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2012.9.15

宇井さん最終10人の1人に
女性新ビジネスプランコンペ


尿検知シート開発aba代表
宇井吉美さん
 介護を支援する「マットレスに組み込んだ非接触型尿検知器」を未来ロボティクス学科・富山健研究室で考案し、学生ベンチャー企業aba(アバ)を設立した宇井吉美さん(写真・未来ロボティクス学科研究生)が「第1回DBJ女性新ビジネスプランコンペティション」でファイナリスト10人に選ばれた。
 コンペは経済低迷や少子高齢化の中、日本政策投資銀行(DBJ=橋本徹社長)が、女性の活力を起爆剤に社会を変革しようと主催し、政府や経済界などの注目を集めた。女性による新視点のビジネスを援助し、受賞者に奨励金を提供する。
 宇井さんら富山研の学生たちは、介護現場の人手不足や、寝たきり高齢者のおむつ交換の大変さを知り、においセンサーによる尿検知器を考案。事業化して広めようと株式会社aba(代表取締役兼CEO=宇井さん)を設立した。昨年10月の千葉ビジネスコンテスト学生部門ではグランプリを受賞している。
 DBJは昨年12月に募集を開始。abaは、宇井さん名で「未来の介護をデザインする尿検知シート『Lifilm』」ビジネスとして応募した。Lifilm(リフィルム)とは、寝たきりの高齢者用の尿検知シート。時刻優先のおむつ交換を改めLifilmをベットに敷くことで、介護士は尿が出たことを知り、素早くおむつ交換できる。高齢者の排泄リズムや生活リズムをつかめるため、高齢者・介護士双方が適切な生活スケジュールを持てる。
 Life(人生)を、カメラのFilmのように記録するライフログシート、という意味を込めた。
 コンペには国内外から643件が応募。1次、2次審査で1革新性2事業性3経営者力――を判定。ファイナリストに宇井さんら20〜60歳代の女性10人が選ばれた。最終審査は経済同友会副代表幹事や第一線の経営コンサルタント、エコノミストが行い女性起業大賞、同優秀賞、同震災復興賞の3賞受賞者が決定され6月19日、発表された。
 NHK「クローズアップ現代」のカメラもコンペを追い、「密着!女性企業家1000万コンペ」と題して7月11日に放送。宇井さんは受賞を逃したものの「お年寄りの介護が楽になる 介護機器を開発中の学生」として、発表する姿が全国に映し出された。
 DBJでは、3賞受賞者に事業奨励金(大賞受賞者には最大1千万円)を支給。今後1年間、起業アドバイスやネットワークの紹介を行う。
 宇井さんは「コンペで、これだけ世界を変えよう、未来を作ろうとしている人たちがいることを知って、びっくりしました。自分の世界の狭さを認識しました。来年また出場して自分の成長を確かめたい」と語った。

FunPen商品化


森田さん、小林さん
デザイン科学専攻院生
 アイデアあふれる美容健康器具や文具、便利グッズなどを開発販売しているELAiCE(エレス株式会社=東京都渋谷区恵比寿・沼尾隆代表)が、デザイン科学科・三澤哲夫教授の研究室にもちかけたFunpen(ファン付ボールペン)デザインプロジェクト(2011年11月〜12年1月)で、デザイン科学専攻修士2年の森田真平さん、小林紗矢香さんの作品が商品化された。
 ファンペンは、夏を涼しく、とボールペンの頭に小さい扇風機をつけたアイデア商品。ELAiCEは新タイプを出すにあたり、学生ならではの発想を求めて三澤研究室に依頼した。コンセプトは「鉛筆のような六角形をモチーフに」。
 研究室の学部4年生と大学院1、2年生がデザイン案に挑み、ELAiCE側が選んだ森田さんの本体案、小林さんのパッケージ案を具体化。
 研究室ではファンペンが販売されているストアで市場調査し、2人は出せるだけの案を出した。作業期間は約1カ月。
 「限られた打ち合わせの中で相手の意図をくみ取り、デザイン化する点に苦労した」と森田さん。アイデアは15案ほどから絞った。本体デザインは森田さんが、表面カラーなどは小林さんが担当。
 2人が作ったファンペンは、グリップ感を重視した六角ボディの頭にブレード(羽)が付けられ、クリップ部分にブレードを収納できる。長さ168ミリ、太さ13ミリ、単4電池1本を内蔵。市販の替え芯が使え、黒、ピンク、青、ターコイズ、黄の5色をそろえた。
 小林さんは「本体のデザインである六角形をモチーフにし、ロゴを本体カラーの補色をおくことでアクセントをつけました」。森田さんは「学生のうちに『商品化』に携わることは一つの目標でした。相手(企業)の求めるものをデザインしなければならないため、思い通り進まないこともありましたが、素晴らしい経験をさせていただきました」と語った。
 説明書の末尾には「Designed by Sinpei Morita(FunPenHB)/Sayaka Kobayashi(Package)」と記載。早速、使い心地抜群の「ファンペンHB」(980円=税込)としてウェブの通販ページに掲載され販売が開始された。
森田さん(左)と小林さん
森田さん(左)と小林さん

