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2013.2.15

2部門で最優秀賞


第5回テクノルネサンス
アイデア提案 小川さん
賞牌を手に小川さん
賞牌を手に小川さん
 「企業に製品化してほしい未来の夢」を理工系学生が提案する第5回日経テクノルネサンス・ジャパン(1月17日に日本経済新聞社東京本社で表彰式=同社主催)で、小川祐司さん(未来ロボティクス専攻修士2年=王志東研究室)が千葉大「先進的マルチキャリア博士人材育成プログラム」の2つのチームの一員として提案、その一つTeam KHN(6人)がデンソー賞最優秀賞(50万円)、もう一つのTeam DKR(5人)も村田製作所賞最優秀賞(同)を獲得した。
 デンソーは、カーエレクトロニクスで実現する未来の夢を募集。小川さんらは「モーションキーシステム3M(Motorcar Motion key Management)〜決めポーズで爽快開錠〜」を応募した。ヒーローの変身ポーズのような愉快な動作で車を開錠するもの。
 カメラで人物の2次元画像を取得し、主要な骨格部位の位置を推測。超音波で距離を測り、登録済みのモーションと照合し、正しければ開錠する。赤外線よりも超音波を使ったほうが気象条件や汚れに強く、メンテナンス不要、素子も比較的安価だ。こんなモーションキーで楽しい車社会を、と提案した。
 一方、センシング技術で村田製作所の募集に対し、小川さんらTeam DKRは「3S〜ニオイ検出システム〜」を応募。3SはSmell Sensing Systemの略。自分では気づかないニオイが周囲に不快感を与え、スメルハラスメント(スメハラ)を起こしている。ニオイに敏感な社会で加害者にならないよう、他人が自分のニオイをどう感じるか客観的にわかる検知システムを考えた。
 不快なニオイ物質は極めて低濃度でも届き、しかも種類が無数で捕捉が難しい。小川さんらは、ニオイの取り込みにマイクロブロアを用い、センサーに抗体抗原反応や脂質を用いたバイオセンサーを使えば、高感度・高選択な検知が可能、と提案。センサーカートリッジ事業として継続的利益も期待できるとした。
 2つの最優秀賞に、小川さんは「考え方や専門性の違いから,うまく意見がまとまらないこともありましたが、本音で議論したことが、よい結果につながったと思います」と話している。
 「先進的マルチキャリア博士人材育成プログラム」は、千葉大が博士課程のトップクラスを集め国際的な研究者に育てようと進めており、千葉大と包括協定を結ぶ本学の院生も参加している。
 同プログラムのチームは今回、上記以外の2チームも大日本印刷賞最優秀賞、東レ賞最優秀賞を獲得し参加5企業賞のうちスリーボンド賞以外の4最優秀賞を独占した。
4最優秀賞を独占した“先進的マルチキャリア”チーム
4最優秀賞を独占した“先進的マルチキャリア”チーム

及川君 優秀研究発表賞


照明を個別制御し省エネ研究
賞牌を手に及川君と、共同研究者の原君(左)、高橋君(中)
賞牌を手に及川君と、共同研究者の原君(左)、高橋君(中)
 照明・光環境のデザイン・設計に関する研究を促進している照明学会の第36回東京支部大会(昨年12月11日、東京・銀座の東京都中小企業会館で開催)で、及川大輔君(建築都市環境学科4年=望月悦子研究室)が「パーソナル・スイッチを用いた照明の個別制御による省エネルギーの実証」をポスター発表し、優秀研究発表賞を受賞した。
 東日本大震災後、オフィス照明は不在個所を間引き消灯するなど省エネが進められている。しかし、人の移動が多いエリアでは、執務者が不在でも消灯されないなど、省エネの余地はまだある。
 及川君は望月准教授の指導のもと、高橋知礼君(4年)、原亮介君(同)とともに昨年6〜7月、東京都中央区、三機工業(株)のオフィス(約1000m2)で、246人の執務者各人に、自席周辺の照明器具1〜3台の点灯/消灯が個別にできるスイッチを渡し、スイッチの種類(ワイヤレス式や電話機操作式など)によってフロアを4エリアに分け、個別制御による省エネの可能性を調査した。
 それによると、月別消費電力量はスイッチ導入後に約44%も激減。しかし、それは細かいスイッチ操作による効果ではなく、不在個所の消灯が、より協力して行われた結果と推測された。
 というのは、スイッチの個別操作を、執務者の48%が「必要」と考えているのに、周囲の照明環境へ及ぼす影響に気がね(40%)して操作をちゅうちょしていた。その一方で、周囲の人々は、各人が気にしているほど他人の照明操作を気にしていない(63%)ことがアンケートから分かった。スイッチ操作の運用方法次第でさらに省エネできる可能性が見えた。
 各人の在席状況を記録できるアプリを用いリアルタイムで計測。▽在席状況と天井照明消費電力▽離席中の照明点灯状況――などと併せて調べた。データ量と解析項目が多かったので、及川君らは夏休みを返上して毎日夜遅くまで作業した。
 及川君は「初めての学会発表で賞を頂け、大変うれしい。高橋君、原君との共同研究で、3人で頂いた賞と思っています。望月先生や研究の場を与えてくれた企業の皆様に感謝しています」と感想を語った。

