の研究で
瀧山勇一郎さん
 瀧山勇一郎さん(生命環境科学専攻修士2年=島崎俊明研究室・写真)が研究する「新規機能性有機材料を志向したC3対称を有するヘテロ縮合環三量体の迅速的合成」に、日本科学協会の平成26年度笹川科学研究助成(学術研究部門・一般科学研究=限度額100万円)が決まった。4月25日、東京・赤坂のインターコンチネンタルホテル東京で授与式があった。
 有機ELや有機太陽電池、新感光材などの有機材料は柔軟軽量で大面積化に優れるが、性能、コストでまだ課題が多い。
 電子・光有機材料は、π共役系といわれ特別な性質を発揮する有機化合物を基としている。近年、置換基としてアセチル基を持つ分子を酸触媒下で操作して、ベンゼン環を中心としたC3対称性(ある軸の周りを360度回転させると3回対称になる)三量体骨格を迅速形成する方法が考えられた。
 この構造を持つ分子は、大きな電荷輸送能や青色蛍光など電気・光学的にユニークな特徴を示す。しかし、置換基をヘテロ縮合環に変えたものは報告が稀だった。
 瀧山さんはヘテロ縮合環を出発物質に、電子・光有機材料となり得るベンゼン環中心C3対称性三量体の迅速合成方法の確立を目指している。まず、市販の各種ヘテロ縮合環物質に塩化アセチルなどを反応させてアセチル基を導入。酸触媒を用いて三量化(3種の高分子同士が非共有結合し複合体化)させ目標化合物を合成する。
 生成した化合物は紫外・可視光(UV‐Vis)スペクトル、蛍光スペクトル、X線構造解析などで物性を測定して性能を評価し、基礎物性の解明と安価な新規有機材料の開発につなげたいと考えている。
 瀧山さんは「先輩に続き研究室から2年連続の採択で、自分の研究が評価されたと思っています。院生の残り1年、しっかりと研究を完成させていきたいと思います」と、研究に励んでいる。

まるで“トランスフォーム梱包”
福本さん日本一に


SDL決定戦
福本さんの梱包作品 賞状を手にする福本さん(左端)と研究室のメンバー
福本さんの梱包作品 賞状を手にする福本さん(左端)と研究室のメンバー
 国内最大の学生卒業設計展「せんだいデザインリーグ2014卒業設計日本一決定戦」(略称SDL=仙台建築都市学生会議、せんだいメディアテーク主催)で併催された梱包日本一決定戦(3月9日、仙台市の東北大学百周年記念会館川内萩ホール)で、福本彩織さん(建築都市環境学科4年・石原健也研究室)の、折りたためる模型作品が日本一に選ばれた。
 繊細で巨大な模型を無事に仙台に送り届けようと応募者が工夫するうちに、梱包自体が優れた作品になってきたので“本選”と併せて競われている。強度+運びやすさ+取り出しやすさ+機能美で審査され、優れた梱包に日本一、二、三と特別賞が与えられる。
 福本さんの作品は、記憶をテーマとした「記憶のアーカイブ」。卒業設計では惜しくも選外に。一方、たちまち折りたためてコンパクトになる巧みさに審査員らは目を見張り、まるで“トランスフォーム梱包”と称賛した。
 福本さんはシンプルで機能的で何かアクションのある梱包を、と考え、たたむ着想から、さらに、ふわっと折りたためる仕組みを考え、研究室の先輩・後輩と制作した。
 卒業設計提出後にブラッシュアップし、手伝ってくれた仲間に感謝を込めてSDLに出展。532作品の中から最高賞に選ばれた。
 福本さんは「日本一になって本当に良かった。つくった物を、人に見てもらい喜んでもらえる。これだからものづくりはやめられません!」。会場で名前を呼ばれ、友人後輩ともども喜び合ったといい、研究室仲間と石原教授に重ねて感謝していた。

PERC松井所長にフェロー称号


地球惑星科学に多大な貢献
火星儀を手に松井所長
火星儀を手に松井所長
 世界的な惑星科学者、松井孝典・惑星探査研究センター(PERC)所長が2014年度の日本地球惑星科学連合フェローに選ばれ5月1日、横浜で開かれた同連合大会25周年記念式典で表彰された。受賞理由は「惑星科学、特に地球の大気・海洋の形成と進化についての顕著な貢献、および長年にわたり地球惑星科学の普及に貢献した」功績による。
 日本地球惑星科学連合によると、松井所長は、地球惑星をトータルに理解する地球惑星システムという新しい捉え方を開拓。1980年代半ばに、地球形成時の天体衝突における固体地球‐大気‐海洋の形成と共進化を論じ、英科学誌ネイチャーに発表。この考えはその後、巨大学問体系へと発展した。
 松井氏は その考えを“地球学”に発展させ、地球と人間の関わり、生命の起源・進化と宇宙の関わりの解明を目指し、常に地球惑星科学の進むべき方向を示してきた。
 同連合のフェロー制度は各年、地球惑星科学領域で価値観をがらりと変えた研究や発見を中心に、地球惑星科学の発展に著しく貢献した人たちを顕彰して与えられる。
●松井孝典PERC所長 東京大大学院を修了後、NASA研究員、マサチューセッツ工科大招聘科学者、マックスプランク科学研究所客員教授などを経て2009年、本学に。近著「生命はどこから来たのか?―アストロバイオロジー入門―」(文春新書)で、宇宙は生命にあふれているとして生命起源論や宇宙での生命探査を語っている。

大野上席研究員に阪大「近藤賞」


生物の大量絶滅を解明
「レーザーエネルギー学に貢献」
大野上席研究員
 レーザー実験で白亜紀末の生物大量絶滅の状況を明らかにし、世界に反響を呼んだ惑星探査研究センター(PERC)の大野宗祐上席研究員=写真=が、「レーザーエネルギー学に大きく貢献した」として4月17日、大阪大学で平野俊夫総長から大阪大学近藤賞を授与された。
 阪大近藤賞は、レーザーエネルギー学の発展に貢献した若手研究者に授与される。
 大野上席研究員が主導した研究チームは、阪大レーザーエネルギー学研究センターの高出力レーザーを用い、ユカタン半島チチュルブ・クレーター付近の地層と同じ硫酸塩岩に、世界で初めて宇宙速度(秒速15〜20キロ)で金属粒子を衝突させ、生成ガスを分析した。
 その結果、硫酸になりやすい三酸化硫黄(発煙硫酸)が放出され、理論計算では数日以内に酸性雨となって全地球的に降り注ぎ海洋も酸性化。これが白亜紀末の生物の大量絶滅で非常に重要な役割を果たしたことを示唆した。
 恐竜など陸上動物だけでなく、海洋、淡水を含めた白亜紀末の生物の大量絶滅を包括的に説明した研究は世界で初めてで、成果は英科学誌ネイチャージオサイエンス電子版に掲載された。
 大野上席研究員は「レーザーエネルギー学に関する賞で、惑星科学の研究者としては初めていただきました。両分野の架け橋となれるような研究を進めていきたいと考えています」と語っている。