池田さん優秀研究発表奨励賞


テキスト情報の提示方法で
池田誠さん
 マネジメント工学専攻修士2年の池田誠さん(鴻巣努研究室)=写真=が、日本人間工学会第53回全国大会(6月9〜10日、福岡市南区の九州大学大橋キャンパス)で優秀研究発表奨励賞を受賞した。
 日本人間工学会は、働きやすい職場や安全で生活しやすい環境を実現するための道具や機械、システムの最適化を研究する学会で、年次大会で優れた研究成果を発表した若手研究者(26歳以下)を表彰している。
 池田さんは「孤立語における視覚探索誘導に関する研究」と題して発表した。
 池田さんの修士論文のテーマは「インタフェース設計におけるテキスト情報の提示方法」。鴻巣研究室で、エラーメッセージやユーザーマニュアルなど文字情報について言語形態から効果的な提示方法を研究している。
 言語形態学(独・フンボルトが提唱)では、世界の言語を孤立語、膠着語、屈折語に分類。屈折語(英語、ドイツ語などヨーロッパ系)や膠着語(日本語、韓国語などウラル・アルタイ語系)では先行研究があるが、孤立語については研究事例が少なかった。
 孤立語は中国語に代表されるように、独立した音と意味を持つ単語(漢字)を、単純に積み重ねることで文を構成する。
 池田さんは孤立語について、人がどんな基準で視覚探査しているかを定量的に明らかにし、インタフェース設計への応用を提案。6月9日、「ヒューマンインタフェース」会場で口頭発表した。内容が優秀と認められ受賞が決まった。
 池田さんの研究成果は、中国語などのインタフェース設計基準に取り入れ得るもので、利用が期待されている。

「習志野防災かるた」制作


山田さん、河西さん
デザイン科学科
「習志野防災かるた」と山田さん、河西さん 「習志野防災かるた」と山田さん、河西さん
「習志野防災かるた」と山田さん、河西さん
 東日本大震災による被害を読み込み、防災の心掛けを説いた「習志野防災かるた」制作に、デザイン科学科の山田文子さん(4年=齋藤共永研究室)と河西真柚子さん(4年=山崎和彦研究室)が参加した。
 「習志野民話の会」(鼈宮谷直美会長)が、市内の民話を採集中、液状化などの被害を見て企画。市の補助金も得て、昨年末、デザイン科学科(石塚明夫教授、当時の原田泰准教授=現はこだて未来大学教授)に協力依頼があった。
 読み札は市民から公募、応募301首の中から45首を採用した。原田准教授の誘いに山田さん、河西さんが応じ、今年3月以降、民話の会・かるた製作実行委員会と本学で打ち合わせし、制作に入った。読み札は原田准教授、絵札は山田さん、パッケージと付属の習志野防災マップを河西さんが担当した。
 山田さんは「かるたは遊び。リアルに書きすぎても……と表現に悩みました。奥が深い読み札が多く、イラスト化に苦労しました」。背景色を緑系(知識、準備)、黄系(災害時の対応)、赤系(災害の状態、状況)と分けて使い、人間の表情にもこだわった。
 河西さんは家族で書き込みながら使える防災マップを、と依頼されて「愛着をもって使ってもらえるよう、見やすい配色、わかりやすいアイコンを心がけました」。初めてなので不安があったが「完成品を手にしたとき、それなりに見えたので、ほっとしました」という。
【あ】ありますか? 「懐中電灯」「水」「ラジオ」
【え】液状化 水や砂まで 溢れ出る
【れ】連絡法 一つでなしに 二つ三つ
【わ】忘れない いつかまた来る 大震災
 ――など45首。子どもから大人まで家族で使える、優しいイラストのかるたが出来上がった。
 民話の会では500箱を作り、市内の幼稚園、小学校、保育園、公民館などに配った。8月から一般にも2千円で販売されている。9月1日には完成記念かるた会が袖ケ浦公民館で開かれた。
 山田さんは「遊びを防災に結び付ける点が難しかった」。河西さんは「いろんなことが手探りでしたが、その手探りがとても楽しかった」と語っている。