NEWS CIT ニュースシーアイティ

2013.4.15

「夢」を持ち 充実した学生生活を


瀬戸熊修理事長 祝辞
瀬戸熊修理事長
 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。日本列島に桜咲くこの良き日に皆さんを迎えられたことを、教職員そして在学生とともに心から喜んでおります。合わせてご列席のご父母・ご家族の皆様にお祝いとお喜びを申し上げます。
 千葉工業大学は昨年五月十五日に創立七十周年を迎えました。つまり、この春は本学にとって七十一年目の春であり、その記念すべき新学期を新入生の皆さんとともに迎えられたことに、二重の喜びを感じています。そこで本学創立の歴史を踏まえながら、千葉工業大学がどんな人材育成を目指しているかについて、お話しておきたいと思います。
私立最古の工業大
 皆さん、手のひらに指で「夢」という漢字を書いてみてくれませんか。
 「夢」という字は、下にカタカナの「タ」のような「夕」(ゆうべ)という字を含んでいますね。昭和十七年にアジアを興すと書きますが「興亜工業大学」として開学した本学の創立者である小原國芳先生も「夢」という言葉が大好きで、昭和五十二年に九十歳で亡くなるまでに数多く「夢」の字を筆で書いて残しましたが、その字は必ず「夕」の中の斜めの棒が一本多かった。つまり一画多かったのです。
 なぜだと思いますか。
 小原先生は、一画多い「夢」の字に「若者は他の人より一つでも多くの夢を持ってほしい」という願いを込めたのです。
 「夢」と言えば、皆さんもご存じの幕末の思想家で、明治維新に大きな影響を与えた吉田松陰がこんな名言を残しています。
 「夢無き者に理想なし 理想無き者に計画なし 実行無き者に成功なし 故に夢無き者に成功なし」
 夢を抱かない者に成功はない。だから若者たちよ、一つでも多く夢をもち、それを自分の理想として、その実現のために邁進しよう。小原先生と吉田松陰、このお二人の言葉を合わせると、こんな意味になります。
 ところで、皆さんもご存じの玉川学園も小原先生が創設された学園ですが、その小原先生が「アジアの工学教育の向上」を目指して玉川学園内に創立したのが「興亜工業大学」です。日本が太平洋戦争に敗れた翌年の昭和二十一年に、千葉の地へ移転をし、現在の「千葉工業大学」として再出発をしたという流転の生い立ちをもっています。本学はいま日本にある戦前の旧大学制度下に誕生した私立の工業大学の中で最も古い歴史をもっているのです。
 今日から名実ともに千葉工大生となった皆さんへ私からのお願いですが、どうか早い段階で「夢」をもってください。「大きな夢」、人や社会のために尽くそうという「貴い夢」はそれだけで「生きる原動力」になります。
 また、夢はたとえ一つでも、山の頂上に至る道が一本ではないように、それを実現する手段は無限にあります。「失敗は成功のもと」という言葉がありますが、実際、失敗するほどに、成功は近づいてきます。夢の実現への過程は苦労も多いと思いますが、熱意をもって行動するほど「楽しい」と感じるはずです。何事にもめげずに「夢」を実現させることは、周囲の人を感動させ、幸せにします。
 本学はそんな皆さんの「夢」を実現させ、皆さんの勉学の環境を整えるべく、キャンパスの再開発を意欲的に進めてまいりました。この式の後、皆さんが向かう「新習志野キャンパス」は、最新鋭の機器をそろえた学習環境と、優れた学識・技術と情熱をもった教職員たちが気持ちも新たに皆さんを待っています。この緑も豊かに、開放感にあふれたキャンパスで、心身共に充実した二年間を送ってください。
 そして、皆さんが三年生になると通う「津田沼キャンパス」では二十階建て、地上約百メートルのツインタワーが、千葉工業大学の現在を象徴してそびえています。その内部には、本学が大学としての「夢」を実現させるために英知を結集した教育と研究施設、そして皆さんの学生生活を豊かにするさまざまな施設などが詰まっています。
チャレンジ精神
 この二つのキャンパスの中で行われている研究には、他大学の追随を許さぬものが数多くあります。二年前の東日本大震災の津波で破壊された福島第一原発の、人が立ち入れない現場で、放射線量の測定などに活躍している三台のレスキューロボット「クインス」は本学の「未来ロボット技術研究センター」が創り上げたものです。
 また今年二月、ロシア南部に隕石が落下して世界中を驚かせたニュースは、皆さんも記憶に新しいと思います。本学では、「惑星探査研究センター」において、火星での生命の存在や進化に関わる問題を解明しようという壮大な研究を進めており、そのひとつとして、秒速8キロで隕石等が衝突する状況をシミュレーションできる装置を開発し、国内では最速の実験装置として注目を集めております。二〇一四年に打ち上げ予定の「はやぶさ2」には、この「惑星探査研究センター」が宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同開発した機器が搭載されます。
 さらに、本学独自で、かつ世界初の「宇宙空間における流星観測の研究」という画期的な研究プロジェクトを立ち上げ、現在、最新鋭の観測機器を搭載した人工衛星の打ち上げ計画が着々と進行しています。この研究を知った、米国の航空宇宙局(NASA)から、国際宇宙ステーション内に本学の流星観測用カメラを設置したいとの依頼がきて、この二月にその契約が結ばれました。
 さて、千葉工業大学の建学の精神は「世界文化に技術で貢献する」であります。七十年前、まさに二十一世紀のグローバル化した世界を予想し、そこで活躍する科学技術者の育成を目標として掲げたのです。どうか皆さんはこの建学の精神を自分自身の目標として体し、大きな「夢」を持って、充実した学生生活を送ってください。その夢を実現させるには仲間も必要です。多くの友達と出会って、切磋琢磨してください。そして世界に飛躍し、世界をリードする研究者や科学技術者を目指してくださることを願って、私の祝辞と致します。
平成25年4月1日
学校法人千葉工業大学
理事長  瀬戸熊 修
入学式で吹奏楽部が演奏 千葉寮生有志の校歌斉唱
入学式で吹奏楽部が演奏 千葉寮生有志の校歌斉唱