浅野さん 研究奨励賞


文化特性の観察手法を提案
浅野さん 研究奨励賞
 特定非営利活動法人・人間中心設計推進機構(HCD)主催の2012年度第4回HCD研究発表会(昨年12月14日、東京都文京区春日のシビックセンター26階スカイホールで開催)で、浅野花歩さん(デザイン科学専攻修士1年=山崎和彦研究室・写真)が口頭発表し研究奨励賞を受賞した。発表論文は「文化特性を考慮した観察手法としてのKH法の提案」。
 近年、世界ではBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)やアフリカが急成長。日本が現地進出を考える場合、文化を考慮したデザインが不可欠となっている。浅野さんは、該当地域に適したデザインをするためのエスノグラフィー(民族誌学)的観察手法を「KH法」と名付けて提案した。KHは浅野さんの名前「かほ」からとった。
 KH法は1観察2分析――の2段階で行う。観察段階では、対象文化のコミュニティーを選んで入り込み、そこの人々と交流を図りながら、数人で写真を大量に撮影(巧拙を問わず量を重視)。
 分析は、現地で撮った写真を、インタビューを視覚化したストーリーボードなどを使い時間軸に並べ、文脈的に文化特性や要望を捉えて仮説へと絞り込み、検証する。対象と行動を共にして観察するシャドーイングや、ビデオを使った従来の手法に比べ、大量の写真からいろいろな角度で分析でき簡易な点が特長だ。
 浅野さんは昨年6〜8月、山梨県甲府市と群馬県太田市の在日ブラジル人コミュニティーと、東日本大震災の被災地・宮城県名取市閖上地区の幼稚園再建プロジェクト集団で観察を試み、KH法の有用性を確かめた。
 今後、途上国に赴いて検証を重ね、「分析」の次の段階といえる「発想」の方法へも研究を進めたいという。
 研究奨励賞は、主に学生による口頭発表を発展性・展開性を中心に評価し優秀発表を表彰するもので、2012年度から設定。ショートセッション(口頭発表)5件のうち、浅野さんの発表が特に優秀と認められた。
 浅野さんは「初の論文発表で、書き方に慣れるまでが大変でした。試行錯誤の1年間でしたが、賞を頂け、頑張ってよかった」と感想を語った。

プレサポに助成金


大震災復興支援財団から
プレサポの(左から)大野さん、星野さん、渡辺さん
プレサポの(左から)大野さん、星野さん、渡辺さん
 東日本大震災被災地の宮城県南三陸町で支援活動を続けているプレイグラウンド・サポーターズ(建築都市環境学科・石原健也研究室の院生・ゼミ生・OBで編成、略称プレサポ=代表・石原准教授)が、東日本大震災復興支援財団(東京都港区・汐留住友ビル内=立石勝義代表理事)の「子どもサポート基金」(第3期)助成対象に選ばれた。
 応募124件の中から52団体に、2012年10月から13年4月10日までの活動費用・総額9760万円の助成が決まったもので、プレサポへは「志津川小学校児童による“私たちのまち提案”のサポート」に対し200万円が支給される。
 石原准教授たちは震災発生翌月の11年4月から南三陸町入り。町立志津川小(加藤敬一校長、児童数290人)と、校庭に建てられた仮設住宅でさまざまな支援を行い2011年度「こども環境学会賞デザイン賞」を受賞、その後も活動中。
 “私たちのまち提案”は、高台への集落移転や産業復興など大人サイドで進む復興計画に、志津川の将来を担う子どもたちも参画すべきではないか、と始めた。
 子どもたちと、未来の街を考える前に、まず身近な“家”に興味をもってもらう「家づくりワークショップ」を計画。自分が入れる小さな家を、木や強力ゴムバンドなどを使って作り、子どもたちの“家”再発見を促す。
 小さな空間作りから、規模を発展させ、志津川の未来を考える「復興計画ワークショップ」にまでつなぐ計画で、外部専門家にボランティア参加してもらい、共同で進めていくという。
 学生たちの代表、星野美衣奈さん(建築都市環境学専攻修士1年)は助成金に「子どもたちが未来の志津川の街へ興味を持つきっかけづくりに生かしたい。子どもたちと創る“志津川の未来”を、復興を進める行政側に伝えられたらいいなと思います」と語っている。
 東日本大震災復興支援財団は孫正義ソフトバンク社長が中心となって2011年6月に設立。子どもサポート基金は、被災児童・生徒たちが早く健康な日常生活を取り戻すよう支援団体などを助成している。