PERCの研究紹介
松井所長、入学式場で講演


「惑星科学に飛び込んでほしい」
松井孝典所長
 惑星探査研究センター(PERC)の松井孝典所長は入学式後、会場の幕張メッセ・イベントホールで「最近の科学的話題と千葉工大」と題して講演=写真、科学技術を用いて科学の発展に寄与する工科大学の意義を説明した。2月にロシアに落下した隕石や、火星で活動中のNASA(米航空宇宙局)の探査機「キュリオシティ」を引き合いに出しながら、最新の研究成果を紹介。
 まず「原始地球に火星サイズの天体が衝突し、地球が割れて月が誕生したと考えられる」としたうえで、天体衝突の解明に欠かせない超高速の衝突実験で秒速60キロという世界最高速記録を達成したことを報告。キャンパスに高速衝突実験室を新たに開設し=4面に詳報=「超高速の現象をナノ秒単位で検証できるのは世界でも本学だけ」と胸を張った。
 同センターは今年度、超小型衛星キューブサットを使い流星の観測を始める。宇宙からの流星観測はNASAも注目し、来年4月打ち上げ予定の国際宇宙ステーションに同センターが開発した観測カメラの搭載を決定している。
 松井所長は「千葉工大は過去に鯨の生態観測衛星を上げた経験がある。人工衛星と交信できるアンテナがキャンパスに設置されている大学は極めて少ない」と述べ、国内で本学だけにある「火星環境を模した実験室」など、充実した研究環境を説明した。
 松井所長らは来月にも、NASAの火星探査機「キュリオシティ」が探査中の環境と酷似するインド・デカン高原の湖に特別調査に入る。
 元来は天体衝突によって出来たクレーターで「メタンを排出する細菌がいて、生態系が奇妙。火星の大気中からもメタンが見つかっており、その出どころが微生物だと解明できるかもしれない」と述べた。
 昨年スリランカに降った「赤い雨」を調査した結果、細胞状の物質であることが判明。直前に隕石が降っていたことから「宇宙からやって来た生命かも」(松井センター長)と興味深い発言も。
 「はやぶさ2」(来年12月打ち上げ予定)の遠隔調査装置には、同センターの技術が多くかかわっている事実を披露し「4年間、研究に励み、関心を持ったら惑星科学の分野に飛び込んできてほしい」と締めくくった。